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2021年3月22日

春は荒れ模様、日経平均▲424円に対してTOPIXは上昇、2000ポイント乗せ

鈴木一之

◎日経平均(19日大引):29,792.05(▲424.70、▲1.41%)
◎NYダウ(19日終値):32,627.97(▲234.33、▲0.71%)

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鈴木一之です。春分の日、季節の変わりめ、関東地方は桜が咲きました。ここから昼の時間がどんどん長くなってゆきます。

先週の相場はまさに波乱の連続でした。「天気雨」とでも表現すればよいのでしょうか。先週末の株式市場では、日経平均が▲424円の下落となったのに対して、TOPIXは+4ポイント。わずかですが上昇して引けました。これで8日続伸です。2000ポイントの大台に乗せました。

長らく続いた日経平均の優位、TOPIXの劣位が変化しつつあります。それが天気雨、雲は途切れ日は明るく差しているのに雨が降っている状態。日経平均は大幅安なのにTOPIXはプラスを維持し、大半の銘柄は上昇しています。それなのに日経平均だけがマイナスです。雨なのに晴れ、晴れなのに雨。週末はちぐはぐな状況となりました。

これまで見られた人工的、機械的な日経平均だけが上昇し、大多数の銘柄が追いついていけない状況が逆回転しつつあるように感じます。

理由は週末の日銀・金融政策決定会合において、ETFの買い入れ対象がTOPIX型に限定されたことにあります。金曜日の日経平均の下落はファーストリテイリング(9983)だけが大きく下落したために引き起こりました。

それ以外でもキッコーマン(2801)やコナミHD(9766)も影響を受けやすい銘柄として下落しましたが、やはりファーストリテイリングが▲6%も値下がりしたことが最大の理由です。

これで日本の株式市場における「日経平均だけが上昇する」という、説明のつきにくい株式市場の状況が少しは改善してゆくことになるのでしょうか。

日銀の決定ばかりではありません。それ以外でも先週は実に多くの刺激材料が噴出してきました。どのニュースがどのように、どれほど株式市場に作用しているのか判然としません。事実関係を追いかけてゆくだけで精一杯です。

数々のビッグニュースのうち、株価に対して少なからぬ影響を及ぼした材料を挙げてみます。

(1)首都圏の緊急事態宣言の解除
(2)FOMC(米国の金融政策)
(3)日銀・金融政策決定会合(前述)
(4)米中外相会談

重苦しい話題ばかりです。

ほかにも何点かあるかもしれませんが、今後数か月から数年にわたって内外の政治・経済・社会に影響を及ぼす事柄が、この1週間でほとんど方向性が決まったような印象を受けます。簡単ですがそれらを順番に見てゆきます。

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(1)首都圏の緊急事態宣言の解除

緊急事態宣言の解除は大阪・兵庫・京都などと比べて、半月以上遅れました。それでも東京をはじめ1都3県の感染者数の増加が目に見えて減少したわけではありません。むしろ足元ではわずかながら増加しています。

解除されても飲食店の時短陽性は残されます。最初から「解除ありき」で固まっていたと指摘されても仕方ありません。

国と東京都の意向がまず違っており、東京都と神奈川、埼玉、千葉の意向も異なります。2度目の緊急事態宣言も最終的な権限がどこにあるのかはっきりしないまま、財政上のひっ迫から終了することになります。

コロナウイルスの監視体制が強化されたかと言えばそうでもなく、病床数はさほど増えていません。PCR検査の能力は1日17万回まで増加しましたが、検査そのものは足りていません。変異ウイルスの蔓延が大阪をはじめ全国的に強まっています。

聖火リレーのスタートに合わせてギリギリまで行動規制を強いて、少しでも感染者数を減らした上でギリギリのタイミングで解除する、そういうシナリオがメディアでは盛んに報じられました。結果的にはそのシナリオ通りになったわけです。

