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2023年7月3日
米国のタカ派モードが徐々に市場に織り込まれ、日経平均も堅調
鈴木一之です。6月最終週の先週の株式市場は反発しました。その前の週に日経平均は11週ぶりに週足で下落となりましたが、1週間で早くも騰勢が戻っています。
手がかり材料は豊富です。何を根拠に盛り返したのかわかりにくいほど、株式市場を取り巻く材料は、よいニュースも悪いニュースも合わさって目が回るほど忙しい状況です。それでも株価は週足で反発しました。
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最も大きな手掛かり材料はやはり米国です。
米国経済はきわめて順調な拡大基調をたどっており、それが株式市場を押し上げました。FRBのたび重なる金利引き上げにもへこたれない強さを示しています。
6月27日(火)に6月の消費者信頼感がコンファレンス・ボードより発表され、これが109.7(+7.2)と3か月ぶりのプラスとなりました。1年5か月ぶりの高水準に達しています。現在の景況感を示す「現況指数」は155.3(+6.4)と大きく上昇し、2021年7月以来の高水準です。
6月29日(木)には1-3月期の実質GDP確定値が発表され、前期比年率で+2.0%と市場予想の+1.4%を大きく上回りました。この日は週間単位の新規失業保険申請件数も発表され、これも23万9000件と前週比で大幅な減少、5月以来の低い水準です。
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経済の好調ぶりを示す結果が相次いで発表されています。強すぎる経済がインフレに火をつけており、これまでであればそれだけで株価は下落していました。しかし長期金利は再び強含みで推移しているものの(米10年国債金利は3.84%に上昇)、現在では株価はきわめて堅調です。
6月FOMCでのドットチャートで示された「年内はあと2回の利上げ」の見通しが、株式市場に織り込まれるには時間がかかっていました。それが先週あたりからようやく、今回の金融当局によるタカ派的な見通しの浸透を、マーケットは徐々に吸収しつつある模様です。
週末のNYダウ工業株とNASDAQはそろって大幅高となり、S&P500は直近高値を更新しています。上半期が終了した時点で、1-6月のNASDAQ総合指数は上昇率が+32%に達しており、上半期として1983年以来という40年ぶりの大幅高となりました。アップルの時価総額は3兆ドルを突破して史上最高値を更新しています。
本来であれば金利上昇に弱いグロース株ですが、現在はそれが特に強く評価されています。
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世界が心配しているのは米国ではなく、中国の経済状況です。先進国の利上げモードに対して唯一、中国だけは政策金利を引き下げたばかりです。
6月30日(金)に中国の景況感指数(PMI)が発表され、製造業は49.0(+0.2)と前月比プラスでしたが、3か月連続で分岐点の「50」を下回りました。
「ゼロコロナ」終了後の回復をリードしてきた消費活動に一服感が出ています。それが生産活動の伸び悩みにつながり、同時に不動産市場にも影響しています。
これに先立って中国の李強首相は、4年ぶりに開催された世界経済フォーラムの夏季ダボス会議で演説を行い、2023年の政府目標である「5%の成長目標の達成は可能である」と述べました。米中対立の激化でより厳しさを増している景気減速への懸念を軽く受け流しています。
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先週も半導体の先端技術を巡って、米国と中国は激しい対立を演じました。
ウォール・ストリート・ジャーナル電子版で報じられたところでは、米国は半導体の中国への規制を拡大して、先端的なAIに用いられる半導体にも新たな規制を設ける方針です。中国向けの半導体規制が導入されてからは初めての対象拡大です。
オランダも中国を念頭に置いて、9月より半導体製造装置の輸出規制を強化します。日本は日本で、産業革新投資機構が1兆円を投じてJSR(4185)を買収する計画が明らかになりました。
中国は5月にマイクロン・テクノロジーからの半導体製品の調達を停止しました。半導体を巡って国家間の対立がさらにエスカレートする可能性もあります。帰着点はまだ見えておりません。
