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2021年4月29日

大阪、京都、兵庫、そして東京に緊急事態宣言が発令、株価は急落局面へ

鈴木一之

◎日経平均(23日大引):29,020.63(▲167.54、▲0.57%)
◎NYダウ(23日終値):34,043.49(+227.59、+0.67%)

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鈴木一之です。株式市場は全面高と全面安を繰り返す、無機質なマーケットとなっています。上昇への確たる手がかりがなかなかつかめないせいでしょう。日銀のETF買いに対する期待が再び強まっているようにも見受けられます。

底流には依然としてコロナウイルスの感染拡大に振り回されている状況があります。大阪では連日のように感染者数が1000人を超えており、厳しいことに重症病床のひっ迫が現実のものとなってきました。

「まん延防止等重点措置」では効果が上がらず、ついに大阪では3度目の緊急事態宣言の発出を国に要請する事態となりました。近接する京都、兵庫、そして東京でも発出されます。当面は5月11日まで、GWの人の流れを抑えるというのが目の前の最優先事項となっています。

飲食店では時短要請に加えて、アルコール類を出すお店には営業自粛まで要請されることになります。イベントの開催も自粛、プロ野球やサッカーのJリーグは無観客試合になる見込みです。小・中・高校に休校の要請が出されないだけでもまだましと考えなければなりません。

日本でもワクチン接種が進んで、集団免疫を手に入れればよいのですが、現在のペースではまだかなりの時間がかかります。1週間前の日米首脳会談でアメリカを訪れた菅首相は、ファイザーに直接かけあって追加の5000万回分のワクチン供給の約束を取り付けました。

週明けまでかろうじて持ちこたえていた株式市場は、この朗報に安堵してしまったのか、火曜日から大幅に下落する日が目立つようになりました。なぜ株価が下がっているのか、面と向かって問われるとうまく答えられない日々が続きます。

本当になぜ下がっているのか、わかるようでわからない不思議な展開の週となりました。ワクチン接種の度合いによって株価の動きに少しずつ差が目立ってくるようになりました。欧米やアジア各国と比べて、日本の株式市場はひときわ弱さが目立ちます。

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海外ではインドが悲惨な状況となりつつあります。新規の感染者数は1日でついに30万人を超えました。大きな病院でも酸素吸入用の酸素ボンベが不足しており、酸素を巡って略奪事件まで起こっているようです。

その一方でバカンスシーズンを前にして、欧州や英国ではこれまで課していた行動制限が解除または緩和されつつあります。2度のワクチン接種の済んだ人は「ワクチンパスポート」を交付され、国境をまたぐ飛行機での移動も可能になりつつあります。

経済再開にはまだ遠い状態が続いており、素材価格の上昇が一部の品目ではますますひどくなっています。希少価値となりつつある半導体はもとより、石油化学製品や木材、鶏卵まで大きく値上がりしています。物資を運ぶコンテナ不足は簡単には解消しそうになく、夏以降の年末商戦の物流が早くも心配されています。

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先週も重要な日程、イベントが相次ぎました。日米首脳会談に続いて、バイデン大統領が主導して環境サミットがオンラインで開催されました。参加した国の首脳は相次いで、2030年を目標とした温暖化ガスの削減計画を明らかにしています。

米国は開催国であることから、2005年との比較で▲52%減らすというきわめて野心的な目標を明らかにしました。トランプ政権では環境問題に完全に背を向けていたために、世界的に見ても取り組みに遅れが目立っています。米国がここから巻き返しに出るとなると、相当に強烈なインパクトになると見られます。

英国はサミットに先立って、2035年に1990年比▲78%の削減を打ち出しています。EUも1990年比で▲55%減らす計画です。

日本は今や環境後進国とみなされるようになってしまいましたが、これまでの「2013年比で▲26%削減」との計画を大幅に改定して、▲46%の削減目標を発表しました。菅首相は▲50%削減まで踏み込んだ計画を腹案として持っていたようですが、経済界に配慮してわずかながら後退させたと見られます。

注目の中国は習近平国家主席がオンライン討議に参加して、火力発電と石炭の消費量を2030年までに徐々に減らす計画を発表しました。

数字を並べてみると各国とも野心的なまでに高い目標を掲げており、いかにも立派なものに見えますが、しかし現実には達成への道すじは容易なものではありません。

現行の経済に対して相当のブレーキがかかります。バイデン政権が模索しているように、どこまで前向きな研究開発投資として経済成長を上向きにすることができるのか。すべてはここから始まります。

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先週の株式市場の動きについて。

4月第4週の東京株式市場は、TOPIXが反落しました。前の週は日米首脳会談を控えて様子見ムードが強く、わずかな値動きに終始しました。先週もスタートはそうでしたが、火曜日から大きく値を切り下げました。

