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2025年5月26日
日経平均は週足で6週ぶりに反落、米国の財政赤字が前面に浮上する

今度こそ停戦、と期待されたロシアとウクライナの停戦交渉は暗礁に乗り上げ、トランプ大統領は仲介役を投げ出す構えを見せています。
イスラエルはハマスに対する武力行使を再開し、首都ワシントンDCでは若いイスラエル大使館員の殺害事件、反ユダヤ主義を巡ってハーバード大学の留学生受け入れ停止にまで発展しつつあります。
その上で世界中の長期金利が一斉に上昇しています。トランプ関税に大きく揺れた4~5月の相場から、市場の関心は米国の財政赤字問題に移ってきたようです。
米国の20年国債の入札不調、超長期金利の急上昇を受けて、日本やドイツでも長期金利が急騰しています。英国の消費者物価指数は再び跳ね上がっており、世界中のあらゆるところから不安の芽が噴き出しています。
大手テック企業による生成AIへの大規模投資は継続するようです。半導体関連株の戻りも顕著ですが、企業収益の好調さだけで支えられるのかどうか、その点が問われる状況となりつつあります。
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先週の日経平均の値動きです。
・5月19日(月):37,160円(+175円)
・5月20日(火):36,985円(▲313円)
・5月21日(水):37,298円(▲231円)
・5月22日(木):37,529円(+31円)
・5月23日(金):37,498円(▲255円)
先週はムーディーズによる米国債の最上位からの格下げで始まり、EUへの50%関税で終わりました。
4月9日の相互関税の90日間停止と、5月中旬の米英、米中との関税引き下げ合意に至った楽観的な時間は過ぎさったように感じらます。
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5月16日にムーディーズは米国の長期信用格付けを、それまでの最上位の「Aaa(トリプルA)」から「Aa1(ダブルBプラス)」に引き下げました。財政悪化懸念がその理由です。
その直後、米議会下院はトランプ減税の延長を含む大型法案を可決しました。難関とされている上院での審議がこのあとに待っていますが、仮にこの減税法案が成立すると米国の政府債務は向こう10年間で3.1兆ドル(450兆円)膨らむと試算されています。
マーケットの内外で法案による財政赤字の水準は「持続的ではない」と懸念する声が聞かれます。IMFの元エコノミスト氏によれば「減税法案によって米国はトリプルBへの道を歩む」と予想しています。
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米国債の格下げに始まり、中国政府による米国債の保有圧縮(債券売り)、20年国債入札の不調、そして減税法案による財政不安の高まりによって、米国の債券市場が不安定になっています。週末は米30年国債利回りが5.08%まで上昇しました。
トランプ大統領はウォルマートに対して「関税を理由に値上げをするべきではない」と圧力をかけアップルにも米国内での生産を強いています。「MAGA」を標榜するトランプ政権のアメリカから資金逃避が徐々に強まっている様子もうかがえます。
その分、ビットコインが上昇力を強めています。無政府通貨の象徴である暗号資産に資金が流れ、ビットコインは5月21日(水)に10.9万ドル台に達して1月半ば以来、4か月ぶりに最高値を更新しました。
米国の上院は決済用ステーブルコインを規制法案の審議に入ることを決めたことも支援材料とされています。成立すれば米国の州政府が準備金としてビットコインを積み増し、ステーブルコインが普及しやすくなるとも見られています。
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日本では先週、米国との間で財務相会談、および通商交渉に注目する動きが強まりました。
英国と中国が先に相互関税の引き下げを妥結しただけに、そのあとに日本もなにがしかの譲歩を引き出すことができるとの期待もありましたが、結果としては先週に関しては大きな前進はなかったようです。
特に注目されたのは加藤財務相とベッセント財務長官との会談です。焦点となっているのは、果たして「第2プラザ合意」はあるのか、の1点と見られます。
加藤財務相氏は会談後の記者会見で「為替に関する議論はしていない」と述べました。それでも市場では依然として通貨調整の観測がくすぶっています。
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赤沢経済・再生相の関税交渉も目立った進展はありませんが、それに代わって週末の大きなニュースとしては、日本製鉄のUSスチール買収をトランプ大統領が承認するという報が伝わってきました。
トランプ大統領はSNSへの投稿で、日本製鉄によるUSスチール買収で安全保障上の懸念はないと判断したようで、7万人の雇用と140億ドル(2兆円)の経済効果をもたらす」と述べています。
EUへの50%関税という新たな懸念材料も浮上しており、単純にプラス効果ばかりとは言えないものの、週明けの市場に新たな期待を寄せることのできる材料となりそうです。
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先週の東京株式市場は、TOPIXが6週ぶりに反落しました。ただし週間の下落率は▲0.18%にとどまり非常に小さな水準に収まっています。
規模別指数でも、大型株指数が▲0.21%に対して、小型株指数も▲0.40%と小さな下げ幅にとどまりました。東証グロース250指数(旧マザーズ指数)も4週ぶりに反落しています。
スタイル別で目立っているのは、小型バリュー株のプラス(+0.21%)です。それに対して小型グロース株は▲1.03%と少し大きめの下げとなりました。金利上昇が影響しているとも見られます。
東証プライム市場の騰落レシオは、5月19日(月)に146.28%まで上昇した後、週末は125.65%で終わりました。上昇銘柄の拡大は一服しつつあるように見えます。日経平均のサイコロジカルラインは「6」の中立状態です。
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TOPIX-17業種の騰落では、値上がりセクターは5業種、値下がりセクターは12業種に広がりました。
値上がり業種のトップは「医薬品」でした。前週にトランプ大統領が高騰する米国の薬価引き下げに言及して製薬会社の株価が急落しましたが、その反動高が見られました。
武田薬品工業(4502)、第一三共(4568)、アステラス製薬(4503)、塩野義製薬(4507)などの代表的な薬品株がそろって上昇しました。東和薬品(4553)、参天製薬(4536)もしっかりしています。
値上がりセクターの第2位が「銀行」でした。日本でも長期金利の上昇が顕著となっており、地銀株の上昇が目立ちました。
りそなホールディングス(8308)を筆頭に、
(後略)
