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2022年3月2日

2月24日(木)ロシアがウクライナに侵攻、週末の米国株は急反発

鈴木一之

◎日経平均(25日大引):26,476.50(+505.68、+1.95%)
◎NYダウ(25日終値):34,058.75(+834.92、+2.51%)

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鈴木一之です。日本時間の2月24日(木)昼過ぎにロシアがウクライナに軍事侵攻を開始しました。ロシアによるこのような蛮行には断固反対します。一刻も早く戦争行為を停止して武力ではない別の道で問題解決を図るべきです。

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第二次世界大戦以来、大国が武力によって国境線を変更する初めての野蛮な行為が目の前で起こっています。歴史が大きく塗り替えられる状況に突如として直面することになり、世界の資本市場がこれから起こる事態に身構えています。

現実を直視すれば、軍事力の格差から言って世界有数の軍事大国ロシアとウクライナとの武力の差は歴然としています。圧倒的な軍事力をバックに、2月24日の戦闘開始直後からロシア軍は空爆によってウクライナの主要な軍事施設を次々と破壊しています。すでに70か所以上の軍事施設が撃破され、軍事施設ばかりでなく民間のアパートや市街区域にも着弾しています。

ロシア軍は余力を温存したまま首都・キエフに迫っています。首都の機能が破壊される前に停戦合意がなされるのか、ロシア側の突きつける厳しい条件をウクライナがどこまで受け入れるのか、その後のウクライナの政治体制は、NATO東方拡大を支持する旧ソ連邦の他の中央アジア諸国は。ロシアに対する経済制裁の効果は。

コロナ禍の中で世界経済が弱体化している時期に、さらに経済には下押し圧力がかかります。世界が固唾を飲んで見守っています。

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フランスとドイツを中心にぎりぎりまで外交的な解決を試みましたが、プーチン大統領の翻意は得られず開戦となりました。ドイツとフランスは2015年の「ミンスク合意」の当事者です。ミンスク合意は、ロシア系住民の支配するドネツク州、ルガンスク州の東部地区紛争の停戦合意の文書ですが、その合意は今回で完全に破棄されました。

これによってNATO加盟国を中心に、ロシアに対する経済制裁が発動されつつあります。先週は主要な大手2行の銀行に対して取引停止が決定されました。その時点では決断が先送りされた「SWIFT」(国際銀行間通信協会)からの排除もどうやら実施される見通しです。

「SWIFT」から排除されると国際間の銀行取引が決済できず、影響はロシアばかりでなく貿易の相手国にも及びます。「金融の核爆弾」と呼ばれるほどその被害は甚大なものとなります。

2012年にイランに対して「SWIFT」排除が実施された時は、イラン経済はその年▲7%を超えるマイナスの経済成長を余儀なくされました。輸出取引がまったくできず、イランの通貨は暴落と言ってよいほどの下落に見舞われました。今の状況であればロシアのルーブルも同様の過程をたどると見られます。ルーブルが下がると1998年の「ロシア危機」の悪夢がよみがえります。

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気がつけば2月も過ぎようとしています。1月に続いて2月も極めて激しい動きとなりました。2月4日(金)に北京オリンピックが始まったのが遠い過去のように思えます。

開会式は外交ボイコットでアメリカ、イギリス、オーストラリア、日本など西側諸国が参列しなかった、その間隙を突いてプーチン大統領は中国の習近平国家主席と首脳会談を行いました。その直後から話し合いで解決を目指す独仏の姿勢と、今にも戦争が始まると警告を発するアメリカの姿勢がはっきりと分かれました。

2月7日(月)に米国のサリバン大統領補佐官は「ロシアがウクライナに侵攻する可能性が明確にある」とテレビのインタビューで述べました。同日、フランスのマクロン大統領はプーチン大統領とモスクワで単独会談し、軍隊の撤収の条件などを提示しました。外交的な解決が図られるとの期待も浮上しましたが、結果は裏目で出ました。

2月11日(金)、米国のサリバン大統領補佐官は記者会見で「ロシアによるウクライナ侵攻はいつ行われてもおかしくない、北京五輪の開催中にも起こり得る」と発表し、ウクライナにいる米国人に対して退避するように呼びかけました。

ウクライナのゼレンスキー大統領は「2月16日(水)」と日時を限定して、その日にロシアが軍事侵攻を開始すると公表し、この日を「国民統合の日」と位置づけウクライナ国民に団結を呼びかけました。

実際には2月16日には軍事行動は起こらず、逆に「ウクライナ国境からロシア軍の一部が撤収を開始した」とのニュースが流れたほどです。日経平均は安ど感から+595円と大きく反発したのですが、しかしその報道は事実確認が取れないまま、すぐにマーケットには緊張感が戻るようになりました。

2月17日(木)には「国境付近でウクライナ軍より発砲があった」とロシア系メディアから流れ、株価は再び下落。日経平均、NYダウともにその日から5日間下げ続けるという緊張した状況が続きました。

そして2月20日(日)に北京オリンピックが閉幕すると、すぐ翌日の2月21日(月)にロシアは国家安全保障会議を開き、ロシア系住民の多いウクライナの東部2州を「ルガンスク人民共和国」、「ドネツク人民共和国」として独立国家に承認しました。米国は祝日でした。

その上で2022年2月24日(木)、プーチン大統領は東部2州の住民をジェノサイドから保護するという名目で軍事行動を開始しました。ロシア軍がベラルーシからも国境を越え侵攻を開始。25日(金)にはチェルノブイリ原発まで占拠し首都キエフに迫っています。

