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2022年8月17日

米7月CPIの落ち着きで株価急騰、日経平均は1月以来の高値に

鈴木一之

鈴木一之です。株式市場では上昇に弾みがついてきました。日経平均は1週間前の時点で28,000円の大台に乗せましたが、今週もそのまま上昇が続いています。週末の日経平均は28,500円も上回り今年1月以来の高値となりました。

注目された7月の米国・消費者物価指数が週半ばに発表され、前年比+8.5%となりました。原油市況の低下を受けてガソリン価格が下落したこともあって、6月の+9.1%から上昇率がようやく鈍ってきました。

マーケットでは早くも「インフレは峠を越えた」という見方が優勢となっています。ただし疑念がすっかり解けたわけではなく、FRBも物価上昇のピークアウトを認めるには早くてあと数か月、経済統計が実際に落ち着いてきたことを示すまでは、金融引き締めの手綱を緩めることはないと見られています。

それでも市場は先走って評価を下すものです。現時点では「景気のリセッション入り」を懸念するよりも、インフレ圧力の低下を好感するムードがはるかに勝っている様子です。

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全面的な楽観ムードが支配しているわけでもありません。日本では7月の企業物価指数が日銀より発表され、前年比+8.6%の上昇と17か月連続で前年を上回りました。品目別では、鉄鋼(+27.2%)、石油・石炭製品(+14.7%)、金属製品(+11.1%)、化学製品(+10.9%)の上昇が目立っています。

中国では7月の消費者物価指数が+2.7%の上昇となり、水準としては2020年7月以来、2年ぶりの高さとなりました。豚肉などの食品(+6.3%)の値上がりが全体の水準を押し上げています。

世界の至るところでインフレが定着しつつあります。企業は原材料価格の上昇をどこまで製品価格に転嫁できるのか、その点がより強く問われるような状況となっています。

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先週はお盆ウィークで、株式市場は例年のように取引高の少ない週となりました。それと同時進行で3月決算企業の決算も集中して発表されています。材料費と物流コストの上昇を反映して総じて厳しい内容となりましたが、それらを吸収して増益をキープした企業には目覚ましい株価の上昇が見られました。

プライム市場で発表を終えた1160社に関して、日本経済新聞社が行った集計によれば、2022年4-6月期の当期純利益は前年比▲26%の減少でした。▲3兆円を超える巨額の赤字を計上したソフトバンクG(9984)の影響が大きいのですが、全体では2四半期連続での減益です。世界全体の減益幅(▲5%)より大きくなっています。

この結果、通期の純利益は+4%程度となる見込みです。為替レートが前年の1ドル=109円から129円超えまで、20円も円安が進んだのに減益となった事実は非常に重要です。これまでとは違って、今後は円安(円高)で業績を判断する状況には戻らない可能性もあります。

日経新聞の集計では、悪かった業種には自動車(▲25%)、電機(▲10%)、食品(▲11%)を挙げています。上海市のロックダウンが響いており、半導体不足も影響が大きかったようです。市場ではこの先も同じ理由で警戒感が拭えません。

反対によかった業種として、海運(2.5倍)、商社(+57%)、石油(2.3倍)、鉄鋼(+40%)、鉄道・バス(黒転)が挙がっています。資源高、市況上昇とコロナからの経済再開の好影響がてきめんに現れています。

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先週の東京株式市場は、TOPIXが続伸しました。上昇率は+1.34%に達し、前の週の+0.35%を大きく上回りました。日経平均が7か月ぶりの水準まで上昇したために幅広い銘柄が値上がりしました。

規模別指数では、小型株から大型株まで幅広く買い上がる動きが見られました。グロース株とバリュー株との対比では、出遅れ気味のバリュー株により優勢な戻りが見られました。このところグロース株の戻りピッチが顕著だったために、それと反対の動きが広がっています。

東証マザーズ指数は4週ぶりに反落しました。東証プライム指数は今年4月の算出開始以来の高値を記録しました。

テクニカル面では、騰落レシオが高止まりしています。週半ばにはいったん117%台に低下しましたが、週末には再び130%台に乗せました。広範囲な上昇が続いていることが影響しています。日経平均のサイコロジカルラインは、週を通じて「7」から「8」の安定した水準を続けています。東証REIT指数は5週ぶりに反落しました。

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TOPIX-17業種のセクター別騰落では、値上がりセクターが16業種まで広がりました。反対に値下がりセクターは「情報通信・サービス」の1業種だけにとどまりました。

値上がりセクターのトップは「エネルギー資源」です。次いで「鉄鋼・非鉄」、「電力・ガス」という顔ぶれです。

トップの「エネルギー資源」では、原油価格は軟調な動きが続いたものの、WTI先物でひとまず下げ渋りを示しました。決算発表で業績の好調さが確認された出光興産(5019)、ENEOS(5020)、コスモエネルギーHD(5021)の石油元売会社や、三井松島HD(1518)がそろって堅調な動きとなりました。

値上がり第2位の「鉄鋼・非鉄」も同様です。日本製鉄(5401)、日本冶金工業(5480)、中山鋼(5408)、三菱マテリアル(5711)、DOWAホールディングス(5714)が決算発表をきっかけに次々と買い進まれました。

電力設備投資の拡充が待ったなしの電線株でも古河電工(5801)、住友電気工業(5802)、フジクラ(5803)がそろって高値に進みました。

先週まで軟調だった電力、ガス株もそろって反発し、値上がりセクターの第3位に登場しています。お盆休み入りを目前にして岸田政権の内閣改造人事が発表され、西村・新経済産業大臣、萩生田・新政調会長がそろって原発の再稼働に言及したことが、電力株の見直し買いにつながった可能性もあります。

反対に値下がりセクターは「情報通信・サービス」のみで、上昇の鈍かったセクターとしては、「不動産」が入りました。

「情報通信・サービス」は、株式市場が全体に軟調だった時期に逆行高を示していたNTT(9432)、KDDI(9433)が、先週は反対波動で軟調な動きをたどったことが響いています。業績の好調さが確認されたソフトウェアのTIS(3626)、オービック(4687)、TDCソフト(4687)などは引き続き堅調な動きとなりました。

「金融(除く銀行)」では、決算発表を受けて東京海上HD(8766)、

(後略)

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鈴木一之