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2025年9月9日

自動車関税が15%で正式に決着、日経平均は43,000円台を回復

鈴木一之

鈴木一之です。9月になったとたんに日本列島にはさっそく台風15号が接近して太平洋沿岸の各地域に大雨をもたらしました。

米国では8月の雇用統計が発表され、非農業部門雇用者数は+2.2万人と予想を下回りました。10年国債金利は4.0%台へと大きく低下して、株価は下落しています。ここから1週間、FOMCの思惑と金利の行方が焦点となります。

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先週の日経平均の値動きです。

・9月1日(月):42,188円(▲530円)
・9月2日(火):42,310円(+122円)
・9月3日(水):41,938円(▲372円)
・9月4日(木):42,580円(+642円)
・9月5日(金):43,018円(+438円)

「9月相場は荒れる」というのがマーケットの定説です。1896年の算出開始以来、NYダウ工業株の月別騰落率は9月が▲1.1%で、他の月よりも突出して悪い結果を残しています。それだけに先週は警戒心の強いスタートとなりました。

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それでも週後半にかけて上昇が強まり、日経平均は週間では+300円の小幅続伸で引けました。週足の終値で43,000円の大台を回復しています。

世界史的なレベルでの大きなニュースが相次いだ1週間でしたが、それらはいずれもマーケットにはさほど影響を与えておりません。

最も影響したのはやはりトランプ関税に関する話題です。

トランプ大統領は9月4日(木)に日本との間の貿易協定に合意する大統領令に署名しました。これによって自動車関税は正式に現在の25%から12.5%に下がることになり、元の税率である2.5%と足し合わせて15%と決まりました。

7月22日の決定から1か月半かかりました。この間、本当に15%になるのかとやきもきさせられていましたが、これで本決まりです。このニュースを受けて9月5日(金)の東京株式市場ではトヨタ自動車(7203)が2.0%上昇し、ホンダ(7267)、スバル(7270)、マツダ(7261)が年初来高値を更新しました。

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合わせてEUと同様に日本に対しても、相互関税の軽減措置が適用されることとなりました。すでに存在する税率と合わせて上限が15%となります。

日本で製造されたジェネリック医薬品、日本製の航空機、航空機部品、鉄・アルミ、銅の関税率も将来的にゼロにする方針も決まりました。

その見返りとして、日本から米国への5500億ドル(80兆円)の投資も正式に決定されました。投資先は米国政府が立ち上げる「投資委員会」が選定し、その中からトランプ大統領が選びます。

日本はその案件には投資しないという判断もできるようですが、米国との事前協議が必要です。その場合、米国が日本への関税を再び引き上げることもできます。

農産物の日本の輸入拡大としては、現行77万トンのコメのミニマムアクセスは温存されます。その枠内で米国産のコメの輸入枠を75%増加させることになります。

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日本としては現状ではほぼ満点に近い合意内容です。もともとこの線で合意されていましたが、正式な合意文書もなく大統領令の発令も遅れていました。それが特に自動車セクターを中心に株価の上値を重くしていたようなところがありましたが、ひとまずこの一件は正式に着地点を見たことになります。

完成車メーカーの株価はもちろんですが、先行して動き出していた自動車部品株では、アイシン(7259)の上場来高値更新を筆頭に、トヨタ紡織(3116)、東海理化(6995)、豊田合成(7282)、NOK(7240)、カヤバ(7241)、大同メタル工業(7245)などが一斉に上昇しました。

自動車に関連するタイヤのブリヂストン(5108)、TOYOTIRE(5105)、ガラスのAGC(52001)、鋼材の日本製鉄(5401)、JFEホールディングス(5411)、神戸製鋼所(5406)、化学の三井化学(4183)、三菱ケミカル(4188)、住友化学(4005)が一斉に上昇しています。産業界における自動車産業のすそ野は広い、と痛感させられます。

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そのトランプ関税ですが、首都ワシントンの連邦巡回区控訴裁判所は相互関税と、中国・カナダ・メキシコに対して課しているフェンタニル関税は大統領の権限を逸脱しており違憲であるとの判断を判示しました。8月29日のことです。

違憲との判決が確定すれば、関税からの歳入が失われ、すでに徴収した関税を返還する必要があります。財政赤字の拡大に弾みがつき、ドルへの信認が揺らいでドル売り、長期金利の上昇が再開されかねません。トランプ大統領は最高裁で争う意向です。

それとともにFRB・クック理事の解任問題に関する訴訟も同時に進行しています。金融政策と財政政策の両面でトランプ政権は訴訟を抱えるという状況に置かれています。

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米国の外では9月3日、中国の習近平国家主席、ロシアのプーチン大統領、北朝鮮の金正恩総書記が天安門で一堂に会し、抗日戦争勝利80年記念式典が挙行されました。

