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2023年2月4日
米国が順調な戻り相場、強すぎて逆に心配も。TOPIXも3週連続で上昇
鈴木一之です。先週も日本は記録的な寒波に見舞われました。一方で欧州は歴史的な暖冬で、心配されたエネルギー危機は回避されそうです。気候変動が日常のものとして定着しています。
先週の株式市場はしっかりした値動きが続きました。TOPIXは3週連続の上昇を記録し、出遅れていた日経平均も27,000円台半ばまで値を戻しています。
最も上昇力の強いのが大型株、超大型株です。TOPIX・コア30は昨年11月24日につけた高値を更新しました。TOPIX・コア30の水準を日経平均に単純にあてはめると28,500円くらいになります。電機・機械・銀行・小売など、業界を代表するセクターの大型株が一段と上昇に弾みがついています。
世界経済は今年前半にリセッション入り、その見通しに基づいて先行きの株価への警戒心が蔓延しているため、機関投資家の株式組み入れ比率は歴史的な低水準にあります。そこに現在、世界的な株高現象が起こっているために、株式の「持たざるリスク」が意識され始めています。
それが出遅れ大型株に対する循環物色となって表れています。先週半ばまでオリエンタルランド(4661)は10連騰を記録し、パナソニックHD(6752)、大成建設(1801)、コマツ(6301)、スズキ(7269)、セブン&アイHD(3382)など、これまでマーケットではあまり顧みられなかった銘柄群が軒並み上昇しました。
ひとたびこのような状況に入ると、出遅れ投資家がひとり、またひとりと市場に参入し始めます。中・小型株ではその傾向がさらに顕著となっています。市場を取り巻く状況はきわめて不透明感ですが、それはそれとして機関投資家の運用競争は理屈とは別のところで続けられています。出遅れ株への循環物色は今後もまだ続くと見られます。
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あれほど警戒された「今年前半のリセッション入り」はどこに行ったのか。実はどこにも行っておりません。景気の現状はますます弱くなっています。
1月23日にコンファレンス・ボードが発表した12月の米・景気先行指数は、前月比▲1.0%の低下となりました。これで10か月連続でのマイナスで、事前の市場予想(▲0.7%)も下回っています。
決算発表が相次いでいますが、業績面でも市場の期待に届かない企業が増えています。
注目のマイクロソフトの10-12月期は、売上高が前年比+2%の527億ドル、純利益は▲12%の164億ドルとなりました。売上高の伸び率が1ケタ台に落ちるのは6年ぶりのことで、市場予想(530億ドル)にも届きませんでした。
マイクロソフトは3月までに1万人の従業員を削減すると発表しました。同じように欧州のスポティファイも全従業員数の6%に当たる600人の人員削減を発表しています。
スポティファイの創業者でCEOのダニエル・エク氏が従業員に向けた「収入の伸びと比べて、先行投資を行うことに野心的になりすぎた」とのコメントが、現在のテクノロジー企業が直面している今の状況を端的に示しています。
すなわち、コロナ禍の混乱で普段以上に伸びた巣ごもり消費による需要を恒常的なペースと受け止めてしまった点です。世界の先端的なテクノロジー企業が同じ時期に同じ判断ミスを犯したとも思えませんが、需要が平常に戻りつつあり、同時に高いインフレ率が残って、人々は消費に向ける家計の資金を急速に絞り込んでいます。
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自動車のフォードも欧州で3200人の従業員をカットすると伝えられています。EVシフトを急ぐためです。これらを含めて米国では、テクノロジー企業の人員整理は、2022年は年間で11万人の規模に達するそうです。
ただしその8割がすぐに次の就職先が見つかり、新興企業に散らばった優秀なIT系の人材が新たなイノベーションを起こす原動力になると見られています。
経済が悪化すれば、当面の難問であるインフレが収まり、FRBをはじめ中央銀行は利上げペースをダウンさせるとの期待がマーケットに広がりつつあります。
その期待とともに中国の景気底入れ予想が重なって、世界中の株式市場は戻り歩調を強めています。イギリス、ドイツの欧州主要国から、アジアでもシンガポール、香港、そして上海市場が戻り歩調を強めています。
