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2021年11月22日

経済対策は55.7兆円に拡大、NASDAQは最高値を更新

鈴木一之

◎日経平均(19日大引):29,745.87(+147.21、+0.50%)
◎NYダウ(19日終値):35,601.98(▲268.97、▲0.74%)

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鈴木一之です。今週末は米国も感謝祭を迎えます。11月は早くも終盤。クリスマス商戦が始まろうとしています。

あいかわらず世界の至るところで集中豪雨の発生による洪水のニュースが伝えられてきます。1週間前にグラスゴーでのCOP26は閉幕しましたが、石炭の使用制限に関しては最後までインドと中国が抵抗したことによって、幕切れはなんとも後味の悪いものとなりました。

決定的な材料を欠いたまま、東京株式市場は上値の重い展開が続いています。これまで相場の頭上にくすぶっていた米国の金融政策の動向、それを映した実勢金利の動き、原油価格の騰勢、、中国の不良債権問題、為替の円安など、気がかりな材料は山積みされたまま、なにひとつ明確な結論は出ておりません。

そのような状況で毎日が過ぎてゆきますが、そうこうするうちに寒さが厳しくなってきた欧州ではコロナウイルスの感染拡大が再び強まってきました。オーストリアは全国規模でロックダウンに踏み切りました。ドイツも新規の感染者数が4万人を超えており、昨年のピークを上回って過去最高を記録しています。

不思議なことに日本では感染者数が低水準で推移しています。1日の新規の陽性者数は200人を下回っており、重症患者数も100人以下という安定した状態です。先進各国のレベルに合わせて海外からの人の出入りを緩めており、恐る恐るではあるものの、空港での水際対策は厳戒レベルから徐々に下げています。それでも感染者数は低位で安定しています。

北海道では感染者数の減少が底打ちの兆しを見せており、ここから先は増加に転じるしかないというレベルとなっています。とても楽観できる状況ではありませんが、それでも飲食店やイベント会場での入場制限の緩和など、日本の至るところで経済再開に向けた試みが始まっています。

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その状況下で、政府は先週末に史上最大の経済対策をまとめました。財政支出が55.7兆円、民間の資金も含めた事業規模は78.9兆円に達します。経済対策としては安倍政権での対策に次いで過去2番目の規模となっています。

内訳は岸田政権の公約どおり、分配を重視した内容となりました。主な支出項目として、コロナ感染症対策で35.1兆円(財政規模で22.1兆円)。ここには事業者向けの支援金、無利子・無担保の資金繰り支援金などが入ります。

また、コロナ予備費を含めた経済対策で35.1兆円(財政規模で22.1兆円)で、ここには新しい「GoToトラベル」が含まれています。さらに目玉としての「新しい資本主義」、成長戦略に28.2兆円(財政規模で19.8兆円)。ここには大学への10兆円ファンド、先端蓄電池の補助金、介護士、保育士への賃上げ支援金が含まれます。そして防災・減災・国土強靭化に5.0兆円(財政規模で4.6兆円)という内訳です。

株式市場が週を通じて上値の重い、もやもやしていた展開を余儀なくされた要因のひとつに、今回の経済対策の発表を待っていたという要素が強いと見られます。木曜日の午後に対策の概要の第1報が流れた際に、日経平均はそれまでのマイナス圏での動きが急速に下げ幅を縮めました。

経済対策の規模としては、衆院選の期間中の数十兆円から、30兆円、40兆円とどんどん膨らんでゆき、最終的には過去最大となる55兆円超という水準に達しました。そのわりにマーケットの反応は冷淡で、世論の評判も芳しいものではありません。

やはり18歳以下のお子さんへの1人10万円の給付に代表されるように、規模ばかりが先行して、実際の経済に対するインパクトや財源の裏づけがはっきりとしないという点が悪評につながっています。成長戦略もこの内容を見る限りでは方向性が明確ではありません。岸田首相は財源としては「赤字国債をはじめ、あらゆるものを動員する」と述べており、増税は考えていないことを明言しました。

いずれにしても補正予算ではなく、正式な来年度予算や税制改正においてきちんと議論する必要があります。

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いずれにしても今年8月末から続いていた、日本の政治の大きな変化は一段落しました。ここからは経済の変化やマーケットの動きに集中することになります。先週末は米国の株式市場において、NASDAQがまたもや史上最高値を更新しました。半導体やEV関連株が大きく上昇しており、製造業のデジタル化、人工知能を駆使したマネジメント、マーケティングの刷新など、革新的なIT革命が進行している様子がわかります。

日本の株式市場においても、物色の二極化が一段と激しくなっています。地銀株を中心に年初来安値を更新する銘柄が相次いでいるのと同時に、トヨタ自動車(7203)、デンソー(6902)、東京エレクトロン(8035)、スクリーンHD(7735)、レーザーテック(6902)のような、好業績を背景に上場来高値を一段と更新する銘柄も増えています。

ウエザーニューズ(4825)、野村総合研究所(4307)、TIS(3626)、長谷川香料(4958)、日産化学(4021)なども同様です。

業績相場と言ってしまえばそうですが、企業としてターゲットとしている市場や経営戦略の良しあしで、株価の位置が大きく変わってしまいます。2022年の新しい年を迎えるまであと1か月と10日に迫りましたが、来年もこのような市場の分断、「K字型」の趨勢は途絶えることなく継続してゆくことになりそうです。新自由主義の反省に立ったとしても、経済の流れは変わりそうにありません。

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先週の東京株式市場は、TOPIXが小幅に反発しました。上昇率は+0.19%の小さな値動きにとどまり、前の週の▲0.04%の下落に続いて小さな値動きに終始しました。株式市場全体のエネルギーが低下している模様です。

規模別では引き続き大型株がしっかりしています。最重量級のTOPIX・コア30が最も堅調な値動きを保っており、次いで大型株が安定し、小型株ほど軟調な動きとなりました。

ただし東証マザーズ指数は大きく反発しています。グロース株の堅調さが戻ってきており、反対にバリュー株は軟調な動きに変わりました。REIT市場はいまだ軟調な動きを落けています。

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TOPIX-17業種のセクター別騰落では、値上がりセクターが4業種にとどまり、反対に値下がりセクターが13業種に広がりました。TOPIXは反発したのに、値上がりセクターはごく少数にとどまっています。それだけ物色のホコ先が1か所に偏っていることになります。

値上がりセクターのトップは「電機・精密」です。東京エレクトロン、レーザーテックに代表される半導体関連株が軒並み高騰しました。旺盛な受注残高を背景に半導体株の上昇が止まりません。米国でも週末にかけて半導体関連株が買い進まれているため、週明け以降もこの流れが続くと見られます。

半導体ばかりでなく電子部品株でも、太陽誘電(6762)、

(後略)

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鈴木一之