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2024年4月16日

株式市場は調整3週目、物色対象は次第に広がりバリュー株が堅調

鈴木一之

鈴木一之です。新年度相場は2週目を終えました。株式市場は3週目の調整局面が終了したことになります。

先週のマーケットで最も注目されたニュースは米国の3月CPIです。インフレ懸念が再び強まっており、米10年国債金利は今年もっとも高い水準まで上昇しています。これだけで調整やむなし、といったところです。

今回発表された3月CPIは前年比+3.5%となり、ここでも市場予想を上回りました。10年国債金利は4.6%目前まで上昇し、為替市場では1ドル=153円台までドル高・円安が進みました。

北半球は初夏から夏場のレジャーシーズンが到来します。ガソリン需要も高まるため、インフレ動向に市場はますます敏感になりそうです。

先週は岸田首相が米国を訪問し、ワシントンで日米首脳会談が行われました。会談後のバイデン大統領と岸田首相の共同記者会見でメディアからの冒頭の質問は、共同声明に関してではなくCPIの上昇に対するものでした。

週末にはイランがイスラエルに対して報復攻撃を開始したニュースが飛び込んできました。警戒されていたい報復措置ですが、ここから本格的な中東戦争に発展するのか、その場合の原油価格はどうなるのか。全世界がイスラエルと米国の出方、さらには原油市況を息をひそめて見つめています。

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株式市場の警戒心は一段と強まっており、国内機関投資家からの期初の売り姿勢も続いています。日経平均など株価インデックス上では、上値を追うスタンスは明確には見られません。それでもマーケットの中には随所に変化が見られます。

明らかに変わってきたのは物色対象の広がりです。3月初に日経平均が初めて4万円の大台に乗せた時は、牽引役は半導体関連株に絞られていました。それのみと言ってもよいほどです。それが現在はテクノロジーセクターばかりでなく、内需株、景気敏感株、材料株にまで広範囲に及んでいます。

半導体関連株は引き続き人気の中心です。レーザーテック(6920)や東京エレクトロン(8035)、ディスコ(6146)を中心に、株価はいずれも高い位置をキープしています。

しかし現在はそれ以外にも、決算発表や中計公表をきっかけに個別銘柄への物色が一段と勢いを増しています。事業年度が替わったことで企業の中にも新しい空気が生まれているのでしょう。決算発表がいつになく注目されています。

このような動きがもっと広がって出てくれば、高値更新の個別銘柄の動きが合わさって、いずれは日経平均もどこかで吹っ切れる局面が見られるはずです。マクロはミクロの積み上げで成り立っています。

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日米首脳会談ばかりでなく、先週は非常にニュースフローの多い週でした。

米国では週明けの4月8日、台湾のTSMCに対して1兆円の補助金支給が決定されました。アリゾナ州に建設している新工場の1割を負担することになります。

新工場は2020年代末には稼働することになっており、回線幅2ナノメートルの最先端半導体が量産されます。中国に移りつつあるテクノロジーの最先端領域を食い止める米国の強い意向が見えます。

日本でも半導体に関しては巨額投資が相次いで明らかになりました。信越化学工業が日本国内に56年ぶりに新工場を建設して、半導体向けフォトレジストやマスクブランクスの供給を強化します。同時にラピタスには経済産業省が5600億円の支援金を支給します。

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これらの新しい材料を受けて、そのたびに半導体関連株は刺激されますが、さすがに上値は少し重くなってきたようです。代わって化学、非鉄、セラミックなど、半導体に関連す素材メーカーや、あるいは半導体を除いた電子部品株にも力強さが備わっています。

パソコンやスマホの販売が徐々に回復しており、「過去最悪」と目されていた半導体の在庫循環は終幕に近づいています。米国のIDCが調べた今年1-3月期の世界のパソコン出荷台数は、前年比+1.5%の5980万台まで持ち直しました。およそ2年ぶりのブラス転換です。

中国のパソコン販売はまだ減少しているものの、世界全体ではコロナ禍前の水準(2019年1-3月の6050万台)にかなり近づいています。今年はこれにAI搭載型の新型機種が市場に投入されることになり、今年のパソコン販売は回復基調が続くとの見方も増えています。

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水曜日にはマイクロソフトのニュースです。

向こう2年間でマイクロソフトは日本にAI向けのデータセンター建設に4400億円を投資します。実現すればマイクロソフトにとって過去最大の日本への投資となります。

マイクロソフトは世界的な生成AIブームの火付け役となった「オープンAI」の親会社です。そのマイクロソフトが日本にAI向けサーバーの拠点を、大規模に建設すると伝わって株式市場は色めき立ちました。

データセンターはGPU(画像処理半導体)を中心に半導体のかたまりと言ってもよい構造物です。それだけに消費電力がかさみます。IEA(国際エネルギー機関)によれば、1回のChatGPTの利用はグーグルの検索1回の10倍の電力量を消費するそうです。