しかしそれはFRBの望むところではありません。今週は1月31日~2月1日に今年最初のFOMC開催を控えています。パウエル議長の改憲で辛口の発言が飛び出すことをマーケットは恐れています。期待値だけで上値をトライしてきたマーケットにとって、今週のFOMCはどんな結果をもたらすでしょうか。
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先週の東京株式市場は、TOPIXが3週連続で上昇しました。昨年10月第1週以来のことです。週間の上昇率は+2.90%と一段と拡大しました。前週の+1.25%、前々週の+1.46%に続いて上昇幅がさらに拡大しています。
東証マザーズ指数も3週続けて上昇しました。グロース株ばかりでなく、バリュー株にも物色のホコ先が向かっています。出遅れ株人気が高まっているだけに、わずかにバリュー株が優位の展開です。大型株も中・小型株もそろってほぼ同率の上昇を記録しました。東証REIT指数も4週ぶりに反発しています。
テクニカル面では、騰落レシオはさらに上昇を続け、週末には122.24%まで上昇しました。警戒ラインとされる120%水準を2か月ぶりに突破しました。この数値だけですぐに反落することはありませんが、物色対象が広がると騰落レシオは上昇しやすくなります。
日経平均のサイコロジカルラインはさらに高止まりとなっており、週半ばには過熱圏の一歩手前の「9」まで高まりました。
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TOPIX-17業種のセクター別騰落では、値上がりセクターは16業種に広がりました。値下がりセクターは「運輸・物流」の1業種にとどまっています。
値下がりした「運輸・物流」では電鉄株が週の後半にかけて軟調で、加えて海運セクターも週末に下落しました。高止まりを続けたコンテナ船運賃ですが、経済正常化に伴って今後は弱含むとの見方が増えており、それが海運セクターの株価を押し下げています。
上昇トップは「機械」でした。出遅れ株の最たるものですが、年初から上昇相場をリードした電機のキーエンス(6861)が再び堅調さを取り戻したことから、ファナック(6954)、SMC(6273)、オークマ(6103)、ツガミ(6101)、ナブテスコ(6268)、コマツ(6301)などが一斉に、一段の上値追いとなっています。
産業界を通じて設備投資が堅調であること、経済安保の観点から製造業の国内回帰が始まっていること、さらに今年は自動車業界の復調が期待されること、などが機械セクターを幅広く押し上げていると見られます。
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値上がりセクターの第2位は「銀行」でした。日銀が金融政策の変更を行った12月20日以降、マーケットの注目は銀行株に移っています。1月18日の決定会合の直後に弱含みの動きに変わりましたが、三菱UFJフィナンシャルグループ(8306)、みずほフィナンシャルグループ(8411)を中心に、メガバンクから地銀株まで幅広い銘柄で買い優勢の展開に戻っています。
値上がりセクターの第3位は「素材・化学」です。信越化学工業(4063)が第3四半期の決算で驚くべき好業績を挙げ、株価が急騰しました。それが号砲を鳴らす形となり、三菱ケミカルグループ(4188)、住友化学(4005)、東ソー(4042)、旭化成(3407)など、石油化学メーカーが一斉に上昇に転じています。
先々週までの「鉄鋼・非鉄」、「商社・卸売」に続いて、先週は「機械」そして「素材・化学」とくれば、物色対象として人気を集めているセクターのほとんどが景気敏感株ということになります。
世界経済のリセッションは本当に来るのか、来るとすればどれくらいの規模になるのか。今は期待値だけで買われている部分も大きく、すぐには答えは出てこないように思います。
それでもこれほどまでに出遅れ株が物色され、景気動向に敏感なセクターの動きが鮮明になっている以上、景気サイクルはどこかの時点で大底を打っているようにも考えられます。
早いもので今週から2月相場。正しい方向性を求めて、ここから新たなマーケットとの格闘が始まることとなりそうです。
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先週もビッグニュースが相次ぎました。中でも最大のものが
(後略)