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2022年2月16日

ウクライナ情勢、米CPI待ちでも日経平均は2週連続で上昇

鈴木一之

◎日経平均(10日大引):27,696.08(+116.21、+0.42%)
◎NYダウ(11日終値):34,738.06(▲503.53、▲1.42%)

「ウクライナ情勢、米CPI待ちでも日経平均は2週連続で上昇」

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鈴木一之です。中国の春節も終わり、2月も半ばになりました。寒い日が続きますが、日中や早朝、夕方はそこかしこに春の気配が漂っています。

先週の株式市場も神経質な動きが続きました。ウクライナ情勢と米国の消費者物価指数の結果を受けて、週末のNYダウ工業株は2日間で▲1000ドルを超える下落となりました。

戻り歩調に対するアヤ戻しと見ることもできますが、週明けは警戒感から始まるのは避けられないところです。1987年の「ブラックマンデー」というように、月曜日から大幅安で始まるケースもあるためです。

慎重なスタンスが求められますが、そのような時に底堅さを示した銘柄は、次に相場全体が上昇に転じる時に真っ先に飛び上がってくるものです。ここは冷静に、決算内容を反映した株価の値動きを追いかけるところでもあります。「恐怖指数が上昇する時ほど冷静になれ」とバロンズ誌も述べています。

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ウクライナ情勢が日を追って緊迫化しています。熱戦が繰り広げられている北京オリンピックのニュースを除けば、メディアの報道はその一点に絞られています。

それでも日経平均は戻り歩調を示し、指数上では2週連続で上昇しました。3月決算企業の決算発表の真っただ中で、グロース株の底値買いとバリュー株の選別物色が続いています。

週明けは安堵と期待から始まりました、混迷の一途をたどるウクライナ情勢を打開しようと、フランスのマクロン大統領がモスクワを訪れプーチン大統領と会談を行いました。

会談内容の詳細は明らかにされていませんが、ウクライナとロシアの国境で現在行われている「軍事演習」が終了次第、軍隊を撤収するとのプーチン大統領の言質を取った、と報道では伝えられています。

しかしヨーロッパが打開に向けての外交努力を続ける一方で、米国からはロシアが一触即発の状態にあるという緊迫した情報を次々と発信しています。

2月7日(月)に米国のサリバン大統領補佐官はテレビのインタビューで、ロシアがウクライナに軍事侵攻する可能性は「早ければ明日かもしれない、数週間後かもしれない」と述べました。その上でロシアが侵攻したら、ウクライナでは最大5万人の民間人が死傷するとも指摘して、3000人の米国兵の増派も明らかにしました。

2月10日(木)には8~10万人規模の大規模な合同軍事演習がロシアとベラルーシによって始まりました。これに対して米国や欧州は東欧に軍隊を増派して対抗しています。

2月11日(金)の記者会見でサリバン補佐官は、ウクライナに滞在する米国人に対して「48時間以内に退避するように」うながしました。2月12日(土)にはバイデン大統領とプーチン大統領の電話協議が予定されていますが、はたから見ると米国のステイタスの後退、バイデン政権の及び腰がどうしても目につきます。

北京五輪の期間中は軍事行動はないだろう、と誰もが想像していましたが、それもどうやら当てにならなくなってきました。外交交渉は一般人には見えない水面下で続けられるだけに、表に出てくるニュースだけでは明確な結論は得られませんが、事態は一段と差し迫っていることだけは事実です。楽観は許されない状況です。

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ウクライナ問題もあって、原油をはじめ資源エネルギー価格が刺激されました。原油価格は週末にはWTI先物で93ドル台まで跳ね上がりました。穀物価格も一斉に上昇し、庶民の生活を直撃しています。

コロナウイルスの影響で、ただでさえ供給面での制約と物流の混乱が生じている時に、ロシアに経済制裁が課されるとの見方が浮上するだけで原油や天然ガスが高騰します。週末には米国の1月・消費者物価指数の発表が待ち構えていただけに、長期金利と資源価格の動向には週を通じて神経をとがらせました。

