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2023年1月15日

2023年第2週目、TOPIXは5週ぶりに反発、銀行株が全面高

鈴木一之

鈴木一之です。大学入試の共通テストが2日目を迎えます。受験生の皆さん、インフルエンザやコロナウイルスに負けずに日ごろの精進の結果を存分に発揮してください。応援しています。

マーケットでは新年早々、大きな動きが見られました。世界中の市場が早くも動き出しています。日本も例外ではありません。

先週、特筆すべき出来事はふたつありました。米国のインフレ率の低下、そして日本の金融政策への思惑です。(日米首脳会談の実施を加えれば3つかもしれません。)

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まず米国の動きです。

1月6日に12月の米・雇用統計が発表され、この結果にマーケットは諸手を挙げて好反応を示しました。テクノロジーの集まるNASDAQと半導体・SOX指数はその後の1週間、丸々上昇を続け、今年最初の6日続伸を記録しました。

米国ばかりでなく、イギリスのFTSE100は史上最高値にあとわずかというところまで迫っています。深刻なエネルギー問題に直面しているドイツのDAX指数も上昇基調が鮮明です。

米国の雇用統計は、非農業雇用者数の伸びが22.3万人で市場予想を上回り、失業率も3.5%に低下しました。好景気は持続していますが、それ以上に注目されたのが平均時給の伸びです。これが市場予想(+0.4%)を下回る+0.3%となったことから、賃金インフレへの警戒が急速に和らぎました。

マクロ経済統計は米国景気の鈍化を示すものが増えています。同じ日に発表されたISM・非製造業景況感指数は49.6に大きく低下し、分岐点の「50」を一気に下回りました。

さらに1月12日に発表された12月の消費者物価指数は+6.5%まで低下し、市場予想の+7.1%を大きく下回りました。これで6か月連続での低下です。

景気は強さ弱さが入り組んでいますが、それでもFRBの思惑通りに弱含みで推移しており、それに伴ってインフレを示す指標もマイルドなものに変わっています。

市場参加者の間では、今年の米国経済はソフトランディングの可能性が出てきた、との楽観的な見方が広がっています。それが長期金利の低下を促し、米国および主要国の株価上昇につながっています。

1月31日から2月1日にかけて開催される今年最初のFOMCでは、利上げ幅が早くも0.25%に縮小するとの観測が浮上しています。これによって為替市場では、ドルが売られ円が買われる展開となっています。CPIの発表を受けて先週末には1ドル=127円台半ばまで7か月ぶりの円高となりました。

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米国では主要企業の決算発表も始まっています。先陣を切るのは決まって金融機関です。先週末はJPモルガン・チェース、バンカメ、シティグループ、ウェルズ・ファーゴが一斉に10ー12月期の決算発表を行いました。

最大手のJPモルガン・チェースの2022年12月期決算は、純利益が▲22%の376億ドルとなりました。貸倒引当金の計上と投資銀行業務の収入減が響いていますが、10ー12月期の3か月間だけを見ると、金利上昇による利ざやが改善し、純利益は5四半期ぶりに増益となりました。カード決済額も+10%増え、「リボルビング払い」の残高も2割増加してコロナ前の水準を回復しています。

決算集計を担う民間調査会社のリフィニティブの最新の予想では、主要企業の10-12月期の利益は前年比▲2.2%の減益です。警戒されていた企業業績が悪くても、インフレへの警戒感が薄れ先週の株式市場は堅調に推移しました。

「経済にとって悪いニュースはマーケットにとって良いニュース」という楽観的なトーンが戻りつつあります。景気敏感株の最たるものであるキャタピラーの株価が史上最高値を更新しているのが好例です。

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日本は1月4日(水)の大発会に、日経平均は一時▲400円を記録する軟調な今年のスタートを切りました。

1月9日(月)の「成人の日」の3連休が明けるまでは、経済界の動きは休暇モードのままで本格的な年明けではないという近年の習性もあって、株式市場は米国の雇用統計、CPI待ちというどっちつかずの推移でしたが、それが変わったのが1月12日(木)です。

この日の読売新聞オンライン版が「日銀、大規模緩和の副作用点検へ」との見出しを報じ、1月17ー18日に開催される日銀の金融政策決定会合において、大規模な金融緩和策に伴う副作用を点検するという方針が流れました。

このニュースに市場は銀行株の全面高と言う形で一気に反応しました。

「金融政策の点検」という文言は以前にも用いられたことがあります。2021年3月には、それまで賛否両論が激しく交わされた、日銀によるETF購入(量的・質的金融緩和という名の株価買い支え)が、この時の「金融政策の点検」によって打ち切られた経緯があります。

