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2025年9月23日

中央銀行ウィーク、日経平均が最高値更新、ETF売却で反落

鈴木一之

先週の日経平均の値動きです。

・9月15日(月):ーーーー(祝日)
・9月16日(火):44,902円(+134円)
・9月17日(水):44,790円(▲112円)
・9月18日(木):45,303円(+513円)
・9月19日(金):45,045円(▲258円)

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順調に上値を追いかけていた株式市場ですが、さすがに上昇ピッチの速さに対する警戒感も強まっていました。

そうして迎えた9月19日(金)。日銀が金融政策決定会合を開催し、ETFの売却を決定しました。マーケットは政策金利の引き上げは見送り、との事前予想にばかり気を取られていたためか、後場から株価は急落し一時は日経平均▲800円を超える下げとなりました。

決定された発表文を冷静に読めば、ETFの売却のスピードは時価ベースで年間6200億円、簿価で年間3300億円の水準で、1日当たりにすれば時価で30億円くらいです。株式市場で取引されている日々の売買代金の1%にも満たない水準で、これくらいの売り要因であれば十分に吸収が可能です。

しかし日銀が保有するETFは時価で70兆円くらいあるので、これが売り方に回るとなるとインパクトとしてはかなり大きかったことも事実です。史上最高値更新に沸いていた株式市場は冷や水を浴びせられる形となって、週末は下落して取引を終えました。

「9月相場は荒れる」とされており、その9月相場の本領発揮というところですが、下げの値幅としては今のところきわめて小さなものにとどまっています。

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現在の株価上昇の要因は以下の3点と見られます。

(1)米国の金融緩和(インフレ、雇用情勢)
(2)テック企業の収益拡大(AI投資の継続)
(3)自民党総裁選(積極財政、新たな連立の枠組み)

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(1)米国の金融緩和に関して、先週はFOMCが開催されました。

トランプ大統領肝いりのミラン理事が出席して行われた初めてのFOMCでは、FFレートの誘導目標が0.25%引き下げられました。

予想された通りに0.25%の引き下げとなりましたが、就任直後のミラン理事は0.5%の引き下げを求めて採決では反対に回りました。これも予想されたことの範囲内ですが、それ以外の理事が全員賛成しているところが意外な感じもしました。

ドットチャートで示されるFOMCメンバーの政策金利の見通しは、年内の残り2回の会合で合計2回の利下げを見込んでいます。3か月前の見通しよりも利下げのペースは早まっています。

政策金利はひとたび下がると(上がると)その方向性がその後も継続します。パウエル議長はFOMC後の記者会見において「労働市場が堅調だとはとても言えない」と述べています。政策運営の重点をこれまでのインフレ抑制から、雇用環境に移したことをはっきりと示しました。

それとともにインフレを警戒するスタンスも残しています。

トランプ関税の物価に対する影響は今年後半に現れると認識しており、個人消費支出(PCE)の物価指数の見通しを2025年10-12月で3.0%とするこれまで見通しを維持しました。さらに2026年10-12月でも2.6%と、前回見通しの2.4%から引き上げています。

MMFが1000兆円を超えて積み上がる市場内の待機資金がここから動き出すかどうか。おおいに注目されるところです。

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(2)テック企業の収益拡大に関しては、前週はオラクルの決算見通しで市場は沸き返りました。その熱も冷めないまま、半導体関連株への集中的な物色が日米で続いています。

先週、トランプ大統領は2度目のイギリス訪問を行いました。国賓待遇での訪問は2度目で「歴史的で前例のない訪問」です。ウィンザー城でチャールズ国王と面会し、国王主催の晩さん会に出席して、ウィンザー城に宿泊しました。その後、スターマー首相と米英首脳会談を行っています。

訪英のプランは6月のスターマー首相の訪米の時に始まっています。ロシア、中国、北朝鮮の3人の国家元首が北京で一同に会したその2週間後に、米国と英国は従来の「特別な関係」を一段と強化する行動が示されたことは実に象徴的です。

同時にトランプ大統領の訪英にはマイクロソフト、エヌビディア、オープンAIらの経営トップも同行しています。米英のビジネスリーダーが一堂に会し意見を交換し、大規模な投資計画も発表されました。

マイクロソフトは今後4年間で300億ドル(4.4兆円)を投資してAIのインフラを整備します。アマゾンは6月に3年で400億ポンド(8兆円)の投資計画を発表済みで、海底ケーブル、原子力発電、データセンターへの投資が2国間で行われる予定です。

エヌビディアはインテルに対して50億ドル(7400億円)の出資を発表しました。トランプ政権が救済に乗り出したインテルにエヌビディアが参画します。ジェンスン・ファンCEOは「歴史的な提携」と述べ、データセンター向けの半導体を共同開発します。

