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2021年1月25日

大統領就任式は波乱なく終了しバイデン政権がスタート、NASDAQは最高値を更新

鈴木一之

◎日経平均(22日大引):28,631.45(▲125.41、▲0.44%)
◎NYダウ(22日終値):30,996.98(▲179.03、▲0.57%)

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鈴木一之です。1月第3週が終わり、米国では大統領就任式が挙行されました。

バイデン新政権がいよいよ始動しました。株式市場は週央にはNYダウ工業株が、週末にはNASDAQが史上最高値を更新し、まずは好調な出だしとなりました。

世界中が見守った大統領就任式。何もかもが異例づくめの展開でした。新型コロナウイルスの感染対策で出席者を極端なまでに絞り込み、同時に就任式に合わせて全米各地で暴動が発生するとの事前予想もあったことから、首都ワシントンでも厳戒態勢が敷かれました。

1月6日に暴徒による議事堂乱入が起こった、まさにその中心地である米国議事堂がバイデン新大統領の就任式の舞台です。列席した各界の重鎮たちは全員がマスクを着用し、隣席との距離も十分に保ち、スピーカーが入れ替わるごとに演台がていねいに消毒液で拭き清められました。

まさにバイデン政権が志向する政治スタイルがこの光景に凝縮されているように感じられました。前任のトランプ大統領が一切マスクを着用せず、コロナ禍の最中でも群衆を集めて集会を開いていた状況とはまるで異なります。

そのトランプ大統領自身は就任式には出席せず、アンドリュー空軍基地に場所を移して少人数での退任式をひそやかに終えました。在籍中の騒々しさとはあまりにかけ離れたひっそりとした退陣の光景となりました。

就任式の様子だけでなく、この1週間で米国はがらりと変わったように映ります。共和党から民主党へ、トランプ氏からバイデン氏へ。米国第一主義から同盟重視の外交政策へ。コロナ対策、環境政策も大きく変わることになります。

対中国政策をはじめ、前政権との間で変わらない部分も多く残っていますが、変わる要素が圧倒的に多いと現時点では見られます。そのあたりを先週のマーケットではさっそく評価し始めている様子です。

それでもトランプ政権の4年間は否定されていばかりではないことも事実です。国内外に分断と混乱をもたらした点は今後の修正される必要があるでしょう。それでも就任直後から株価は大きく上昇し、市場にとってはおおいにメリットがもたらされたのは間違いありません。

強者と弱者の格差がますます広がる一方の米国において、えり抜かれた強者だけが集まるS&P500種の株価平均は一貫して上昇を続けたのもうなづけます。民主党政権になって果たしてそれが継続されるのか、ここではバイデン大統領もさることながら、イエレン財務長官とパウエル議長の手腕が試されます。

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先週の株式市場での話題は、米国の政権交代と合わせてもうひとつ、半導体市場での需給ひっ迫です。すでにその前の週から半導体の調達不足がはなはだしく、日産、ホンダ、トヨタが相次いで工場の操業を一時停止せざるを得ない状況となっていました。それが先週も市場の内外で大きな関心を集めました。

目下のところ、焦点となっているのは自動車向けと通信向けの半導体です。救急能力に需要が追いつかず、ルネサスエレクトロニクス、東芝、NXPセミコンダクタなどが10%前後の製品価格の値上げに動き始めました。

スポット価格ならいざ知らず、大口の取引価格が上昇するのは2000年ごろのITバブル以来のことだそうです。まさに局地的にバブル現象が生じている可能性があります。

現在の半導体業界がバブル状況に直面しているかどうか、現時点でははっきりとはわかりません。このような状況に陥った背景として、以下のような経緯があります。

(1)自動車業界の事情
新型コロナウイルスの感染拡大の影響で、世界中の自動車メーカーは昨年の春先に工場の一時的な生産停止や大幅な減産を強いられました。中国・武漢の都市封鎖が最も影響が大きかったと見られます。

その武漢の都市封鎖が解け、サプライチェーンが順次整って工場が再開された段階で、今度は中国から経済の遅れを取り戻すべく、自動車の生産と販売が急回復しました。昨年6月は+11%も前年比で需要が増え、その後も海外へ出かけることのできない富裕層・中間層の購買ニーズを背景に自動車販売は好調に推移しました。

