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2019年10月8日

大きな分岐点となるか、景気の動きが問われる10月

鈴木一之

◎日経平均(7日大引):21,375.25(▲34.95、▲0.16%)

◎NYダウ(7日16:20):26,478.02(▲95.70、▲0.36%)

 

 

鈴木一之です。10月相場の第2週が始まりました。最近にない緊張感をもって迎えています。

 

記憶をたどっても10月にはあまりよい思い出がありません。古くはブラック・マンデー、最近では昨年のペンス副大統領の演説。

 

NTTや日本たばこ産業、JR各社の民営化に伴う政府保有株の売出は決まって10月に実施され、そのたびに株式の需給関係が乱れました。10月はなぜか株価が下落しやすい季節です。

 

先週から世界の景気動向が再び問われ始めています。米国のISM製造業・景況感指数が10年ぶりの低水準まで低下し、週末の雇用統計も(株価は好感しましたが)実体はさほどよいものではありませんでした。

 

週明けの日本でも、景気の悪化を示すマクロ経済指標が続きました。8月の景気動向指数が悪化しました。

 

・先行指数:91.7(▲2.0)2か月ぶりのマイナス、3か月移動平均は14か月連続で低下

・一致指数:99.3(▲0.4)2か月ぶりのマイナス、3か月移動平均は3か月連続で低下

 

先行指数は2009年9月以来の低水準です。

 

株価は景気の先行指標なので、足元の動きが影響することはありません。8月分の経済統計の悪化は、8月より前の株価に反映されているはずです。目下の株価が下げるとすれば、それは先行きの経済が悪化していることになります。

 

足元の株価はギリギリのところで踏みとどまっています。それでもHOYA7741、三菱商事8058、ホンダ7267、信越化学工業4063、などの景気敏感株、景気連動株の一角で下落が見られます。経済状況に対する警戒心が広がっていることがうかがえます。

 

村田製作所6981、太陽誘電6976、TDK6762などの電子部品株は、朝方から大きく買われたものの、周囲の銘柄の下げに連動して大引けでは上げ幅は限定的となりました。

 

反対に、NTT9432、NTTドコモ9437、KDDI9433などの安定した通信株に逃避資金が流れこみやすくなっている様子がうかがえます。

 

9月相場は予想をはるかに超える株価の上昇がみられました。米国金利の上昇に伴って徹底的に下落したバリュー株が一斉に切り返しました。そのバリュー株ですが、銀行株を中心に再び軟調な動きに向かっています。

 

相場全体としてはまだしばらく上値の重い展開が続きそうです。米中貿易紛争の行方は、次第に「中国有利:米国不利」の方向に向かうとの予想が強まっています。お互いに報復関税をすべて打ち尽くした後は、時間的に余裕のある中国の方が余裕をもって交渉に臨めるという見方がその根拠です。

 

香港の民衆デモの混迷が広がっています。シリア北東部でトルコが軍事行動を起こす準備をしています。ロンドンとアムステルダムの中心部で気候変動に関する大規模なデモ行進が実施されました。

 

景気動向の悪化と相まって、それらのニュースのひとつひとつが企業の設備投資に二の足を踏ませます。ひとまず様子をみようというムードが世界中で広がっています。消費税が引き上げられ、今週から始まる小売企業の決算(特に先行きの見通し)が気になります。

 

その中で動きが目立つのが「5G」関連銘柄の健闘です。アンリツ6754、サンケン電気6707の堅調さが次第に広がりを見せています。

 

日本化学工業4092は年初来高値を更新しました。「無機化学のトップ企業」と言われてもピンときませんが、同社の「コバルト酸リチウム」はリチウムイオン電池に不可欠です。「炭酸バリウム」も積層セラミックコンデンサの材料として欠かせません。

 

液晶やプリント配線基板にリードフレームを張りつける「異方導電接着剤」は、タテ方向には電気を通し、ヨコ方向には絶縁する特殊な材料で、先端電子機器の大半で用いられています。

 

メック4971はプリント基板と半導体、電子部品を張りつける際の銅表面処理剤を主力製品としています。

 

またFUJI6134は今年7月の「名証IRエキスポ」でブースを取材した企業です。電子部品の自動装着装置のトップ企業で、現在の株価の堅調さは5G向け実装機がかなりの活況を呈していることを表しているようにも見えます。

 

クボテック7709は、液晶や太陽電池の画像検査装置の大手、日本電波工業6779は水晶発振子など通信機器に欠かせない水晶デバイスの世界大手です。真空蒸着装置のアルバック6728とともに、じわじわと上昇期入りを狙っています。

 

相場全体を見ると不透明感きわまりない、という状況ですが、車載向け、通信向けに動きが始まっています。ニッチな市場のニッチな銘柄に力が備わっており、それこそが中堅・中小企業の集積度が高い、日本の経済構造そのものでもあるような気がします。

(後略)

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鈴木一之