今後数十年間のアメリカ株は、新高値を付けたかと思えば数年来の安値に落ち込むなど、ジェットコースターのような激しい乱高下を繰り返すだろう。こうした激しい動きはまだ過去の事実にはなっていないが、18年に及ぶ長期の大強気相場が2000年に終了したあとを受けて、これからトレンドのない長いレンジ相場が続くのは間違いないだろう。こうした変動の大きいレンジ相場で相応の利益を手にするのは、それにふさわしい投資戦略を持っている投資家だけである。

この厳しい投資の現実をだれよりもよく理解しているのは、優れたファンドマネジャー兼投資教育家、そして著述家でもあるビタリー・カツェネルソンであろう。

彼は本書のなかで、前の強気相場で大きな利益を上げた従来のファンダメンタルズ手法に磨きをかけ、レンジ相場向けに改良したアクティブなバリュー投資法をあますところなく公開している。この本はちまたにあふれている単なるバリュー投資の解説書ではない。前の強気相場の名残である高水準のPERが続く厳しい投資環境のなかで、多くの投資家がリターンと資金の喪失に悩んでいるとき、本書は相応の利益を手にするための深い洞察とタイムリーな投資テクニックが盛り込まれた実践的な指南書となるだろう。

本書の第1部では、過去200年にわたる米国株式市場のヒストリカルな推移とパフォーマンスを分析し、長期の強気相場・弱気相場・レンジ相場をもたらした要因を検証している。続いてそうした長期相場を支配していた人間の心理、現在の米国株式市場が長期のレンジ相場に突入した可能性、このレンジ相場がどれくらい続くのか――といったことが詳細に検討されている。

そして第2部ではこうした現実を踏まえて、われわれ投資家はどのように対処すべきかという戦略が述べられている。具体的には優良企業の条件とその株式を適正な価格で購入するための方法、すなわち現在のレンジ相場に適切に対処するためのアクティブなバリュー投資の実践法が明らかにされている。こうしたアプローチのベースとなるのが、企業の質・成長・評価という3つの条件の分析である。

そして最後の仕上げとして、優良企業の株式の買いと売りの方法、それを成功させるためのリスクと分散投資の考え方に焦点が当てられている。