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2021年10月18日

日経平均は4週ぶりに上昇、週末にかけて世界同時株高が再現される

鈴木一之

◎日経平均(15日大引):29,068.63(+517.70、+1.81%)
◎NYダウ(15日終値):35,294.76(+382.20、+1.09%)

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鈴木一之です。10月も半ばになってさすがに寒くなってまいりました。

先々週になって反発に転じた株式市場は、先週さらに上昇力と強めるようになりました。日経平均は10月に入って初めて29,000円の大台を回復しました。何が変化したのでしょうか。

9月中旬以降の株価の下落は、大きく分けると次の3つの悪材料に支配されていました。
(1)発足直後の岸田政権の経済政策
(2)中国・恒大グループのデフォルトリスク
(3)米国の金融政策(FOMC、テーパリング)

この3つです。その上でさらにいくつかのネガティブ要因が重なっていました。

(4)米国政府の債務上限問題、米国債のデフォルト懸念
(5)中国および世界経済の鈍化懸念
(6)資源価格の高騰、エネルギー危機のリスク

悪材料が山ほど押し寄せているように見えますが、そのほとんどすべてが背景として新型コロナウイルスの感染拡大を原因としています。

コロナ危機に関しては、新規の陽性者数は減少の一途をたどっています。日本では10月15日(金)に全国の新規の陽性者数が522人まで減少しました。統計的に数字が少なく表れやすい月曜日を除くと、7月から始まった感染第5波では最も少ない値です。

緊急事態宣言が全国的に解除されて2週間が経過して、オフィス街や繁華街の人の流れは確実に戻ってきました。まだ飲食店を訪れる人は少ないようですが、これも徐々に時間をかけて増えてくるのでしょう。

問題は世界景気の行方です。9月末から10月初旬にかけて発表されたマクロ経済データのかなりの部分が世界景気の鈍化を示していました。先週はこれにIMFの世界経済見通しの引き下げが加わりました。

IMFのトップであるゲオルギエバ専務理事は現在、世界銀行の過去の報告書に中国のランク付けを引き上げるよう関与したとの疑惑がもたれていますが、それとこれとは別です。IMFの経済見通しの変更はこれまでに何度も株価のトレンド転換を示唆しきました。それが目の前で起こったとなると、やはり穏やかではいられません。

軟調な動きを覚悟しましたが、それが週末にかけて株価は大きく上昇しています。日本の株式市場だけでなく、欧米主要国が一斉に上昇に転じており、特にイギリスはFTSE100指数が7,234まで上昇し、今年8月につけた高値を抜いてパンデミック以降ではもっとも高いレベルに達しました。

米国の株式市場は言うまでもなく重要ですが、世界経済を見る上ではイギリスやドイツの株価がそれと同じくらいに重要です。ドイツのDAX指数も8月に市場最高値をつけたあと一服していましたが、それが先週末は大きく3日続伸しています。少し流れが変わってきたような感触が得られた週末でした。

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何が変わったのか、と問われれば、変わっていないものがないくらいに今の世の中は変化にあふれています。そのような状況の中で、先週は中国政府が石炭の産地である内モンゴル自治区政府に1億トンの石炭増産の指示しました。日本経済新聞が報じています。

中国は年間で40億トンの石炭を消費しており、電力の7割が石炭火力発電です。暖房用に中国では冬に月2億トンの石炭が必要とされています。

環境に配慮して中国では、石炭火力発電の操業を夏ごろから抑制してきました。その結果、北京や上海では計画停電を実施しなければならないほどの電力不足に陥っています。

上海を含む広州周辺は世界中のメーカーが工場を構えており、停電によって工場の稼働率を落とさざるを得ない状況にあります。9月末に発表された中国の製造業PMIは1年7か月ぶりに分岐点の「50」を下回りました。それが世界経済の鈍化につながっていると見られます。

新型コロナウイルスのもたらした「パンデミック」の世界では、それまでの常識がまるごとひっくり返りました。それが今また、経済再開の局面を迎えて再び大きくひっくり返りつつあります。しかも以前とは違った形で。

いつの間にか世界は、不況と物価高が共存する「スタグフレーション」に直面させられていました。特に資源価格の上昇が顕著となっています。原油価格は高止まりしており、WTI先物価格は7年ぶりに80ドルの大台を突破しました。週末も82ドル台まで続伸しています。

