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2022年5月10日

大型連休も終了、FOMC後の米国市場は波乱の展開

鈴木一之

◎日経平均(6日大引):27,003.56(+185.03、+0.69%)
◎NYダウ(6日終値):32,899.37(▲98.60、▲0.29%)

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鈴木一之です。最大で10連休という日本の大型連休も終了しました。3年ぶりに行動規制のないGWは全国各地、かなりの人出で混み合ったようです。うれしい悲鳴というべきでしょう。

ただしコロナウイルスの感染拡大は終わったわけではありません。沖縄県ではとたんに新規の感染者数が過去最多を記録しました。経済再開とともに心配もつきまといます。

連休中の株価の動きです。

日経平均:NYダウ工業株(前日比)

4/25(月)▲515:+238(上海封鎖→北京も?)
4/26(火)+110:▲809(MSFT決算)
4/27(水)▲314:+61(岸田首相、原発再稼働)
4/28(木)+461:+615(日銀、毎日指値オペ)
4/29(金)休場:▲939(AMZN決算)

5/2(月)▲29:+84(自社株買い発表ラッシュ)
5/3(火)休場:+69(FOMC待ち)
5/4(水)休場:+932(FOMC、QT6月決定)
5/5(木)休場:▲1063(EU、ロシア産原油を禁輸)
5/6(金)+185:▲98(米4月雇用統計)

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金利と物価の上昇に直撃された4月は、世界中の株式市場が厳しい状況となりました。ナスダックは4月の月間下落率が▲13%に達し、「リーマン・ショック」のあった2008年10月の▲18%以来の下げとなっています。NYダウ工業株も▲5%、S&P500も▲9%の下落となりました。

この結果、世界の株式市場は時価総額が8兆ドル減少し、月間の減少額、減少率としてはコロナ危機に直撃された2020年3月以来の大きさに達しました。米国の5月FOMCを控えてリスク回避の資金逃避が鮮明となっています。

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ウクライナ情勢、中国のゼロコロナ政策、米FOMC、4月雇用統計、インドと豪州の利上げ、岸田首相のロンドンでの講演。

GW中に世界情勢には大きな変化がいくつか見られました。週明けから再開されるマーケットにどこまで影響するのか、その感触を探っている状況です。

中国では上海市のロックダウンに続いて、北京市にもコロナ感染が広がっていることが警戒されています。4月24日、北京市当局が市内でのPCR検査を強化すると発表したことからその懸念が一気に広がりました。上海総合指数は3000ポイントを割り込み、PMIに代表される経済統計も次第にダウントレンドを示すケースが増えています。

心配と言えばウクライナ情勢です。東部・マリウポリの巨大な製鉄所にはロシア軍の攻撃が絶え間なく続いており、国連が設けた人道回路からの住民の避難は機能していません。いまだに多くの民間人と兵士が防空壕に残されています。

5月9日の対独戦勝記念日を目の前にして、プーチン大統領はどのような行動をとるのか、世界中が息をひそめて見守っています。ウクライナの首都キーウも厳戒態勢に入りました。

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何よりも気がかりなのは米国の金融政策の行方です。FRBは5月3~4日、FOMC(公開市場委員会)を開き、0.5%の利上げを決定しました。上げ幅としては22年ぶりのことです。同時に6月からバランスシートの圧縮、量的引き締めを開始することも決めました。パウエル議長は記者会見で、6月と7月のFOMCでも0.5%の利上げを行うことを匂わせました。

コロナ禍による物流の混乱が物価上昇を招き、そこにウクライナ危機がさらに拍車をかけています。FRBは本格的なインフレ鎮静化に乗り出しましたが、一方でパウエル議長は、市場に根強く残っていた0.75%の利上げ幅の観測は「議論していない」と明確に否定しています。

FOMCの決定で重要なのは、利上げ幅よりも資産圧縮のペースです。コロナ危機以降に緊急的に採った債券買い入れ策によって、FRBの資産は9兆ドル(1170兆円)まで膨らんでいます。これはコロナ前の2倍の水準です。資産圧縮は非常時の措置を正常に戻すもので、6月からは保有する債券の額を減らしてゆきます。

そこで重要なのが減額するペース配分で、6月~8月は国債300億ドルとMBSを175億ドルを減じてゆきます。9月からは国債600億ドル、MBS350億ドル、合計950億ドルを上限に保有資産を圧縮する計画です。

前回のQT(2017~2019年)では月500億ドルだったので、今回はそれと比べて2倍近いハイペースになります。そのハイピッチな量的引き締めがマーケットにどこまで影響を与えるのか。それがマーケットが直面する新たな課題です。正常化への過程とはいえ、日銀が毎日指値オペを実施する動きとはまるで正反対のアクションです。

この決定を受けて、発表直後の木曜日のNY株式市場では、NYダウ工業株が+932ドルと大きく上昇しました。翌金曜日には反対に▲1000ドルを超える大幅安となりました。どちらの動きが本当の金融市場の反応なのか、週明け以降の展開で試されることになります。

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先週の東京株式市場は、TOPIXが反発しました。連休の谷間で立ち合い日数は2日しかなく、上昇率は+0.86%にとどまりましたが、米国市場が荒っぽい値動きをした割には堅調な展開となりました。

規模別の動きでは、大型株と中型株が堅調でした。小型株の動きは少し抑えられました。金利上昇を嫌気して小型成長株には依然として厳しい状況が続いており、東証マザーズ指数は5週連続の下落を余儀なくされました。

バリュー株とグロース株との対比でも、引き続きバリュー株が優位の展開となっています。REIT指数は反発に転じました。

日経平均のサイコロジカルラインは再び「6」のニュートラルに戻りました。騰落レシオは80%台に落ち着いており、上昇・下落のどちらにも方向性は生じていません。

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TOPIX-17業種のセクター別の騰落では、値上がりが16業種に広がり、値下がりは「情報通信・サービス」だけの1業種にとどまりました。

「情報通信・サービス」のわずかな下げは、米国のNASDAQの下落に連動して、野村総合研究所(4307)などIT系のソフトウェア企業の一角が軟調な展開となった結果と見られます。これまで値を保っていたオリエンタルランド(4661)の下落も重なりました。

その一方でNTT(9432)、KDDI(9433)の通信大手をはじめ、ゲーム関連株などはしっかりと値を保っています。

上昇したセクターの上位には「エネルギー資源」、「電力・ガス」、「運輸・物流」が登場しました。

「エネルギー資源」では引き続きINPEX(1605)、石油資源開発(1662)の天然ガス関連株、ENEOS(5020)、出光興産(5019)の石油元売り会社が堅調です。

値上がり第2位の「電力・ガス」は、前の週に続いて大阪ガス(9532)、東京ガス(9531)がしっかりしています。加えて東京電力HD(9501)、関西電力(9503)の電力株も大きく上昇しました。岸田首相が原発の再稼働に言及して以来、電力株の動きが俄然強まっています。

第3位の「運輸・物流」では、JAL(9201)、ANA(9202)のエアライン株が上昇しました。日本でもコロナ禍の水際対策を緩和して、6月より団体旅行の外国人観光客に門戸を開放する方向を模索しているとの材料が好感されました。

同じように陸運でもJR東海(9022)、京浜急行(9006)、東武鉄道(9001)、

(後略)

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鈴木一之