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2025年11月25日

テクノロジー株の乱高下が続き、日経平均は週間で大幅安

鈴木一之

先週のも大きな話題は2つに絞られました。そのひとつが米国発のテクノロジー株の下落です。NYダウ工業株、NASDAQともに週末は反発しましたが、週を通じて軟調な値動きを示す日が多くなっています。

最大の関心がエヌビディアの決算発表でした。現地11月19日(水)に8-10月期の決算を発表し、売上高は570億ドル(8.9兆円、前年比+62%)、純利益は319億ドル(+65%)となりいずれも市場予想を上回って史上最高益となりました。

続く11月~2026年1月期の見通しも、売上高で650億ドル(+65%)と発表され、市場見通しの620億ドルを上回っています。売上の9割を占めるAIサーバー向け半導体の「ブラックウェル」がきわめて好調で、発表後にアフターマーケットでエヌビディアの株価は+6%も値上がりしました。

現行の「ブラックウェル」、そして次世代半導体の「ルービン」が合わせて5000億ドルも受注が入っていることを明らかにしており、会社側は引き続ききわめて高成長が続く見通しを示しています。

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しかし翌11月20日(木)の米国市場では、テクノロジー株を取り巻く現在の暗雲を完全に払拭するには至りませんでした。

エヌビディアの株価自身が、午前中に+5%ほど買われた後、お昼ごろには下落に転じ、大引けでは▲2%を超える下げとなりました。

マイクロソフトやアマゾンなど、AI向けの投資を巨大化させている他の主要テック株も同じようにプラスからマイナスに転じて引けており「AI相場はバブルか、そうでないのか」の論争には結論が出ていません。

5兆ドルを超えていたエヌビディアの時価総額は1週間で▲6%減少しました。同じくマイクロソフトは▲7%、アマゾンは▲6%の減少です。

エヌビディアのこれほどの好調な決算発表でも不安が拭えないとなると、先週のテック株の動きによってむしろ不安心理が増幅されたと見るべきなのかもしれません。日本でも半導体や光ファイバー関連株を中心に同様の動きが見られました。

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もうひとつの市場の大きな話題が、日本の長期金利の上昇、およびそれに伴う円安です。

通常であれば金利上昇は、日米金利差の拡大を通じて円高になりやすいものです。それが現在はそうではありません。円安、金利上昇(債券安)、そこに株安が加わって日本は「トリプル安」に見舞われつつあります。日本の財政面で不安心理が高まっています。

11月20日(木)に新発10年物国債の利回りは一時1.835%まで上昇しました。2008年6月以来、17年ぶりの高水準です。30年債、40年債もこの日、過去最高を更新しました。

この動きと合わせてドル円相場は1ドル=157円台後半まで、10か月ぶりの水準まで円安が進んでいます。1日で2円近く円は下落しました。今年1月以来の円安です。

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背景には日本の財政政策の悪化懸念があります。高市首相の目指す「強い経済」を実現するための財政拡張や緩和的な金融政策への志向が横たわっています。

11月12日(水)に初会合を持った経済財政諮問会議では、今年度の補正予算による経済対策を前年度の13.9兆円を上回るよう要望が出されました。

これを受けて11月14日(金)に最初に提示された財務省案は14兆円規模となっていました。

しかし先週は日を追うごとに予算規模は拡大し、実際に11月21日(金)に閣議決定された総合経済対策の規模は21.3兆円まで増大しました。このうち補正予算による一般会計からの歳出は17.7兆円にのぼり、昨年度の13.9兆円、財務省案の14兆円から大きく増えています。

子育て世帯への一律2万円給付(4000億円)、電気・ガス代の7000円補助(5000億円)、ガソリン税の廃止(減税1.5兆円)などが骨子となっています。

補正予算の規模はコロナ禍初年度の2020年度に73兆円という規模まで一時的に巨大化して以来、いまやごく普通の都市でも10兆円を大きく超える水準まで拡大しています。