解除が決まったとたんに街の人出は大幅に増えたように思います。2か月半に及ぶ長い外出自粛に飽きあきしたという気持ちもよくわかります。春夏にかけての「第4波」の襲来が心配されます。

それでも航空会社、テーマパーク、外食、百貨店、旅行、イベント会社などの株価は堅調な動きを取り戻しつつあります。今後は各自治体の「まん延防止等重点措置」に基づく措置が中心となり、それでも止まらなければ3回目の緊急事態宣となります。

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(2)FOMC(米国の金融政策)

3月18日(木)、米FRBは連邦公開市場委員会を開き、金融緩和の継続を決めました。要点としては、

・2023年末までゼロ金利を維持、FF金利の誘導目標を0~0.25%に据え置き
・量的緩和も継続、国債を月800億ドル、住宅ローン担保証券を400億ドル買い入れ
・GDPは2021年10-12月期に前年比6.5%伸びる
・物価上昇率は2021年10-12月期に前年比2.4%まで上昇する

パウエル議長は記者会見で「景気の回復は当初想定よりは早いものの、それはワクチンの開発成功と財政出動によってなされたもので、雇用者の数はコロナ危機以前と比べてまだ950万人も少ない」と指摘しました。大規模な金融緩和はまだ必要とされると強調しています。

それと同時に「物価の上昇も年末には目標としている2%を突破するが、それは一時的なもので目標の達成ではない」とも述べました。市場では量的緩和の早期解除論も浮かんでいましたが、パウエル議長は明確に打ち消しました。

議長をはじめとするボードのメンバー18人の政策見通しはドットチャートに現れます。それによれば、2021年から2023年までゼロ金利を続けるとの意見が中央値となっています。

ゼロ金利の解除は現時点では2024年以降になるとの見方が大勢となりつつあります。しかし先週のマーケットでは、米国の長期金利の上昇には歯止めはかかっておりません。そこには日銀の政策決定が影響している可能性もあります。

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(3)日銀・金融政策決定会合

日銀は3月18-19日の金融政策決定会合において、金融政策の修正を決めました。大きな変更点は3つあり、それぞれ次のようなものです。

・長期金利の変動幅の拡大
・ETFの買い入れ手法の変更
・銀行への支援策

まず「長期金利の変動幅の拡大」。これまではゼロ%を起点にプラスマイナス0.2%を容認していましたが、それを0.25%としました。金利の変動幅が広がることで金融機関は債券売買によって収益を上げやすくなります。

次に「ETFの買い入れ手法の変更」。冒頭にも記しましたが、年間の上限12兆円は変更せず、年6兆円の目安をなくしました。合わせて購入対象とするETFをTOPIX型に一本化して、日経平均型の購入をやめます。これによって個別銘柄への偏りをなくしてゆく意向です。

そして「銀行への支援策」です。金融機関が日銀に預ける当座預金残高に応じて上乗せ金利を支払い、マイナス金利による減収分を補完します。

以上の3点です。

ETFの買い入れ変更の影響はすでに述べたように、今後表面化してくると見られます。何よりも今回の変更で銀行株の評価が大きく変わることになりそうです。2週間前の3月5日(金)、黒田総裁は国会答弁において、長期金利の誘導幅を変更する必要はないと証言しました。それが変更されました。

長期金利が上昇することによって、銀行は短期で借りて長期で貸し出す貸出業務によって利ザヤを稼ぎやすくなります。加えて日銀当座預金にも残高に応じてプラス金利を得られることになります。収益の改善期待から先週末にかけて銀行株が大幅に上昇しました。

2016年のマイナス金利の導入以来、銀行株はマーケットにおいて長らく放置された状態に置かれ続けています。上昇相場から完全に取り残されてきましたが、それが一斉に反転の機運に乗り始めています。