データの囲い込み、先端技術での優位性が経済上、国防上の重要課題となっていることがあらためて明らかになりました。この領域への投資は衰えることがないようです。

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(3)自民党総裁選は小泉進次郎・農相と高市早苗・前経済安全保障相が正式に出馬を表明しました。週明けの告示を前にして早くも熱戦を迎えています。

小泉氏は9月20日(土)に総裁選への政策を発表し、2030年度までに国内投資を135兆円に増やす、平均賃金を2030年度までに100万円増やす、所得税の基礎控除を引き上げる、ガソリン税の旧暫定税率を廃止する、物価高対策・社会保障制度改革で野党に政策協議を呼びかける、などを盛り込みました。「防災庁の設置」も石破政権から引き継ぐことを掲げています。

高市氏は「責任ある積極財政」、消費税減税よりもガソリン税の旧暫定税率の廃止を優先、「給付付き税額控除」の検討、「年収の壁」の引き上げ、成長による税収増をめざすという政策です。

この2人を軸に2週間の総裁選がいよいよ幕を開けます。1-2年で首相が交代する事態が続いていても、海外投資家は日本の政策の行方を気にしています。今週からどのような展開が待っているのか。興味の尽きないところです。

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先週の東京株式市場は、TOPIXは小幅ながら反落しました。下落率は▲0.41%にとどまっており、前の週に+1.78%も大きく上昇した反動が見られます。

日経平均はわずかですが週足で続伸しており、これで4週連続の上昇です。中・小型株への物色が続いていましたが、先週はJPX日経中小型株指数も11週ぶりに下落しました。

規模別指数では大型・中型・小型株ともそろって3週ぶりに反落しています。大型指数は▲0.22%、中型株指数は▲0.05%、小型株指数は▲0.13%の下落でした。中型株指数はわずかな下落にとどまりました。

これまで軟調だった東証グロース250指数(旧マザーズ指数)は5週ぶりに上昇しました。

スタイル別ではバリュー株、グロース株ともに3週ぶりに反落していますが、いずれも小さな動きにとどまっています。小型グロース株は+0.16%とわずかながら上昇しました。11週連続の上昇です。大型グロース株は▲0.64%です。

東証プライム市場の騰落レシオは、週末に113.63%まで緩やかに低下しています。日経平均のサイコロジカルラインは「9」まで上昇した後、週末は「8」となりました。

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TOPIX-17業種のセクター別騰落では、8業種が値上がりし、9業種が値下がりしました。久しぶりに値下がりするセクターの数が優勢となりました。

値上がりセクターの上位は「商社・卸売」、「エネルギー資源」、「電機・精密」です。引き続きテクノロジー企業、およびインフレに強い銘柄が人気を集めています。

値上がり第1位の「商社・卸売」では総合商社が静かに買い進まれています。伊藤忠(8001)、丸紅(8002)、住友商事(8053)が上場来高値を更新し、三菱商事(8058)、三井物産(8031)が年初来高値となっています。

三菱商事が洋上風力発電所に関して国内の3海域プロジェクトから撤退を決めましたが、そこから株価は上昇を開始しています。洋上風力発電は技術的、コスト的に困難さが増しているとされていますが、電力エネルギーの需要増は待ったなしで始まっています。

伊藤忠、住友商事、丸紅は別の海域で洋上風力発電の建設を計画しており、循環物色の一環として高値追いに至ったと見られます。

同様に値上がりセクター第2位の「エネルギー資源」も、出光興産(5019)、ENEOSホールディングス(5020)、石油資源開発(1662)が堅調でした。

値上がりセクターの第3位は「電機・精密」です。前週のアドバンテスト(6857)、キオクシアHD(285A)の急騰が依然として続いています。

半導体関連株は一段と厚みを増しており、先週は東京エレクトロン(8035)、スクリーンHD(7735)が物色対象に加わりました。KOKUSAI(6525)、イビデン(4062)、芝浦メカトロニクス(6590)、アルバック(6728)も出遅れ感から物色されています。

半導体からさらに広がって電子部品でもTDK(6762)、村田製作所(6981)、ニチコン(6996)が上昇しました。NEC(6701)、ダイヘン(6622)、アルプスアルパイン(6770)も堅調です。

好調のエレクロニクス業種の中にあっても、キヤノン(7751)、リコー(7752)、キーエンス(6861)、ファナック(6954)は依然として人気の圏外に置かれています。

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一方で値下がりセクターの上位には、「電力・ガス」、「情報通信・サービス」、「金融(除く銀行)」が入りました。

電力株が東京電力HD(9501)を

(後略)

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鈴木一之