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2022年3月22日

FOMCで0.25%の利上げを決定、ウクライナ危機は続くものの株価は急反発

鈴木一之

◎日経平均(18日大引):26,827.43(+174.54、+0.65%)
◎NYダウ(18日終値):34,754.93(+274.17、+0.79%)

「FOMCで0.25%の利上げを決定、ウクライナ危機は続くものの株価は急反発」

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鈴木一之です。ロシアがウクライナに軍事侵攻を開始して早くも1か月が経過します。停戦交渉が始まっていますが遅々として進みません。一日も早く紛争が解決することを願ってやみません。

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今週の株式市場は世界中で同時に大きく上昇しました。日経平均は週を通じて下落した日が1日もなく、今年初めて5日続伸となりました。

米国市場ではS&P500、欧州市場では英国のFTSE、アジアではシンガポール市場がウクライナ紛争の開始前の水準まで値を戻しました。

株価は回復しつつありますが、しかし国際情勢は不透明感の強い状況がいまだ続いています。ウクライナ危機は打開に向けた試みが続いているものの、打開の道は遅々として開けません。

マリウポリやハリコムなど大都市では、病院、学校、集合住宅など市民に向けての砲撃が加えられており、悲惨な状況が映像で世界中に流れています。ウクライナ国外に脱出した市民の数は300万人を超えました。いったんは下落した原油、非鉄などの国際商品市況も再び上昇に転じつつあります。

先週末は米中首脳会談が電話協議で開催され、中国がロシアを支援することに対して米国からは強い警戒が示されました。週明けには緊急のG7首脳会議がブリュッセルで対面形式で開催されます。

先週のスタート時点では軟調なムードが色濃く残っていました。ゼロコロナ政策を採用する中国で、コロナウイルスの感染拡大が強まっていることを理由に、香港、上海市場の株価が▲5%以上も急落しました。北京五輪とパラリンピックが終了してすぐに感染者数が広がっています。トヨタ自動車や鴻海精密工業は中国工場の稼働停止を余儀なくされました。

大統領選挙が終了したばかりの韓国でも、過去最高の感染者数(1日で40万人)というレベルに達しており、オミクロン変異種の拡大は一向に収まっていません。

それでもドイツやイギリスなど欧米では行動規制を次々と緩和、解除しています。コロナウイルスはもはや「パンデミック」ではなく「エンデミック」、通常のインフルエンザと同じような扱いになりつつあるようです。

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世界の株式市場が堅調な動きを示したことについて、最大のポイントはやはり米国の金融政策です。3月15日(火)~16日(水)にかけてFOMCが開催され、FFレートの誘導目標がそれまでの0~0.25%から新たに0.25~0.50%に引き上げられました。

FRBはコロナ危機によって大幅な緩和政策(ゼロ金利)を採用して以来、2年ぶりにそれを解除しました。同時に先行きの金利水準の見通しも明らかにし、今年中に7回の利上げを行うことを市場に対して明確に示しました。急激に進むインフレを抑制する姿勢を前面に打ち出した格好です。

この決定を受けて世界の株式市場は大きく上昇に転じました。利上げを開始すること、および利上げの幅は、パウエル議長自身が事前にはっきりと示したとおりの内容でした。

それ以上に市場が注目したのは、今年は合計で7回の利上げを実施する見通しが示されたこと、およびFRBの資産を減少させる、いわゆる「量的引き締め」が「早ければ次回5月の会合」で決定される可能性を指摘した点と見られます。

「年7回」の利上げペースは、それまでの市場予想のほとんど上限に近い、かなりのタカ派の印象です。そこまでFRBは今回のインフレ抑制のスタンスを強めた格好です。パウエル議長は記者会見で、米国の景気が2023年中に後退する可能性は「特には見られない」と言及しました。

昨年から強まったインフレ進行に対してFRBの判断は甘く、それまでの対処は完全に後手に回ったとの評価が市場ではなされています。それが今回の金融政策によって、マーケットの評価はひとまず好意的な方向に向かったことで安堵感が感じられます。為替市場では日米金利差の拡大を背景に119円台までドル高、円安が進みました。

しかしこれですべて解決したわけではありません。今回のインフレはコロナ危機が世界中に広がっているところへ、ウクライナ危機という地政学的リスクが重なってもたらされたものです。供給制約が一段と厳しくなっており、果たして従来的な金融政策だけで40年ぶりの高インフレに対処できるのか、という素朴な疑問がついてまわります。

まずは緩和から引き締めに舵を切ったという政策変更の、最初の1週間が経過したに過ぎません。今後の物価動向と長期金利の推移を固唾を飲んで見守ることになりそうです。

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先週の東京株式市場は、TOPIXが5週ぶりに反発に転じました。上昇率は+6.10%に達し、今年最大の値上がりとなりました。2020年4月10日の週に+7.92%の上昇を記録して以来の大きな反発です。この時はWHOが「パンデミック」宣言を行った直後の急落からの回復過程でした。

前の週までの流れが全面的に修正されており、売られたものが買われ、買われたものが売られています。東証マザーズ指数は反発し+10.46%の大幅高となりました。グロース株がバリュー株を大きく上回って上昇しました。

週を通じて幅広い銘柄の反発がみられましたが、騰落レシオはさほど上がらず94.2%にとどまっています。日経平均のサイコロジカルラインは「7」まで回復したところです。

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TOPIX-17業種のセクター別の騰落は、前の週とはすっかり逆で、値下がりセクターは「エネルギー資源」の1業種にとどまりました。株式市場が軟調だった過去4週間、最もしっかりしていたセクターです。

ただしINPEX(1605)や出光興産(5019)も大幅安というわけではありません。あくまで一服という感じで、まだこの先も動きがあることを予感させる値動きです。

上昇率の小さかったところでは「小売」、「電力ガス」、「鉄鋼・非鉄」と続いています。小売セクターは「まん延防止等重点措置」明け後の経済再開の期待感から堅調な銘柄が目立ちます。鉄鋼や非鉄セクターも反動安が出てもおかしくないセクターですが、しっかりした値動きです。

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上昇セクターは「エネルギー資源」を除いた16業種がプラスとなりました。最も値上がりの目立ったのが「自動車・輸送機」です。それに続いて「電機・精密」、「不動産」、「機械」となっています。

自動車セクター、およびその周辺のタイヤ(ゴム)、工作機械、自動車部品などはウクライナ危機の開始以来、最も厳しい状況に置かれた銘柄群です。ロシアと地続きの欧州市場は厳しくなるというのがその背景ですが、それらが先週は一斉に上昇に転じました。

トヨタ自動車(7203)と日産自動車(7201)の値動きは、

(後略)

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鈴木一之