スタティスタの調べでは、生成AI市場は世界中で年率2割のペースで成長し、2030年には30兆円市場にまで拡大する見通しです。その分の学習用データが必要となり、需要地に近いところで大規模なデータセンターが必要となります。

日本も新興国と同じように、電力の足りない状態に陥ることが真剣に心配されます。EVの充電スタンドも必要で、クリーンな電力供給不足が本気で心配される問題が現実のものとなりつつあります。先週は電力、ガス株が広範囲に物色されました。

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ウォーレン・バフェット氏も再び動き始めています。バークシャー・ハザウェイが円建て社債の発行を準備していることが判明し、マーケットでは早くも商社株の上値追いが見られました。

バークシャーが近々、円建て外債を発行するとのニュースが週明けから広がり、これが実現すれば8度目の起債、昨年11月以来となります。三菱商社、三井物産、伊藤忠をはじめ総合商社はバフェット氏のお気に入りで、1年前の来日以来、株価が折に触れて人気化してきました。

今また世界中でインフレ再燃の警戒感が強まり、商社株は材料がなくても買い進まれています。

内需株ではセブン&アイ・ホールディングス(3382)が、持株会社方式を使ってイトーヨーカ堂の株式を一部売却して外部資本を注入する構造改革案が発表されました。

ヨーカ堂に対する保有比率はある程度は維持し、将来はIPOも視野に入れています。セブン&アイはかつてバリューアクトから出された改革案をはね返しましたが、今回の改革プランはバリューアクトからの過去の提案にかなり沿った内容となっています。

アクティビティストの存在は、何ごとに行動の遅い日本企業にとって、株主にとって有効であることが多いものです。これから本格化する日本企業の決算内容が一段と注目されるところです。

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先週の東京株式市場は、TOPIXが3週ぶりに反発しました。上昇率は+2.11%(前週は▲2.38%)と比較的大きめで、徐々に調整色から抜け出す素振りを示しています。

大型株指数が+2.17%に対して、小型株指数も+2.04%とそれに遜色ないほどの上昇でした。ただ金利上昇の影響もあってグロース株の反発は弱く、大型グロース株は+1,69%にとどまりました。大型バリュー株は+2.51%と戻り相場をリードする堅調さです。

騰落レシオは112.98%に安定しています。週の中で最も高かったのが火曜日の116.68%です。日経平均のサイコロジカルラインは「6」の中立状態を6日間も続けています。

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TOPIX-17業種のうち、上昇したセクターは15業種、下落したセクターは2業種でした。

値上がり上位のセクターは「電力・ガス」、「不動産」、「エネルギー資源」となりました。

値上がりトップの「電力・ガス」は、これで9週連続での値上がりです。リード役の北海道電力(9509)を筆頭に、九州電力(9508)、四国電力(9507)、北陸電力(9505)の地方電力株が連騰しています。遅れて関西電力(9503)、東京電力HD(9501)にも物色が広がってきました。

マイクロソフトの日本へのデータセンター投資に見られるように、生成AIの普及に伴って電力不足が日本でも本気で心配されています。大量のデータを用いる生成AIは、これまでのどのテクノロジーよりも消費電力が大きくなる見通しで、世界の電力消費量は2026年には現在の2倍以上に膨らむとIEAは試算しています。

日本も2050年の電力消費は、最大で現在よりも+37%増えると見られています。電力会社の役割がそれだけ増すことになりそうです。

値上がりセクターの第2位は「不動産」でした。

三井不動産(8801)が新しい中期経営計画と大規模な自社株買いを発表し、当の三井不動産ばかりか、三菱地所(8802)、住友不動産(8830)、東京建物(8804)などの大手不動産各社が一斉に物色されました。

国内の長期金利も上昇していますが、不動産、マンションに対する需要は一向に衰えません。将来における住宅ローン金利の上昇もむしろ買い急ぎの動きにつながっている感があります。

値上がりセクターの第3位は「エネルギー資源」でした。原油価格の上昇を背景に、INPE(1605)、ENEOSホールディングス(5020)、出光興産(5019)、コスモエネルギー(5020)がいずれも堅調です。週明け以降の中東情勢次第では一段高となる可能性も強まっています。

反対に値下がりセクターの上位には「小売」、「医薬品」、「情報通信・サービス」が登場しました。

「小売」セクターは決算発表が佳境を迎えています。前2月の業績そのものは好調でも、四半期ごとに勢いが鈍ってきた企業も主力企業の中に見られます。ファーストリテイリング(9983)、イオン(8267)、セブン&アイ・ホールディングス(3382)、サイゼリヤ(7581)がいずれも軟調でした。

それに対してビックカメラ(3048)、ケーズホールディングス(8282)、ライフコーポレーション(8194)は業績好調を反映して、株価も堅調な動きを維持しています。

「医薬品」はアステラス製薬(4503)、中外製薬(4519)、塩野義製薬(4507)が軟調でした。

「情報通信・サービス」でもNTT(9432)、

(後略)

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鈴木一之