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戦端が開かれるのと同じ時刻にオープンしていた東京株式市場は、2月24日(木)の昼過ぎから下げ幅を拡大。この日の日経平均は▲478円で終了しました。続いて取引が始まった欧州市場も軒並み大幅安となりましたが、NY市場だけは足取りが違いました。

木曜日のNYダウ工業株30種平均は、取引時間宙に一時▲859ドルまで下落しましたが、そこから急速に切り返し、終値では+92ドル(+0.27%)まで反発し、6日ぶりのプラスとなりました。NASDAQはさらに上げ+436ポイント(+3.34%)で終わりました。翌日もNYダウ、NASDAQはそろって続伸しています。

最大の焦点である原油価格は、木曜日に終値で94.40ドルまで上昇した後、金曜日には91.94ドルにわずかながら下落しています。長期金利は米10年物国債金利で1.96%~1.99%にとどまっており、それまでの金利上昇、資源価格の上昇は鳴りをひそめています。

ロシアの軍事行動に対して国際世論は圧倒的にロシアに不利の側に傾いています。国際法上のとがめや人道的、政治的な非難は当然として、ここからは西側諸国の打ち出す経済制裁の影響が出てくることになります。

米国の長期金利の上昇は、(1)コロナ危機がもたらした物流の混乱、需給のミスマッチが消費者物価の上昇につながったこと、それに(2)ウクライナ情勢の緊迫化による資源価格の上昇、というダブルパンチでもたらされています。特に(2)の側面は、今回の戦争勃発によって単なる懸念から現実のものに置き換えられたこととなります。

それが新たな局面に入る可能性をもたらすことも否定できません。大規模な経済制裁が長期的に課されることで、ロシア経済、および世界経済には着実にマイナスの影響がもたらされます。物価上昇の圧力が簡単に緩和するとは考えられませんが、それでも国際情勢の新展開によって、FRBのタカ派的な政策運営に変化が生じることが十分に考えられます。

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今年1月25~26日に開催されたFOMCでは、政策金利の変更は予想通りに見送られました。その上で次回、3月15~16日に開催されるFOMCにおいて、テーパリングの終了時期、利上げの開始時期、バランスシートの縮小(QT)開始の時期、が示されるとされています。

物価動向が気がかりであることは変わらないものの、今ここでタカ派的な政策運営が可能でしょうか。急務となっているインフレの抑制には多少目をつぶって、国際情勢への対処を優先する可能性も浮上してくるように見られます。それにはやはり原油価格の動向が重要です。

経済制裁が課されることで世界経済には下押し圧力がかかります。原油価格の上昇はロシアには有利に働きます。逆に原油の下落はロシアには不利です。物価上昇はこれまで以上に抑えられると見るべきか。それとはまったく逆に、物価は戦争開始でここからさらに上昇力を強めると見るべきか。判断は真っ二つに分かれます。

2001年9月11日、「9.11」で知られる同時多発テロ事件の直後、FRBは臨時のFOMCを開催して果敢に金融緩和を実施して市場に資金を供給しました。当時のブッシュ大統領は「これは戦争である」と宣言し戦時下の非常事態を強調しました。今回は米国が戦場となっているわけではありません。インフレと金利上昇に伴う株価の動揺をどこまで食い止めるのか、FRBの運営手腕がここでも世界と経済を救う責務を負っています。

先週末のNASDAQの大幅な反発は、その辺を考慮し始めているはずです。金利が上昇しないのであれば、グロース株は動きやすくなります。日本でもマザーズ市場が大きく上昇し、金曜日は1日で+7.5%も上昇しました。2020年3月24日の+8.0%以来の大幅な上昇です。

昨年11月をピークに一貫して下落していたグロース株が先週末は一斉に買われ、反対にこれまで買われていたバリュー株が下落に転じています。金利上昇のトレンドに変化が出始めているようにも感じられ、それが物色動向にもはっきりと影響しています。非常にむずかしい局面ですが、FRBのここでの手腕のほどが何にも増して重要になっています。

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先週の東京株式市場は、TOPIXが続落しました。下落率は▲2.50%となり、前の週の▲1.95%に続いて大幅安となりました。日経平均は昨年来安値を更新し、一時26,000円の大台を割り込んでいます。

グロース株の下落は依然として厳しいものですが、それも徐々に底値に達し、バリュー株への人気と入れ替わりつつあります。東証マザーズ指数は週末に大きく上昇し、週間では▲1.05%の下げにとどまりました。

大型バリュー株の下げが大きく(▲3.59%)、小型グロース株の下げ(▲0.96%)が最も小さくなっています。

日経平均は5日続落を記録したために、サイコロジカルラインは木曜日に「4」まで低下しました。その後、週末は「5」に戻りました。下落する銘柄と上昇する銘柄が激しく入れ替わっており、騰落レシオは100%前後のところに貼りついています。

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TOPIX-17業種のセクター別の騰落では、値上がりセクターは「エネルギー資源」の1業種にとどまりました。値下がりセクターは16業種に拡大しています。

値上がりセクターのトップは「エネルギー資源」です。原油価格が一時100ドルを突破したこともあって値動きが激しくなっています。INPEX(1605)、石油資源開発(1662)が物色されたものの、週末には軟化しました。

値下がりしたものの下げの小さかったセクターは「情報通信・サービス」です。前の週には値下がりトップとなったセクターですが急速に持ち直しています。ベイカレントコンサル(6532)、

(後略)

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鈴木一之