その1月・消費者物価指数は、前年比+7.5%という40年ぶりの高い伸びとなりました。これによって米国の10年国債金利は先週末に1.94%で終了し、一時は2.0%の大台を突破しました。2019年8月以来の高い水準です。

FRBは3月にも政策金利の引き上げを始めると見られますが、利上げ幅は0.5%、利上げの回数も年3~4回という見通しからさらに増えつつあります。ECBも金融緩和の縮小にカジを切っており、世界的に金利上昇モードが強まっています。株式市場ではグロース株からバリュー株への資金シフトが強まっています。

それに対して日銀は金融緩和のスタンスをあらためて表明しました。3連休前の2月10日(木)夕方、長期金利が0.2%を超え誘導目標の上限に接近してきたことから、週明けに「指し値オペ」を実施すると公表しました。0.25%の長期金利のレンジを維持する構えです。この政策が凶と出るか吉と出るか、世界が注視しています。週明けからの動きが非常に重要なものになると考えられます。

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コロナウイルスに関しては、オミクロン変異種の感染拡大は多くの先進国、途上国ですでに趨勢として下火に入っています。

日本は当初「2月中旬にもピーク」と大方の人が予想していました。しかし遅れて感染拡大の波に突入した分だけピークの到来も遅れており、先週は「まん延防止等重点措置」の適用の延長が決まりました。

今回も予想された事態に対して、日本は医療体制やワクチン、治療薬の調達などの準備、実施がもたついています。それでもようやく3回目のワクチン接種の準備が整いつつあります。東京では自衛隊が動員されて大規模接種会場がオープンしました。ここから接種が加速することになりそうです。

日本の不備は構造的なもので、根本的な背景には強制力をもたせる法整備がなされていないという点があります。

しかしだからといって、法律の強制力で個人の行動を縛りつける方策にも問題があるのは事実です。欧米各地でオミクロン変異種に対するワクチン接種の義務化、マスク着用の義務化が相次いで発動され、それに対する抗議デモが激化しています。

カナダのオンタリオ州では、トラック運転手へのワクチン接種の義務化に抗議するトラックの車列で橋が封鎖されました。これに対してオタワ州の首相は非常事態宣言を発しましたが、長距離トラックの運休というまたしても物流網の大動脈がダメージを受け、経済の再開が犠牲にされています。

工場再開の遅れにつながり、日時をおいて混乱は避けられません。行動規制は強すぎる規制もだめ、弱すぎる規制もだめ。コロナウイルスの感染長期化に対する人々のうっ憤、ストレスは世界中で高まっています。

日本では厚生労働省によって、ファイザーの経口治療薬が「特例承認」を使ってようやく認可されました。先週から株式市場では、航空会社、電鉄、外食、ジム、旅行代理店の株価が再び上昇し始めています。飲み薬とワクチンの普及で経済再開への希望がつながってゆけば何よりの朗報です。

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先週の東京株式市場は、TOPIXが2週連続で上昇しました。戻り歩調が継続しており、上昇率は前週の+2.86%に続いて、+1.66%となりました。

前の週はグロース株の戻りが特に目立ちましたが、先週はグロース株とバリュー株がそろって上昇しています。中でも銀行株に代表される大型バリュー株に力強さが戻ってきました。

東証マザーズ指数も昨年9月以来、小幅ですが2週連続で上昇しました。テクニカル指標は引き続きリバウンド局面を示しています。日経平均のサイコロジカルラインは昨年9月以来の「8」に達しました。騰落レシオは木曜日に95%台を維持しています。

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TOPIX-17業種のセクター別の騰落では、値上がりセクターは2週続けて16業種に広がっています。値下がりセクターは「エネルギー資源」の1業種にとどまりました。

値上がりセクターのトップは「鉄鋼・非鉄」です。JFEホールディングス(5411)が決算発表をきっかけに大きく上昇し、金属資源の上昇を背景に住友金属鉱山(5713)、大平洋金属(5541)、東邦亜鉛(5707)なども堅調でした。

値上がり上位は第2位は「銀行」です。年初からの軟調な地合いのなかで、一貫して上昇基調を保っているのが銀行セクターです。米国をはじめ日本でも金利上昇が鮮明化しており、三菱UFJFG(8306)、

(後略)

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鈴木一之