大規模な財政拡張政策は高市政権の狙いどおりに家計の負担を和らげますが、同時にインフレを一段と強める可能性もあります。夏の参院選で消費減税が問われましたが、高市政権での「規模ありき」の財政負担が「日本売り」に至らずに済むのか。市場ではあらためて問われています。

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先週の東京株式市場は、TOPIXが反落しました。週間の下落率は▲1.85%で、前週の+1.85%をそっくり埋める形での下げとなりました。

日経平均の下げが大きく、NT倍率(日経平均とTOPIXの比率)は急速に低下しています。東証グロース250指数(旧マザーズ指数)は▲3.97%とかなり大きめの下落となりました。

規模別指数では、大型株指数が▲2.44%と下げを主導しています。中型株指数の下げは▲0.81%にとどまっており、小型株指数は+0.28%とわずかながら上昇を維持しました。主力大型株の下げが特に目立っています。

スタイル別でも、バリュー株は▲1.20%の下落にとどまりましたが、グロース株の下げは▲2.50%と大きく広がりました。小型バリュー株は+0.67%、小型グロース株は下げたとはいえ▲0.13%にとどまり、ここでも小型株は堅調です。

東証プライム市場の騰落レシオは、週末は119.24%で終わりました。日経平均のサイコロジカルラインは週半ばに「4」まで低下しました。日経平均が下げているほどには値下がりしている銘柄数は増えていない様子がうかがえます。

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TOPIX-17業種のセクター別騰落は、上昇が7業種、下落が10業種となりました。

値上がりセクターの上位は「医薬品」、「小売」、「建設・資材」でした。円安ですが内需系の銘柄に堅調さが目立ちます。

上昇率トップの「医薬品」では、武田薬品工業(4502)、アステラス製薬(4503)、住友ファーマ(4506)、中外製薬(4519)の好決算銘柄をはじめ、薬品株はほぼ全面高の展開となりました。

米国研究製薬工業協会のトップでファイザーCEOのアルバート・ブーラ氏は、11月20日の日本での記者会見で、「創薬のコストを日本も公平に負うべきだ」と述べ、日本に対して薬価の引き上げを求めました。

トランプ政権は世界一高いとされる米国の医薬品の価格を引き下げるため、先進国の中で最も低い水準に合わせる「最恵国待遇薬価」を導入しようとしています。

日本のように米国以外の国の薬価が低いほど、米国の薬価が値下がりし、製薬企業の収益を圧迫する恐れがあります。米国の処方薬の価格は日本の3.5倍近くになります。

ブーラ氏は「米国と日本は新薬の薬価を平等にしていくことが求められる」と強調して、日本に対して事実上の薬価引き上げを求ました。

高市政権では医療、介護の現場への支援を前面に打ち出しています。ブーラ氏は高市政権での薬品価格の改定に期待しています。

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値上がりセクターの第2位は「小売」でした。イオン(8267)が連日のように上場来高値を更新しており、ツルハHD(3391)、スギHD(7649)、クオールHD(3034)などドラッグストアの株価も堅調でした。

週初には、中国が高市首相の「存立危機事態」に関する発言に関連して、中国人の日本への観光目的の渡航を自粛するよう指導するとのニュースで百貨店、アパレル株が急落しました。

事態はまだ好転していませんが株価への影響は比較的小さく、すかいらーく(3197)、ヨシックス(3221)、西松屋(7545)、セブン&アイ(3382)、しまむら(8227)など小売セクター全体が堅調な動きを見せています。0-18歳への2万円一律給付の好影響とも見られます。

値上がりセクターの第3位は「建設・資材」でした。大成建設(1801)、大林組(1802)、清水建設(1803)、奥村組(1833)など、業績の好調さが確認されたゼネコン各社が連日のように上値を追いかけています。

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反対に値上がりセクターの上位には「鉄鋼・非鉄」、「機械」、「電機・精密」が入りました。いずれもAI関連株として7月以降の株価上昇をけん引してきた銘柄群です。

「鉄鋼・非鉄」ではフジクラ(5803)、

(後略)

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鈴木一之