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2024年5月14日

大型連休が明け決算発表が本格化、日経平均は小さな動きにとどまる

鈴木一之

鈴木一之です。大型連休が終わりました。どこへ行っても人・ヒト・ひと、混雑ばかりの連休でしたが、世の中を揺るがすような大きなニュースの少ない平穏な休みでした。ガザ地区におけるイスラエルとパレスチナの停戦交渉を除けば、ですが。

株式市場にも常態が戻りつつあります。4連休明けのマーケットでは、株価指数で見る限り日経平均は2勝2敗とイーブン、TOPIXは3勝1敗と勝ち越しました。グロース株よりもバリュー株が優位を保っているように見え、そのあたりの変化がTOPIXの堅調さに感じられます。

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連休中の最大の話題は、為替市場における円安の一段の進展、それに伴う政府・日銀の為替介入の発動です。

連休前半に一時1ドル=160円台に乗せたドル円相場は、連休中に151円台まで急激な円高に振れた後、現在は154~155円台に落ち着いています。

4月、米国景気があまりに強く、インフレが収束しないことによって、FRBは今年中に政策金利を引き下げる余地はなくなるとの見方に大きく傾きました。その流れが5月に入って再び一変しました。

日本の連休中に米国の長期金利は一段と低下し、10年国債利回りは4月末の4.6%台から、連休中には4.4%台に低下しました。

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米国では4月のISM景況感指数と雇用統計が発表され、どちらも景気の弱さを示す結果となりました。

雇用統計では非農業部門雇用者数の伸びが17.5万人(予想は24万人)、失業率は3.9%(同3.8%)、平均時給の伸びは0.2%(同0.3%)でした。ISM・非製造業景況感指数は49.4、分岐点の「50」を下回って市場予想の52.0も下回っています。

1か月前とはちょうど反対で、このような弱めの経済データによって、目の前の急激な金利上昇、およびドル高・円安の流れに歯止めがかかったと見られます。

金利先物市場の動きに基づいて市場参加者が形作る「フェドウオッチツール」では、年内の利下げの回数は5月6日の時点で「年2回」となりました。GW前の「年1回」から利下げ予想が増えています。

金融市場では「市場予想より良い」、「市場予想より悪い」という部分の判断が重要とされます。自分がどのように考えるか、ではなく自分以外の人々がどのように判断するか、「美人投票」の理屈が幅を効かせます。

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そこで問題となるのは、基準とされる「市場の予想」が果たしてどこまで正しいのかという点です。アナリストの業績見通しは、景気のよい時は強気のバイアスがかかりやすいとされ、不景気の時はその反対のことが起こりやすくなります。

バブルの頂点だった1989年末に、「来年の株価の見通しは?」と聞かれて「日経平均で4万円」「いや10万円」という答えが多かったのを記憶しています。これなどは強気バイアスの最たるものです。実際に4万円を越えたのは34年後の今年です。

パウエル議長が「データ次第」と頼るその経済データに、どこまで予想のバイアスがかかっているのか、それは誰にもわかりません。そのバイアスの部分に賭けてこそ、債券や為替市場で投資家はポジションを持つことができます。

理屈は堂々巡りに陥ります。1か月~数か月ごとに同じ経済統計が繰り返し発表され、そのたびに株価と長期金利は楽観と悲観の間で揺れ動く傾向は、しばらく続きそうな雲行きです。

いずれにしても5月相場では米国の長期金利が低下して、日米金利差が縮小し、ドル円相場は円の下落にひとまず歯止めがかかりました。今週発表される4月の消費者物価指数が次なる関門となります。

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それとは別に、連休前後の急激な円安のきっかけを提供したのは、日銀の植田総裁であるという見方も一部には存在します。

連休直前の4月26日、金融政策決定会合の後に行われた記者会見において、植田総裁は円安について触れ、「基調的な物価の上昇率に今のところ大きな影響を与えているということではない」と説明しました。

これが市場の一部で、円安を理由に日銀が早期に利上げに踏み切ることはない、と受け止められたようです。かなり根拠の薄い理屈ですが、ヘッジファンドに売りの口実を与えるには十分の内容です。ここから一気に160円台まで円売りが加速して、4月29日の為替介入(?)につながったと見られています。

連休明けの5月7日に植田総裁は岸田首相と会談し、その後で「(円安について)日銀の政策運営上、十分注視をしていくということを確認した」と述べました。前回の認識とは明らかに変化が見られます。

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円安は日本の輸出企業にとってドルを円換算する際にメリットとなりますが、同時に原材料の輸入コストを押し上げるデメリットでもあります。今回の3月決算企業の決算発表にもプラスとマイナスの両方の側面が見られます。

