ブログ

2022年5月23日

米国株式は歴史的な下落の週に、景気後退リスクが強まる

鈴木一之

◎日経平均(20日大引):26,739.03(+336.19、+1.27%)
◎NYダウ(20日終値):31,261.90(+8.77、+0.02%)

@@@@@

鈴木一之です。世界の経済動向に暗雲が立ち込めてきました。先週の水曜日(現地5月18日)、米国株式市場はNYダウ工業株が終値で▲1164ドルの下落を記録しました。きっかけはディスカウントストア大手のターゲットが発表した2022年2-4月期の決算です。

2-4月期のターゲットの純利益は10億900万ドルとなり、前年比▲52%の減少でした。物流コストや人件費など経費の上昇が鮮明で、この決算を受けてターゲットの株価は1日で▲26%も下落しました。

前日(現地5月17日)もウォルマートが2-4月期の決算を発表しており、こちらも▲24%の減益を明らかにして株価は1日で▲7%も下落しました。マクロ経済統計では米国の4月の小売売上高は予想を上回る堅調さ(+0.9%)が確認されたばかりですが、株式市場は個々の企業業績により敏感に反応した形となりました。

5月相場はこれまでFRBによるインフレ抑制のための金融政策の手綱ばかりが注目されてきました。そこに企業収益の鈍化という新たな不安材料が加わりました。米国の長期金利は物価上昇の圧力が強い間は上昇基調が鮮明でしたが、それが足元では反対に、10年国債金利で2.8%と金利低下の方向に向かっています。それだけ景気鈍化の懸念が急速に高まっているとも受け取ることができます。

米国景気は足踏みしているだけなのか、それとも後退局面に入りつつあるのか。先々週からのマーケットではその判断を見極めようと思惑が交錯し始めているようです。統計データはまだ十分にはそろっておらず、明確に景気後退に入ったとは言い切れません。

ダドリー前ニューヨーク連銀総裁は、2022年中に米国がリセッションに陥る可能性は低いが、2023年か2024年までを考えるとその確率は急速に高くなる、と指摘しています。

@@@@@

景気動向に対してこれほどまでに心配がつのってきた背景には、中国が採用する「ゼロコロナ政策」が影響しています。

中国ではゼロコロナ政策のために、上海市をはじめ大都市が次々とロックダウンの措置を採っています。それが生産活動、消費活動を低下させ、物流網がスタックする原因ともなっています。

先週初めに発表された中国の4月の小売売上高は前年比▲11.1%、工業生産は▲2.9%とどちらも大幅に悪化しました。5月もゼロコロナ政策が続いており、ロックダウンは北京市にまで広がる恐れも出ています。このペースで行けば4-6月の成長率はマイナスに落ち込むとの民間予測も強まっています。

それでも中国政府はゼロコロナ政策を一段と強化する方針を打ち出しています。ウクライナ情勢の緊迫もあって世界経済の停滞感はさらに一段と強まっており、それが米国の株式市場を大きく押し下げる要因となっています。

NYダウ工業株は先週も1週間で▲934ドル下落しており、これで週間下落は8週連続となりました。この記録は世界大恐慌の直後、1932年以来で実に90年ぶりとなりました。高いインフレ率と景気後退が同時に起こる「スタグフレーション」が現実のものになりつつあります。

@@@@@

日本でも徐々に似たような経済の流れが見られます。5月18日に発表された1-3月期のGDPは▲0.2%となり、年率換算では▲1.0%のマイナスでした。2四半期ぶりのマイナス成長ですが、事前の市場予想は年率▲1.8%が中心だったので、わずかですが予想値ほど悪くはありませんでした。

内訳は、内需が+0.2ポイントのプラス、外需は▲0.4ポイントのマイナスでした。注目すべきは設備投資の動向で、+0.5%と2四半期連続で伸びました。反対に住宅投資は▲1.1%と3四半期連続でのマイナス、公共投資も▲3.6%のマイナスとなりました。

一方で物価の上昇は日本でも顕著となっています。週末に発表された4月の消費者物価指数(生鮮食品を除く総合)は前年比+2.1%でした。電気代とガソリン価格の上昇が響いており、食料品価格の上昇、および携帯料金引き下げの影響が外れたことも影響しています。

日銀が目標とする2%の物価上昇を7年1か月ぶりに超えているものの、7年前のこの時は消費税の引き上げが影響していました。消費増税のない2%の物価上昇は、バブル崩壊の直後である1991年12月以来のこととなります。

しかもここから年後半にかけて、電力料金はさらに一段と上昇することが予想されています。ロシアからの輸入が見込めなくなったサーモンなどの水産物の価格も大幅な上昇がほぼ確実です。現在のインフレ基調は少なくとも年内いっぱいは続くとみられ、それが個人消費をどの程度押し下げるのか、ここでも景気への影響が注視されています。

@@@@@

先週の東京株式市場は、TOPIXが反発しました。反発力はさほど強くなく、その前の週の下落率が▲2.70%だったのに対して、先週の上昇率は+0.71%にとどまりました。

それでも米国市場が大きく下落したことに比べると、東京市場はよく踏みとどまったと見ることもできます。大型株と小型株が同時にしっかりしました。軟調だった東証マザーズ指数は7週ぶりにようやく上昇に転じました。小型のグロース株の上昇が目立ち、反対に大型バリュー株は軟調でした。

テクニカル面では、日経平均のサイコロジカルラインが「7」で横ばいを続けるまま、徐々に騰落レシオは上昇に向かっています。先週末はほぼ1か月ぶりに90%台まで上昇しました。

@@@@@

TOPIX-17業種のセクター別の騰落では、値上がり業種が9業種で、値下がり業種が8業種と拮抗しました。

上昇率のトップは「情報通信・サービスその他」です。NTT(9432)、KDDI(9433)が

(後略)

日本株に関する情報をいち早くゲット!

ここでしか読めないメールマガジンを配信しています。
登録無料!

鈴木一之