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月末でもあり日本でも経済統計の発表が活発化しました。5月の鉱工業生産は103.8(▲1.6)となり4か月ぶりの低下でした。15業種のうちの12業種で生産が低下しています。
日本と米国の景況感と金利差の拡大から、為替市場では週を通じてドル高・円安が進行し、週末には145円台まで入りました。7か月ぶりの円安水準で、政府・日銀による円買い介入の観測がくすぶっています。
ここからは政府要人の発言が重要です。鈴木俊一財務相は「高い緊張感を持って市場の動きを注視している」、「行きすぎた動きがあれば適切に対応する」と強調しました。これらの発言を総合して、為替介入に対する当局のスタンスは1段階引き上げられたと市場では見ている模様です。
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そのような状況の中で先週の東京株式市場は、TOPIXが反発しました。前の週に▲1.54%と4週ぶりに小幅反落しましたが、それがわずか+1.05%ですが早くも上昇に転じました。
規模別では大型株が+1.32%と上昇が目立ちます。小型株は+0.64%の反発にとどまりました。東証マザーズ指数は2週連続で下落しています(▲1.72%)。
反発をリードしているのはバリュー株です。大型バリュー株は+1.23%、小型バリュー株は+1.24%とどちらも堅調でした。反対にグロース株は、大型グロース株が+0.95%の上昇にとどまり、小型バリュー株は+0.03%とさらに上昇幅が小さくなっています。配当フォーカス100指数は反発しました。
日経平均採用銘柄のうち、PBR(株価純資産倍率)が1倍を下回っている銘柄数は90銘柄となりました。1週間で+2銘柄増加しており、採用銘柄(225銘柄)の40%を占めています。
テクニカル面では、騰落レシオが6月26日に100%を下回る99.20%に低下した後、週末は115.93%に上昇しています。日経平均のサイコロジカルライン一段と低下し、3月27日以来の「5」となりました。日経平均ボラティリティ指数は反落しています。
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TOPIX-17業種のセクター別騰落は12業種が値上がりし、5業種が値下がりしました。
値上がり上位のセクターは「自動車・輸送機」、「銀行」、「鉄鋼・非鉄」です。トップの「自動車・輸送機」は、前の週に11週ぶりに下落したものの、そこから早くも切り返しています。
半導体の調達不足が解消に向かっており、遅れていたコロナ禍からの「挽回生産」がいよいよ軌道に乗ってきたこと、各社がEV戦略を強めて設備投資を加速させていること、為替が円安基調を強めており業績の増額修正が見込まれること、などが自動車セクターを広範囲に押し上げています。
完成車メーカーでは最も出遅れていた日産自動車(7201)の上昇が顕著です。ほかにもスズキ(7269)、スバル(7270)、マツダ(7261)が堅調で、部品メーカーでもデンソー(6902)、アイシン(7259)、フタバ産業(7241)、東海理化(6995)などトヨタ系メーカーの上昇が目立ちました。
「銀行」では三菱UFJフィナンシャルグループ(8306)を筆頭に、三井住友フィナンシャルグループ(8316)、みずほフィナンシャルグループ(8411)のメガバンクがいずれも堅調でした。
米国でストレステストの結果が判明し、大手銀行の株価が軒並み上昇しています。日本でも金融システムリスクは遠のき、地銀株の一角も含めて出遅れていた銀行セクターが幅広く物色されました。
九州フィナンシャルグループ(7180)、西日本フィナンシャルHD(7189)、ふくおかフィナンシャルグループ(8354)、山口フィナンシャルグループ(8418)など、九州を地盤とする地銀がとりわけ堅調でした。
同じように出遅れ感から「鉄鋼・非鉄」もしっかりした値動きです。中国の景況感が気がかりですが、仮にこれ以上悪化しないのであれば鉄鋼セクターにも物色が向かいやすくなります。
神戸製鋼所(5406)、JFEホールディングス(5411)、大同特殊鋼(5471)、山陽特殊製鋼(5481)がしっかりした値動きです。
一方で値下がりの目立ったセクターは「医薬品」、「食品」、「不動産」でした。ディフェンシブ的なセクターが多く含まれます。
医薬品セクターでは、そーせいグループ(4565)の連続ストップ安と強烈な下落となりました。米国のファイザーが糖尿病治療薬の開発中止を決定したことで、新薬開発の技術を供与しているそーせいへの失望売りが集まりました。
協和キリン(4151)、アステラス製薬(4503)、塩野義製薬(4507)も軟調な動きが目立ちました。
食品セクターでもヤクルト本社(2267)、
(後略)