低迷があまりに長かったために反発力もそれだけ充満しており、今後もしばらく銀行株の値戻しは続きそうです。とりわけ地銀株に上昇余地が大きくなっています。

反対に米国の長期金利には上昇圧力がさらに増す可能性があります。日銀の政策手直しによって日本の長期金利の変動幅が拡大した分だけ、相対的に米国債が割を食うことになります。そのような金利上昇は日本の銀行業にはメリットになりますが、米国銀行の収益改善につながるのか疑問の余地が残ります。

マーケットでは「世界のマネーフローは実は日銀が決定している」とかねて指摘されています。米国も日本も金利は上昇しやすい環境に入っています。それをどこまで株式市場が許容できるのか。ここから問われることになりそうです。

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先週の株式市場の動きについて。

3月第3週の東京株式市場は、TOPIXが3週連続で上昇しました。上昇幅は先々週の+2.89%からさらに拡大して、+3.13%まで広がりました。2月第1週の+4.54%に次いで今年2番目の上昇率です。

物色の動向は、引き続き大型株が優勢です。東証2部株指数は+2.09%、東証マザーズ指数は+1.90%の上昇にとどまりました。

ただし、東証1部の中では小型株の値上がりが一段と顕著となっています。東証規模別の株価指数では、大型株が+2.75%ですが、それに対して中型株は+3.37%、小型株は+5.02%となっています。小型株はバリュー株もグロース株もそろって上昇しており、最も出遅れていた小型株に物色の重点が移っています。

TOPIX-17業種のセクター別の騰落では、16業種が値上がりし、「エネルギー資源」の1業種のみが値下がりしました。

値上がりしたセクターのトップは「銀行」です。日銀の金融政策の変更によって銀行株がメガバンクから地方銀行まで全面高となりました。前の週の+4.79%に続いて、この週も+8.89%と大幅な上昇となっています。

「銀行」と並んで「金融(銀行除く)」も値上がり第3位に登場しています。ここでは証券株の値上がりが顕著となっています。日経平均が2月半ばに30年ぶりの3万円乗せに到達しましたが、それに続いてTOPIXも2000ポイントの大台を30年ぶりに突破しています。株式市場がより活況を呈することで証券株にも広く買い物が広がりました。

値上がり第2位は「自動車・輸送機」です。自動運転技術に強いデンソー(6902)が上場来高値を更新しており、遅れてトヨタ自動車(7203)も8000円台から大きく上昇しました。

ホンダ(7267)も遅ればせながら年初来高値を更新しました。米国のGM、ドイツのVWなど世界的に自動車株が選好されています。為替動向に頼らなずに自動車株が物色の中心になる時代が訪れようとしています。

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値上がり業種のチャート(日足、直近3か月)

「銀行」
https://quote.jpx.co.jp/jpx/template/quote.cgi?F=tmp/hist_index&basequote=285&mode=D

「自動車・輸送機」
https://quote.jpx.co.jp/jpx/template/quote.cgi?F=tmp/hist_index&basequote=276&mode=D

「金融(除く銀行)」
https://quote.jpx.co.jp/jpx/template/quote.cgi?F=tmp/hist_index&basequote=286&mode=D

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このほかにも値上がりセクターには、「不動産」、「建設・資材」、「鉄鋼・非鉄」などが登場しています。

内需系も強い、素材系も強いという、まれに見るような好循環に入りつつあるように感じられます。FRBが景気の過熱を容認してでも金融緩和を続ける意向を示したことが背景にあるのかとも考えられます。

これらの業種には、前の週にさほど活躍しなかった業種ほど、その翌週にはかなり目立った上昇に転じるという特徴があります。このことからもマーケットでは循環物色の流れが粛々と強まっていると感じられるます。

そのあたりから国内外の機関投資家が、出遅れている銘柄、出遅れている業種を冷静に順番に購入している様子がうかがえます。日経平均の3万円乗せの時点ではさほど見られなかったこのような動きが、TOPIXの2000ポイント乗せでは目立つようになりました。

反対に動きの鈍かったセクターとしては、前の週に上昇した反動から

(後略)

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鈴木一之