コロナで供給網が寸断されている要素も大きいのですが、それとともに温暖化対策、ESG投資の流れが強まっており、化石燃料の増産投資に世界の投資マネーが向かいにくくなっていることも一因です。

イギリスではガソリンの供給が追いつかず、軍隊が出動してガソリンスタンドのからっぽのタンクにガソリンを補充しています。日本でもレギュラーガソリンが全国平均で7年ぶりに1リットル=162円に乗せました。石炭価格の高騰は世界経済の先行きに暗雲をもたらしています。

中国が温暖化ガスの排出量の多い石炭を回避した結果、石炭火力発電の稼働が落ちて、それが電力不足につながり、工場の稼働率が低下して世界経済そのものが落ち込み、代替燃料となるクリーンなLNGの価格高騰も深刻となっています。この冬は電力危機が再来すると早くも警戒されています。

中国の石炭増産はまだ1億トンですが、これが次第に広がれば「資源高騰→世界経済の鈍化」の歯車をいったんはストップさせることにつながると見られ、それが先週末にかけての世界同時株高となって表れたのではないか、と考えられます。これが変化のひとつです。

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変化はもうひとつ、コンテナ船の不足です。

エネルギー価格の高騰とは別ルートで、物価の上昇を招いているもうひとつの要因が物流の停滞です。世界のコンテナ船の不足は一向に解消されず、クリスマス商戦に深刻な影響が出ると警戒されています。

この方面では米国が動き始めました。目詰まりを起こしている物流網の解消に向けて、バイデン大統領はウォルマートなどの小売企業、物流を担うフェデックスなど国際輸送会社、そして西海岸の港湾労働組合の幹部を集めて対策を協議しました。

その協議において、ロサンゼルス港の24時間稼働と週末稼働が決定されました。港に積み出された貨物はフェデックスの貨物列車で昼夜問わず運び出され、ウォルマートも夜間利用の割合を引き上げます。フル稼働で年末商戦の物流ひっ迫に対処する方針です。ロングビーチ港ではすでに同様の措置がとられています。

米国が本気を出すとものすごい集中力を発揮することは、ワクチン接種大作戦の初動で実証済みです。物流網へのプッシュに加えて、世界的な半導体不足の解消にも動きが出ているようです。

先週は世界最大のファウンドリー、台湾セミコンダクター(TSMC)が日本に半導体工場を建設することが正式に決定しました。ソニーグループと合弁で2024年の稼働を目指します。鴻海精密工業とは違って政治とは距離を置き、単独行動で知られるTSMCとソニーが手を組むというところがポイントのように思います。

米国と中国は覇権を賭けて壮絶な戦いに臨んでいるはずですが、2022年秋には共産党大会と中間選挙という重要な年を控えています。どちらも経済の停滞は避けたいところで、習近平国家主席とバイデン大統領との電話協議が行われて以降、不思議なほど協調した行動が動きだしているように感じられます。

これらの変化は本当に世界経済に効果をもたらしたのかどうか、それは定かではありません。ただ目に見えるもの見えないものを含めて、足元で起こっている数々の変化によって、今週は株式市場に向かって再び資金が戻ってくる兆しが見られました。小型グロース株が急速に息を吹き返しています。

日本では臨時国会における代表質問が終わり、衆院解散・総選挙に向かって走り出しています。岸田首相の掲げる「成長と分配の好循環」に向けて、まさに未来を選択する選挙が始まります。

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先週の東京株式市場は、TOPIXは4週ぶりに反発しました。今年初めての3週連続マイナスを記録したあとだけに、上昇率は+3.16%と今年4番目の大きさとなりました。

規模別では大型株が優勢です。小型株もけっこうしっかりしています。東証マザーズ指数は5週ぶりに反発しました。REIT指数は2週連続で上昇しました。

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TOPIX-17業種のセクター別の騰落では、値上がりセクターが15業種に広がり、値下がりセクターは「電力・ガス」と「銀行」の2業種だけでした。

2週連続で値上がりトップとなった「エネルギー資源」は+3.29%と引き続き堅調です。

値上がりトップは「電機・精密」です。エレクトロニクスは久しぶりのトップ登場です。TSMCと合弁で半導体工場を新設するソニーグループ(6758)が大きく上昇したのを筆頭に、ファナック(6954)、

(後略)

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鈴木一之