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2024年6月11日

週末の5月雇用統計と、来週の中央銀行ウィーク目前で膠着

鈴木一之

鈴木一之です。6月相場が始まりました。世界中のマーケットで一進一退の動きが強まっています。

現在の金融市場の動向を決定づけているのは、米国の金利水準と物価上昇のスピードです。それを判断する上で最も重要な指標である雇用統計、ISM景況感指数という米国の経済統計が発表される月初めとあって、見送りムードの強い地合いが一段と手控えられる結果となりました。

1週間もすれば経済データは手に入ります。それを受けて日銀金融政策決定会合とFOMCの開催を待つ形となっており、市場のほとんどが動きを止めています。

パウエル議長がかねて主張するように、すべてはこれから発表されてくる「経済データ」の数値にかかっています。ここまで来ると安易に予想を立てることすらむずかしくなっています。

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あいかわらず新しいニュースだけは世界中にあふれています。

今年は選挙イヤー。メキシコで大統領選が行われ、共和国200年の歴史上、初めて女性の大統領が誕生しました。新任のシェインバウム氏は現職のロペスオブラドール大統領の後継として中道左派路線を引き継ぎます。

南アフリカでは与党、アフリカ民族会議が勝利しましたが、過半数の獲得はなりませんでした。こちらも史上初の連立政権となる見込みです。インドでも世界最大の総選挙の結果が判明し、モディ首相率いるインド人民党が勝利を収めましたが、ここでも予想外の苦戦を強いられています。

中央銀行の動きも活発です。カナダはカナダ中央銀行が6会合連続の金利据え置きの後に、4年3か月ぶりに政策金利を引き下げました。カナダの政策には先駆性があります。今回のインフレ局面において、G7加盟国としては初めて利下げに転換しました。

ECBも6月6日の理事会で利下げの開始を決定しました。2019年9月以来、4年9か月ぶりの政策金利の引き下げです。これまでの金融引き締めによってインフレ見通しが大幅に改善したことがその理由です。

これらの動きが今週末のFOMCの決定にどうつながってゆくのか、今週以降の市場はさらに神経質になりそうです。

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政策金利の引き下げが相次いでいる理由のひとつとして、原油をはじめ資源エネルギー価格が急落していることが挙げられます。特に原油価格は、WTI先物で72ドル台まで4か月ぶりの安値まで低下しました。

6月2日にOPECプラスが閣僚級会合を開催し、事前予想に反して自主減産を縮小する方針を決定したことが要因です。

決定では2025年の生産量を日量3972万バレルとして、2024年の3942万バレルからわずかに拡大しました。UAEは30万バレル増やし、サウジやイラクは据え置きます。10月から徐々に減産幅を縮小するため、2025年の世界の石油需給バランスは供給過剰になる可能性が高いと見られます。

ゴールドマン・サックスは今年の原油価格の見通しを75-90ドルと予想しますが、価格面では下方向のリスクが勝ると見ています。世界経済の見通しが弱く、石油需要も弱まるとの見方が増えています。

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そのような不透明な状況にあって、エヌビディアの株価は史上最高値を更新し続けました。時価総額はついに3兆ドルを突破し、マイクロソフトに次いで世界第2位となりました。生成AIの開発に用いる画像処理半導体への期待がさらに高まっています。

ボーイングは初めての有人宇宙船の打ち上げに成功し、スペースXは大型ロケット「スターシップ」の地球への帰還実験に成功しました。

日本では「骨太の方針」(経済財政運営の基本方針)の骨子が明らかになり、ラピダスを中心とした次世代半導体の量産体制や、自動運転の運行プロジェクト、リスキリング推進策、円安対策、などが盛り込まれる見通しです。岸田政権は通常国会終盤での衆院解散・総選挙は断念したようです。

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市場全体では株価の動きは小さなものにとどまりましたが、個々の企業ベースでは実に話題が豊富でした。時価総額、売買代金ともにウエートの大きな企業に重要ニュースが多かったように感じます。

証券取引等監視委員会は、三菱UFJフィナンシャルグループ(8306)傘下の三菱UFJ銀行と証券2社に行政処分を行うよう金融庁に勧告する方向です。非公開の顧客情報を同意なしで傘下の銀行と証券会社で共有していた疑いがもたれています。

トヨタ自動車(7203)、マツダ(7261)、ヤマハ発動機(7272)、ホンダ(7267)、スズキ(7269)の自動車5社に対して、国土交通省は型式指定での不正があったとして立ち入り検査を行いました。該当する車種には生産停止処分が出されています。

レーザーテック(6920)には不正会計の可能性があるとの理由から、空売りファンドが空売りを開始したと伝えれられています。ソフトバンクG(9984)はアクティビティストのエリオット・マネジメントが株式を大量に取得して、自社株買いを要求しているそうです。

6月は株主総会の季節でもあります。マーケットの年度スケジュールでもひとつの節目を迎える時期ですが、今年の総会を無難に迎えられる企業は少ないのではないかと今から危惧されます。

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先週の東京株式市場は、TOPIXが反落しました。下落率は▲0.63%と小さなもので、前の週の+1.09%からはわずかな下げにとどまりました。重要なスケジュールを控えて神経質な動きが見られました。

規模別では、大型株は▲0.46%と4週ぶりに反落し、中型株は▲0.96%、小型株も▲0.90%(いずれも2週ぶりに反落)と軟調な動きに終始しました。

スタイル別では、それまで堅調だったバリュー株が▲1.33%と下げが目立っています。反対にグロース株は+0.12%と上昇しました。日米ともに金利低下が進み、グロース株が復調し始めています。東証グロース250指数も続伸しました。

騰落レシオは96.12%まで低下しています。6月6日(木)には91.24%まで一時的に低下しました。これは昨年11月2日の84.12%以来の低い水準です。

この時は株式市場は保ち合い抜け前夜という状況でした。ここが年間を通じてボトムとなり、そこから年末年始に向けて株価は大きく上昇。さらに年明けからの大幅高につながっています。

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TOPIX-17業種のうち、値上がりセクターは7業種、値下がりセクターは10業種となりました。久しぶりに値下がりセクターが優勢です。

値上がり上位のセクターは「化学・素材」、「不動産」、「医薬品」でした。どの業種も小さな動きにとどまっていますが、化学では信越化学工業(4063)、住友ベークライト(4203)、ユニ・チャーム(8113)などの大型株が堅調でした。

同じように「不動産」、「医薬品」でも、三井不動産(8801)、

(後略)

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鈴木一之