一方で個人消費にとっては、円安はデメリットの側面が色濃く出ているようです。輸入物価の上昇は食料品を中心に物価の上昇に直結しており、人々は見えないところで生活防衛に走っています。

厚生労働省が発表した3月の毎月勤労統計調査では、物価上昇を除いた実質賃金は前年比▲2.5%となりました。減少は過去最長の24か月連続です。賃上げによって給与そのものは総額で伸びているものの、物価の上昇に追いつかないのが現状です。

24か月は2年です。この2年間はコロナ禍が去った経済再開の時期と重なります。旅行やコンサート、スポーツイベントなど「コト消費」の部分は日本人の間でも伸びているものの、普段の消費生活は節約モードが一段と強まっています。

消費者のひとりとして、支出を出し渋る場面と思い切って使う場面の切り替え、メリハリの利いた消費行動が自分でも定着してきたと感じることが増えています。重要なのは米国ではなく日本の景気と物価です。生活実感としては苦しくなっているのが実感です。

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先週の東京株式市場は、大型連休明けで立ち合い日数は4日間でした。TOPIXは3週ぶりに下落しましたが、下落率はわずか▲0.01%でほとんど「前週末比変わらず」の状態でした。ローソク足もほぼ「寄り引け同事」となっています。

規模別指数では、大型株指数が▲0.58%と小幅軟化したのに対して、中型株・小型株指数はそれぞれプラスを維持しました。どちらも3週連続の上昇です。それまでの大型株が優勢という展開から徐々に変化が見られます。

スタイル別では、TOPIXバリュー株が▲0.24%の下落に対して、TOPIXグロース株は+0.23%とプラスを維持しました。小型株に関してはグロース株、バリュー株ともに上昇しています。

騰落レシオは引き続き90%台から108.18%まで上昇しています。4月18日以来の100%越えです。日経平均のサイコロジカルラインは週末「7」で引けました。

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TOPIX-17業種のうち、値上がりセクターは10業種、値下がりセクターは7業種となりました。

値上がり上位のセクターは「エネルギー資源」、「機械」、「銀行」でした。

トップの「エネルギー資源」は、決算発表を好感してコスモエネルギーHD(5021)が大きく上昇し、他の銘柄を牽引しました。コスモエネは期末配当金の下限を250円から300円に引き上げています。

値上がり第2位は「機械」でした。川重と同様にIHI(7013)も好決算で大幅高となり、ディスコ(6146)、ツガミ(6101)、DMG森精機(6141)、竹内製作所(6432)の好業績銘柄の物色人気が続いています。

値上がり第3位は「銀行」です。米国では長期金利が上昇基調からわずかに低下しているものの、銀行セクターにとって利上げモードが続き経営環境は良好です。

いよぎんHD(5830)、ちゅうぎんFG(5832)、めぶきFG(7167)、ひろぎんHD(7337)、群馬銀行(8331)、七十七銀行(8341)など、地銀株の一角は年初来高値を更新し、メガバンクをリードしています。

反対に値下がりセクターの上位は「自動車・輸送機」、「電機・精密」、「電力・ガス」でした。

いずれも決算発表を受けて「自動車・輸送機」ではデンソー(6902)、トヨタ自動車(7203)などトヨタグループ各社が弱い動きです。

「電機・精密」ではソニーG(6758)、アドバンテスト(6857)、イビデン(4062)、日清紡HD(3105)が軟調ですが、先に売られていたニデック(6594)、ファナック(6954)、オムロン(6645)、横河電機(6841)は決算発表をきっかけに買い進まれています。

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その決算発表ですが、主力企業も含めて第2週目を終えて、いよいよ本格化してきました。

トヨタ自動車(7203)は前期の営業利益が5兆円に乗せましたが(5兆3529億円+96%増)、今期の見通しは4兆3000億円で▲20%近い減益となりそうです。それでもEV、AIへの積極投資を続け、今年度の投資額は1兆7000億円(+40%)に達する見通しです。成長投資への取り組みが一段と加速する姿勢を明らかにしました。

ホンダ(7267)も同様に投資を加速させています。営業利益は前期が1兆3819億円(+77%)、今期も1兆4000億円(+2.8%)とわずかですが増益を維持する見通しです。その上で年間の研究開発費を1兆1900億円として、1台当たりではトヨタの2倍、過去最大の金額を投じる予定です。

マツダ(7261)は2024年3月期の純利益が2076億円(+45%)となりました。今期も2700億円(+7.8%)と増益の見通しです。

日本郵船(9101)と川崎汽船(9107)はそれぞれ1000億円の自社株買いを発表しました。コンテナ船の数量が堅調に推移し、運賃も高止まりが続く見通しです。どちらも最終増益の予想しています。

日本製鉄(5401)は

(後略)

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鈴木一之