日銀は昨年12月20日の金融政策決定会合において、それまでのイールドカーブコントロールの誘導目標の上限を突如として0.25%から0.50%に引き上げたばかりです。

その時は「市場金利のゆがみを正す」ということが目的とされましたが、市場ではそうとは受け止めず、事実上の利上げ、出口戦略の入り口と判断されたばかりです。

それからわずか1か月でさらに「金融政策の点検」が行われるというのですから、市場は日銀の政策変更の可能性により一段と前のめりになるのも無理はありません。

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1月12日(木)から10年物国債金利を除いた長期金利は大きく上昇し始め、イールドカーブコントロールによる無制限の「指値オペ」の対象である10年国債金利は、上限の0.50%を超えて推移するまでになりました。ヘッジファンドなど海外の大手機関投資家が一斉に日本国債の空売りを仕掛けている様子がうかがえます。

「市場対中央銀行」の攻防の図式が一段と鮮明になっています。日銀は1月13日に5兆円の国債を買い入れ、2日連続で過去最大の買い入れを実施しました。2日合計で10兆円に達しています。昨年の日銀の国債購入額は1日平均で9900億円ほどとされており、先週末の2日間だけでその5倍の額を買い入れたことになります。

米国では利上げペースが減速されるとの見方が強まり、かたや日本では日銀が追加の金融政策の修正(事実上の利上げ)に踏み切るとの観測が広がっています。それによって実勢金利は上昇し、日米間の長期金利の差は3%まで縮小しました。金利が縮まったことで、これも円買い・ドル売りが加速する要因となっています。

金曜日には127~128円台まで円高・ドル安が進み、それによって株式市場では日経平均が▲300円を越える大幅安を余儀なくされました。

決算発表が失望されたファーストリテイリングが1社で日経平均を▲217円押し下げるという要因もありましたが、昨年秋の円安局面をさほどプラス評価に受け止められなかった日本株は、円高ではさらに厳しい評価に直面するという不都合に直面してます。

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先週の東京株式市場は、TOPIXが5週ぶりに反発しました。+1.46%とまずまずの上昇です。

週末には下落したもののTOPIXベースの下げは日経平均と比べると相対的に小さく、週前半の貯金がモノを言いました。東証マザーズ指数も2週ぶりに反発しました。

金利上昇でバリュー株が優勢の展開が続いています。大型バリュー株は引き続き堅調ですが、グロース株も軟調というほどの動きではありません。金利が上昇しており東証REIT指数は2週連続で下落しました。

テクニカル面では、騰落レシオは昨年暮れに75.86%まで低下した後に、94.54%まで回復しました。日経平均のサイコロジカルラインは「4」のボトムから反転し、昨年8月中旬以来の「8」のレベルまで高まっています。

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TOPIX-17業種のセクター別騰落では、値上がりセクターが9業種、値下がりセクターが8業種と分かれました。値上がりトップが何と言っても「銀行」です。次いで「「鉄鋼・非鉄」、「機械」と景気敏感株が並んでいます。そのあとに「電機・精密」が続いています。
物色の中心は引き続き「銀行」です。昨年12月20日以降の上昇を継続し、大発会直後から年明けも人気を維持しています。

物色は三菱UFJフィナンシャルグループ(8306)、三井住友フィナンシャルグループ(8316)、みずほフィナンシャルグループ(8411)のメガバンクはもちろん、地銀株がほぼ全面的に上昇しました。ほとんどの銀行株が昨年来高値を更新しています。

引き続き長期金利の上昇を好感しています。10年物国債の流通利回りは日銀の買い入れ上限である0.5%を突破し、1月17ー18日の会合でも市場は何かしらの政策変更があるとの期待が充満しています。

仮に今回の決定会合が肩透かしに終わり、金融政策の変更がなかった場合、いったんは銀行セクターは下落するはずです。それでも4月には黒田総裁の総裁任期が迫り、3月以降の決定会合においてイールドカーブコントロール、あるいはマイナス金利政策のいずれかの変更が行われる、との見方は根強く残っています。

値上がりセクターの第2位は「鉄鋼・非鉄」です。1月8日に中国が突如としてゼロコロナ政策を全面解除したことから、中国経済が回復に向かうとの見方が素材市況を押し上げています。

鋼材市況はもちろん、銅市況は8000ドル/トン付近から9200ドルまで急上昇しました。日本製鉄(5401)、神戸製鋼所(5406)、住友金属鉱山(5713)などが中心となって景気敏感株が物色されました。

値上がりセクターの第3位は「機械」です。こちらも中国の経済回復への期待を背景に、これまで売られていたDMG森精機(6141)、SMC(6273)、

(後略)

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鈴木一之