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2025年7月15日
25%関税に揺れた1週間、日経平均は2週続落、小売企業の好決算相次ぐ

鈴木一之です。東京地方は先週、いきなり線状降水帯の豪雨に見舞われました。
今年の梅雨は雨が少なく、35度を超える猛暑に毎日のようにさらされ、都心では熱中症にばかり気をとられていました。
そうしたら木曜日には突然の大雨です。夏の夕立などというものではありません。季節感などどこにもなく、メチャクチャな天候の移り変わりです。
この天候不順は一過性のものなのでしょうか。それとも半永久的に続く異常気象の常態化なのでしょうか。くれぐれもご健康にはお気をつけください。
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先週の日経平均の値動きです。
・7月7日(月):39,587円(▲223円)
・7月8日(火):39,688円(+101円)
・7月9日(水):39,821円(+133円)
・7月10日(木):39,646円(▲175円)
・7月11日(金):39,569円(▲77円)
エヌビディアが人類史上初めて、時価総額が4兆ドルの大台に乗せるという快挙があり、データセンター投資は1兆ドルを超え、生成AI関連株の華々しい成長が続いています。
しかし世界中の市場参加者全員の関心はトランプ関税に集中しています。その関税問題が先週は大きな展開を見せました。
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米国東部時間の7月7日正午、トランプ大統領は主要な貿易相手国に対して新たな関税率の通告を始めました。日本は韓国と同じ25%の税率です。
それと同時に相互関税の交渉期限を、これまでの7月9日から8月1日に延期することも発表されました。トランプ大統領はこれら一連の手続きを書簡で通知するという、異例の手順を踏みました。
4月に公開された最初の相互関税では日本の税率は24%だったので、それよりも1%だけ上乗せされた格好です。他の大多数の国は4月の税率がそのまま据え置かれて適用されたので、日本はわずか1%でもより厳しい措置となりました。
2か月かけて交渉を続けた成果がこれでは、まるで進展がないとネガティブに受け止めることもできます。それでも事前の「30-35%」との税率は回避されたので、比較感では楽観的に見ることもできます。
税率が25%にとどまったこと、交渉期限が8月1日まで伸びたこと、ベッセント財務長官が「日本は参院選の期間なので大幅な譲歩はむずかしいだろう」と日本の内情を熟知したような発言から、発表直後から株式市場はプラスの反応を示しました。
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しかし今回の25%の税率は、あくまで相互関税の部分だけです。他の個別分野の関税(自動車、鉄鋼、アルミ、銅製品)は切り離され、それらは現時点では交渉の対象外にあります。日本にとってはどちらも重要で、とりわけ自動車関税の部分が大きなカギを握ります。
参院選の投開票が7月20日に実施され、それから8月1日までの残された10日間の交渉が非常に重要な期間となります。「相互関税は25%」と日米双方が意識すればするほど、個別分野ごとの関税に関して米国は交渉や変更を加える気はないと言っているようなものだ、と指摘する専門家も存在します。
それでもブラジルのように、それまでの基本税率10%だけという状況から、8月1日からはいきなり50%に引き上げられる国と比べればまだまし、ということにもなります。
しかもそこにはトランプ大統領の個人的な好悪の意思が強く反映しています。こうなると交渉も何もあったものではありません。
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ホンダ(7267)はすでに米国での現地生産比率を現行の7割から2-3年後に9割まで引き上げる意向が伝えられており、株価が4日続伸を記録しています。しかしトヨタ自動車(7203)をはじめ、それ以外の自働車株にはまだ明確な反応は見られません。
かたや自働車部品や機械セクターは、豊田合成(7282)、エフシーシー(7296)、日本精工(6471)、NTN(6472)などの株価は強含みの動きに変わりつつあります。現時点で明確な結論は出ていないことになります。
ひとまず参院選の投票後まで交渉は保留され、政治の世界に翻弄される展開がいましばらく続くことになりそうです。
日本政府は対米貿易黒字の解消に向けて、いったいどのようなカードを切るのでしょうか。農産物の輸入拡大か、対米輸出の自主規制か、防衛費のさらなる増額か、答えは誰にもわかりません。
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そして参院選です。選挙期間中はメディアの報道が大きく制限されるため、今回は(今回も)主戦場はSNSにはっきりと移っています。
先日の東京都議会選もそうでしたが、SNSの扱いに慣れた候補や政党と、そうでない政党の格差が大きく開きそうです。
その構図はそっくりそのまま有権者側にもあてはまり、SNSに習熟した若年層と不得手な高齢者層との差にも直結します。
国難とも言える関税問題に政府・与党が翻弄される一方で、野党はほとんどすべての政党が消費減税や廃止を選挙戦の前面に掲げています。
立憲民主党:軽減税率8%を1年間ゼロに(最大2年)
日本維新の会:軽減税率8%をゼロ(2年間)
国民民主党:一律5%(実質賃金が前年比+2%になるまで)
れいわ新選組:消費税は廃止
自民、公明:国民1人に一律2万円の給付金(住民税非課税世帯は1人2万円追加)
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SNSには「消費減税、ないしはゼロ」の声があふれています。今回の参院選における自公の勝敗ラインはかなり引き下げられていますが、このまま投票にもつれこめば与党にとって相当に厳しい結果となるのは必至の情勢です。
若年層、中高年、高齢者世代では求めている政策がかつてなく開いています。消費税を引き下げるだけで本当によいのか。大きく判断のわかれるところです。
私自身はゆくゆくは消費税を引き上げて、その分所得税を引き下げるべきだと考えますが、現在では吹けば飛ぶような泡沫アイディアのひとつに過ぎません。
衆院に続いて参院でも過半数割れとなった場合、政権運営はどのようになってゆくのか。政治的な空白は生まれないのか。8月1日までの交渉期限に向けて明確な指針は打ち出せるのか。
大連立となった場合、海外投資家は日本の将来と経済をどのように評価してゆくのか。ここでも可能性ばかりが取りざたされ、明確な結論が得られません。政治と経済が非常に流動的になってしまいそうな不安がつきまといます。
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マーケットは不安定な状況にさらされていますが、企業業績は堅調です。気象情報サービスのウェザーニューズ(4825)の2026年5月期の純利益が35億円(+12%)で、4期連続で最高益更新となりました。
良品計画(7453)は2025年8月期の純利益が470億円(+13%)になりそうだと、今年3回目の上方修正を発表しました。
サイゼリヤ(7581)も2024年9月-2025年5月期の純利益が77億円(+50%)となり、9か月間では過去最高となりました。
ドラッグストアのスギHD(7649)は好調な第1四半期の決算を受けて、2026年2月期の純利益の見通しを442億円(+72%)と上方修正しました。
半導体のディスコ(6134)は2025年4-6月期の純利益の見通しを公表し、237億円(+0.2%)と▲30%減益の見通しから上方修正しました。
台湾のTSMCの4-6月期の売上高は9337億台湾ドル(+38.6%)となり、四半期ベースで過去最高を更新しました。
その一方でイオン(8267)は
(後略)