しかし各国の自動車メーカーは、他の国でのコロナウイルスの感染拡大があって、簡単には生産計画を増やすことはできませんでした。そのために先々の部品調達の見積もりが控えめにならざるを得なかったという事情があります。

(2)半導体業界の事情
その一方で、半導体業界にはコロナ危機による在宅ワークの需要の高まりで、タブレット、スマホやノートPC、ゲーム機用の半導体が増加していました。

世界の半導体市場のシェアは台湾のTSMCとUMCが合計で受託生産の6割強を占めています。アップルの新型「iPhone12」が発売され、それが購買行動の抑圧されていた世界中の消費者のニーズをうまくとらえたことからここでも受注が膨らんでおり、増産余地はかなり限られていた状態にあったと見られます。

TSMCなど半導体の供給メーカーは通常は夏場は生産は落とし気味になり、年末商戦に向けて秋から受注は活発になります。それが昨年は7月ころから異例とも言える繁忙状態を迎えました。

(3)米中貿易対立の影響
トランプ政権は昨年7月にファーウェイへの制裁を強化しました。ファーウェイは9月から制裁が強化される前に半導体を確保しておこうと大量の発注を出した模様です。8月の台湾からの輸出額は単月で過去最高を更新しました。輸出金額の4割近くを半導体が占め、そのうちファーウェイ向けだけで8月の輸出額は2000億円に達した模様です。

9月になると、今度はSMICが同じように制裁対象となるとのニュースが飛び交いました。今度はSMICに発注しているクアルコムがTSMCやUMCに対して、SMICから切り替えるための大量注文を発注した模様です。

(4)再び自動車業界、および半導体業界の事情
自動車メーカーは夏ごろはまだ先行きの生産回復に自信を持っていませんでしたが、中国の自動車市場が6月以降、8月から9月にかけても2ケタの売上成長から落ちないことを見て、自動車各社はついに10月から一斉に増産態勢に入りました。

この動きに対してドイツのインフィニオンなど、車載向けの半導体を製造する半導体メーカーは増産の準備が整わなかった模様です。半導体は増産の意向を決めてから、実際に製品供給が増えるまで3か月ほどのタイムラグがあります。それだけ半導体の製造工程は複雑であり、半導体製造に用いる部材の調達にも手間がかかるということです。

通信やスマホなどハイテク製品向けの半導体と、自動車向け半導体とでは微細加工の度合いが異なります。ハイテク製品向けの方がより高い加工度が求められ、それだけに利益率(マージン)も異なります。

最先端製品を供給するTSMCなどの台湾メーカーはすでにフル生産の状態で、車載向け半導体の製造には能力を振り向けることができません。その結果、車載向けのチップ生産はどうしてもあと回しにされてしまい、それが今回の半導体の決定的な品不足を招くことになったと見られます。

(5)需給緩和の時期的な見通し
半導体は生産を急いでもどうしても3か月はかかります。ましてや現在はフル生産の状態にあり、自動車メーカー向けの不足感の解消には早くて今年6月以降、通常であれば年末くらいまでかかる、というのがもっぱらの見方です。

怖いのはダブルブッキングや過剰発注で、そうなると今後もし需給が緩和すれば発注量はキャンセルされ、市況は大きく崩れることになります。かつて何度も同じようなことが繰り返されてきました。半導体メーカー各社はそれが怖くて簡単には増産に踏み切れないという事情もあります。

マーケットの常として需給のミスマッチは過去にも幾度か見られました。その経験で述べれば、完全に需給関係が一致するまで待つ必要はありません。ミスマッチの度合いが少しでも緩和する方向が見えた時点で、株価の上では現在の半導体関連株の高騰は止まることになります。

需給関係が合致する時期として「最速で6月」という見通しが出ているわけですから、その3か月前の「今年3月」ごろがひとつのメドになるのではないでしょうか。

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マーケット動向です。

1月第3週の株式市場は、TOPIXは小幅続伸しました。上昇幅はきわめて小さく、わずか+0.002%にとどまります。1000円に対して2円の上昇です。連日のようにプラスとマイナスの日が続いて、神経質な展開になったことが影響しています。