TOPIXの下落率は▲2.34%%に拡大しています。2月最終週の▲3.34%以来の下げ率となりました。日本でもコロナウイルスの感染拡大が強まっており、ワクチン接種も進んでおらず、緊急事態宣言の発出が大阪、東京で要請されていることが投資家心理を冷やしている模様です。

東証マザーズ指数も4週ぶりに反落しています。ウイルスの感染拡大が強まるような状況では、昨年であればマザーズ市場のように成長期待の高いマーケットに資金が流れ込んみ、小型グロース株が物色されたものです。しかし先週はそうはなりませんでした。

グロース株とバリュー株の物色の度合いでは、両者が一様に売られています。安全志向の強まりからか買われていた東証REIT指数も、7週ぶりに下落に転じました。物流のREITだけが上昇しています。

TOPIX-17業種のセクター別の騰落は、値上がりは「医薬品」の1業種のみ。値下がりが16業種に広がりました。セクター別の上下では前の週とちょうど正反対の展開となっています。上昇したセクターがそっくり下落して、下落していたセクターが丸ごと上位に顔を出しています。

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値上がりセクターでトップの「医薬品」は5週ぶりに反発しました。上昇したというよりも、下落しなかったという方があてはまります。

続く「電力・ガス」、「食品」も同様です。食品セクターは昨年4~5月の第1回目の緊急事態宣言の時は、巣ごもり消費の拡大でパスタやお菓子作りの小麦粉、調味料、缶詰などが飛ぶように売れて、それにつれて株価も大きく上昇しました。しかし今回はそれらしい動きはほとんど見られません。

「素材・化学」などは比較的下げの小さかった部類に入ります。際立って下落している銘柄は少ないように見えますが、だからと言って楽観は許されません。徐々に下値を切り下げ、トレンドが下向きになりつつある銘柄が増えています。

日本曹達(4041)、東ソー(4042)、クラレ(3405)などがそうです。化学株が静かに下がっている時は警戒しなくてはなりません。

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値上がり業種のチャート(日足、直近3か月)

「医薬品」
https://quote.jpx.co.jp/jpx/template/quote.cgi?F=tmp/hist_index&basequote=275&mode=D

「電力・ガス」
https://quote.jpx.co.jp/jpx/template/quote.cgi?F=tmp/hist_index&basequote=281&mode=D

「食品」
https://quote.jpx.co.jp/jpx/template/quote.cgi?F=tmp/hist_index&basequote=271&mode=D

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値下がりセクターのトップは「エネルギー資源」、続いて「不動産」、「鉄鋼・非鉄」となります。

先週までの上昇率の上位セクターがそっくりそのまま下位に回りました。「不動産」セクターが▲4%を超える下げとなったのは今年初めてです。

3月に2度目の緊急事態宣言が解除されて、オフィス街に人の流れが戻ってきた矢先に再び、今回の緊急事態宣言の発出です。リモートワークが解消されつつあった矢先なので、オフィス街を含めた不動産市況の動向が気になります。当面は弱い動きが続く可能性が高いと見られます。

オフィス街とは反対に、住宅街の動きが活発化しているように感じられます。家で過ごす時間が長くなっているので、心地よい住居を求める人たちが、若い世代を中心に急速に増えている模様です。

明らかに「新しい日常生活」を構築する動きが始まっています。元に戻るものと戻らないものがはっきりと分かれるとしたら、家での過ごし方、外食に出かける頻度はなかなか戻ってこないように見られます。

「自動車・輸送機」も軟調でしたが、自動車部品の一角は割安感からかしっかりした値動きが見られました。上海モーターショーではトヨタ、ホンダを含めて世界中の自動車メーカーがこぞって新型EVの発表を行っています。

今まで以上に環境規制が強化されるのは間違いないことであり、自動車まわりの研究開発、設備投資は拍車がかかっています。株価はさえない動きとなりましたが、新しいニュースが出てくるとすれば自動車の周辺から集中的に発せられることとなりそうです。

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値下がり業種のチャート(日足、直近3か月)

「エネルギー資源」
https://quote.jpx.co.jp/jpx/template/quote.cgi?F=tmp/hist_index&basequote=272&mode=D

「不動産」
https://quote.jpx.co.jp/jpx/template/quote.cgi?F=tmp/hist_index&basequote=287&mode=D

「鉄鋼・非鉄」
https://quote.jpx.co.jp/jpx/template/quote.cgi?F=tmp/hist_index&basequote=277&mode=D

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3月決算企業の決算発表が始まりました。注目度のきわめて高い

(後略)

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鈴木一之