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2021年11月8日

COP26開幕、FOMC、決算発表を経てNY市場は最高値へ

鈴木一之

◎日経平均(5日大引):29,611.57(▲182.80、▲0.61%)
◎NYダウ(5日終値):36,327.95(+203.72、+0.56%)

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鈴木一之です。年内も2か月を残すばかりとなり、株式市場を取り巻く状況は急速に動きが加速しています。

年内のうちに懸念材料を残さないようにしているのか、年収めに向けてなのか、先週は数えきれないほど多くの変化が一度に起こりました。

週明けは衆院選の投開票が行われました。そして週末は米国の10月雇用統計が発表されましたが、このふたつにはさまれている案件だけでも、米FOMCでのテーパリング開始の決定、バージニア州での知事選で民主党候補の敗北、枝野幸男代表の辞任表明、COP26開幕、メルク製コロナ飲み薬のイギリスでの承認、OPECプラスでの増産見送り、トヨタ、ホンダ、海運3社の決算発表、フェイスブックの社名変更、、、

ざっと数え上げただけでもこれくらいになり、まだまだこの先があります。

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週明けの衆院選の投開票がずいぶんと遠い過去のような気がします。終わってみれば自民党は単独で絶対安定多数を確保する大勝利を収めました。野党共闘が完全に不発に終わり、枝野幸男代表が辞任を表明したことで来年の参院選をどのように戦うのか、自公政権の優位性が早くも固まったように感じられます。

その割には「選挙は株高」の習性が今回は発揮されなかったように感じられます。選挙期間中は暫定バージョンにとどまっていた、岸田首相の掲げる経済政策「新しい資本主義」の肉づけ案が、どうやら小粒な政策にとどまりそうな雲行きとなってきました。

現状で明らかになっている内容にとどまるのであれば、ここからさらに株価を押し上げるには少し力不足のように感じられます。

不発と言えば、先週末にイタリアで開催されたG20です。まったく中身がなく、主要メンバーはすぐにイギリス・グラスゴーに場所を移して「COP26」の議論に移りました。国際政治の中心議題は明らかに地球環境問題に置き換えられています。

そのCOP26ですが、簡単には議論はまとまらないことが浮き彫りになっています。石炭火力発電の廃止に関しては46か国が賛同しましたが、日本の名前はそこにはありません。各国の現状の目標数字では、気温の上昇を1.5度以内に収めることがむずかしいことが明確になりつつあります。

あと1週間の期間を残してグレタ・トゥンベリ氏は早くも「COP26は失敗」と唱えており、その印象がますます鮮明になっています。地球環境の保全には膨大な資金がかかるもので、途上国は現状よりさらに5倍から10倍のコストが必要です。米国のケリー特使が1000億ドルの資金援助を発案していますが、中国の「一帯一路」と同様に資金援助には必ず別の思惑があります。

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ふたつめの変化は米国の金融政策です。11月3日(水)にFRBは公開市場委員会(FOMC)を開き、大方の予想通りにテーパリング(量的緩和の縮小)の開始を決定しました。

今回の決定では、国債の買い入れ額を毎月150億ドルずつ減じてゆき、このペースでいけば来年6月には量的緩和策は終了することとなります。その先にはいよいよ政策金利の引き上げが待っていますが、市場の予想では利上げの決定は2023年以降になるだろうとの見方が大半となっています。

心配されていた資源・エネルギー価格の上昇は、ここに来て一服し始めています。LMEアルミニウムの価格は、直近ピークとなった10月19日の3,176ドル/トンから11月5日には2,490ドル/トンまで▲21%下落しています。

同じくLME銅も10月19日につけた10,652ドル/トンから11月5日には9,740ドル/トンまで▲8.5%の下落となりました。海運運賃も不定期船の指標であるバルチック海運指数が足元では急速に低下しており、「不景気の物価高」であるスタグフレーションの懸念はかなり後退しつつあります。

マーケットでは「噂で買って、事実で売る」という言い方をされます。米国の金融政策が実際に歴史的な緩和政策から縮小の方向に決定されると、物価高はひとまず収まる方向に向かい始めています。利上げに踏み切る時期はまだ当分、猶予されそうな情勢となっており、8月以降のマーケットを支配していた「インフレ懸念による金利上昇」の材料は遠のいてゆく方向にあるようです。

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それと同時進行で7-9月期の決算発表が活発化しています。米国では主要企業の大半がすでに発表を終えており、今回もまた予想を上回る好調さが確認されています。米国の株式市場ではNYダウ工業株をはじめ、主要指数がいずれも最高値を更新しました。

今回の決算ではコロナ危機後のリバウンドはほぼ一巡し、マクロ経済データの伸び悩みもあって、テクノロジー企業を中心に先行きの見通しが減速するのではないか、との懸念が強まっていました。しかし結果はきわめて良好です。

日本も同様です。トヨタ自動車の決算が11月4日(木)に発表され、中間期の時点で売上高は15.4兆円(前年比+36%)、営業利益は1.7兆円(+236%)と大幅な増収増益となりました。半導体の調達不足による工場の減産、操業ダウンの影響が気にならないはずはありませんが、円安の効果も加わって収益をしっかりと確保しました。

トヨタは11月からフル生産に戻す計画で、年間の生産計画は当初見通しを死守する構えです。他の自動車メーカーが苦戦する中にあって、まったく動じない姿が驚異的です。

日本企業全体でも足元の業績回復は順調です。日本経済新聞のまとめによれば、11月5日(金)までに決算発表を行った784社(3月決算企業の半数)の数字を集計すると、2022年3月期は純利益ベースで+45%増益になる見通しです。

5月時点では+28%の増益だったものが、8月には+36%に増額されて、それがさらに上乗せされています。期を追うごとに業績の見通しが拡大し、コロナ禍の落ち込みが急速に修復されている様子が見て取れます。

10月から緊急事態宣言が解除されて、経済再開が図られたものの、消費の現場では客足の戻りは今ひとつという状態が続いています。それでも都心部bでは旅行客の姿を見かけることが増えました。月次ベースの稼働率、売上げの伸びも徐々に回復していることが数字上に表れつつあります。

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前回は企業経営の「8重苦」について触れました。

(1)コロナ危機によるロックダウン、工場の操業停止、閉鎖
(2)半導体の調達不足
(3)輸送コストの上昇、コンテナ不足、ドライバー不足、ガソリン高
(4)原材料価格の上昇(塩ビ、鋼材、石油化学、小麦、食用油など)
(5)電力不足(特に中国で工場を展開する企業)、電力料金の上昇
(6)

(後略)

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鈴木一之