物色の中心はそれまでの大型株から、小型株を通り越して一気に新興市場にシフトしました。マザーズ指数は昨年11月以来の+6%という上昇幅を示しました。米国で「GAFAM」に代表されるテクノロジー銘柄が息を吹き返したことと連動しているようです。

グロース株とバリュー株では、わずかにグロース株が盛り返しました。むしろバリュー株の反落が目立ちました。REIT指数はいずれも大きく反発しました。

TOPIX-17業種のセクター別の騰落では、6業種が上昇し11業種が値下がりしています。プラス業種が劣勢に回り、マイナス業種の方が優勢になるのは久しぶりです。

値上がりトップは「電力・ガス」です。東京電力HD(9501)が大底圏から急反発し、週を通じて株価が堅調でした。異常寒波の襲来によって燃料のLNGが不足し、卸電力価格が急騰している影響が出ていると見られます。

ただしより本質的には、夏にも予定されている電源構成の政策的な変更に向けての思惑がうごめているように考えられます。

日本が抱えている問題のひとつが将来のエネルギー構成比をどのようにするかという点です。今夏にも政治決着が下される予定ですが、原発依存度をどこまで下げて、再エネをどこまで高めるのか。東京電力をはじめ電力各社がカギを握っています。

値上がり第2位が「素材・化学」です。三菱ケミカルホールディングス(4188)、住友化学(4005)などが出遅れ感から先週は大きく上昇しました。ナフサ市況も上昇しており、景気敏感株を物色する流れが継続しています。

さらに値上がり上位には、「電機・精密」や「自動車・輸送機」が続きました。電機セクターは半導体から電子部品にスイッチしながら幅広い物色が継続しています。

村田製作所(6981)や太陽誘電(6976)も強いのですが、それが次第にパナソニック(6752)、シャープ(6753)、富士通(6702)、日立(6501)など出遅れ株にシフトする動きが顕著となっています。

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値上がり業種のチャート(日足、直近3か月)

「電力・ガス」
https://quote.jpx.co.jp/jpx/template/quote.cgi?F=tmp/hist_index&basequote=281&mode=D

「素材・化学」
https://quote.jpx.co.jp/jpx/template/quote.cgi?F=tmp/hist_index&basequote=274&mode=D

「電機・精密」
https://quote.jpx.co.jp/jpx/template/quote.cgi?F=tmp/hist_index&basequote=279&mode=D

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反対に値下がりした業種は、「銀行」や「金融(銀行除く)」、「運輸・物流」が登場しました。その前の週まで比較的しっかりしてセクターが軟調です。

同じように「鉄鋼・非鉄」も下落率の下の方に登場しています。鉄鋼や銀行セクターは昨年暮れからのバリュー株の回復の流れに乗って買い進まれましたが、その流れが一服したようです。

ただしいずれの下落セクターも、それまでの上昇が急激だった反動安という部分もあります。他の値下がりセクターも含めてさほど大きな下落には至っておりません。

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値下がり業種のチャート(日足、直近3か月)

「銀行」
https://quote.jpx.co.jp/jpx/template/quote.cgi?F=tmp/hist_index&basequote=285&mode=D

「金融(除く銀行)」
https://quote.jpx.co.jp/jpx/template/quote.cgi?F=tmp/hist_index&basequote=286&mode=D

「鉄鋼・非鉄」
https://quote.jpx.co.jp/jpx/template/quote.cgi?F=tmp/hist_index&basequote=277&mode=D

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米国では決算発表が本格的に始まりました。米国の銀行セクターは驚くほどの好調な決算内容でした。

コロナ危機のむずかしいところは、感染拡大によって打撃を受ける業界とそうでなく収益を伸ばす業界とにはっきりと分かれている部分です。それが政府による経済対策をますますむずかしくさせているのは事実です。経済対策の恩恵を受ける業界の株価、および業績は限られていることが決算数字にはっきりと現れています。

そして今週からはいよいよ日本でも、3月決算企業の第3四半期決算の発表が始まります。日本電産(6594)を

(後略)

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鈴木一之