この3人がそろって1枚の写真に収まるのは初めてのことです。後の世から振り返ると、現代史の大きな転換がここから始まったと指摘できるのではないかと、思わず考え込んでしまうような出来事です。

そこで3人が話し合った内容は、人間の寿命について。習近平氏が今世紀中には150歳まで生きられると語ったそうです。他愛もない茶飲み話なら平和でなによりなのですが、全体主義国家のトップ3人だけに発言の重みが違います。健康寿命がますます重要な意味を持つこととなりそうです。

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先週の東京株式市場は、TOPIXが3週ぶりに反発しました。上昇率は+0.98%とまずまずの大きさで、前週の▲0.83%から切り返しました。

中・小型株への物色意欲は依然として根強く、JPX日経中小型株指数は9週連続で上昇しました。

規模別指数では、大型株指数は+0.82%で3週ぶりの反発です。前の週に12週ぶりマイナスとなった中型株指数も+1.32%と早くも反発しました。小型株指数も+1.18%と反発し史上最高値を更新しています。

東証グロース250指数(旧マザーズ指数)は3週連続の下落でした。IPOから10か月で上場廃止となったオルツ(260A)の粉飾決算の影響が尾を引いているように見えます。

スタイル別では、引き続きバリュー株が堅調です。大型バリュー株は+1.52%の反発。小型バリュー株も+1.72%と反発しています。大型グロース株も反発していますが、上昇率は+0.34%にとどまりました。小型グロース株も+0.60%の反発どまりです。

東証プライム市場の騰落レシオは週末値で132.55%となりました。過熱圏とされる120%ラインを31日間連続して超えています。

最近の傾向として、日経平均が値上がりした日の上昇銘柄の数はさほど増えず、反対に日経平均が値下がりした日でも下落銘柄の数は増えません。結果として騰落レシオは下がりにくい状況が続いています。

日経平均のサイコロジカルラインも、ほぼ中立の「7」にとどまっています。

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TOPIX-17業種の騰落では14業種が値上がりし、3業種が値下がりしました。前の週のちょうど反対です。

値上がりセクターは「医薬品」、「鉄鋼・非鉄」、「商社・卸売」でした。値上がりセクターは前の週とさほど変わりません。相場全体が上がろうと下がろうと、物色される銘柄は同じです。

値上がり第1位の「医薬品」は、武田薬品工業(4502)、アステラス製薬(4503)、エーザイ(4523)、塩野義製薬(4507)、大塚HD(4578)が軒並み大きく上昇しました。

エーザイに関しては、アルツハイマー型認知症治療薬「レカネマブ」に関して、米国のFDAが皮下注射による投与を承認しました。これによって週1回の皮下注射による投与が可能となります。

塩野義はFRONTEO(2158)と組んで、AIとの会話によって認知機能の状態を判定できるスマホアプリを開発したことが好感されています。住友ファーマはアナリストの投資判断の引き上げが手がかりです。

個々の製薬メーカーにそれぞれ材料がついていますが、基本的に循環物色の一環が先週は医薬品だったという見方もできます。

値上がりセクターの第2位は「鉄鋼・非鉄」です。引き続きデータセンター関連銘柄のフジクラ(5803)が買われ上場来高値を連日で更新しました。住友電工(5802)も堅調です。

それら光ファイバー関連株とともに、前週に続いて旧来からの非鉄精錬株が物色されています。

JX金属(5016)、三井金属(5706)が銅箔の増産をきっかけに上昇を続けており、金価格の最高値更新に連動して住友金属鉱山(5713)、三菱マテリアル(5711)もにぎわっています。日軽金HD(5703)、UACJ(5741)のアルミ精錬も堅調です。

前述のように鉄鋼株も広範囲に買われています。

値上がりセクターの第3位は「商社・卸売」です。これも前週と同様に三井物産(8031)、三菱商事(8058)、伊藤忠(8001)、住友商事(8053)、丸紅(8002)など大手商社が一斉に上昇しました。

さらに双日(2768)、リョーサン菱洋HD(167A)、丸文(7537)、長瀬産業(8012)、稲畑産業(8098)など専門商社も含めて商社株が一貫して上昇しています。

非鉄、鉄鋼と並んでインフレ局面に強い商社が連日の高値追いとなっていることからも、世の中はインフレ加速への懸念を一段と強めていることがうかがえます。

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一方で、値下がりセクターの上位は「機械」、「情報通信・サービス」、「電機・精密」でした。半導体を中心につい先日まで人気の的だった生成AI関連株が総じて一服となりました。

値下がりセクターの第1位は「機械」です。ディスコ(6146)、オークマ(6103)、タツモ(6266)が軟調で、三菱重工(7011)もさえない展開です。

それでもダイフク(6383)、ナブテスコ(6268)、三菱化工機(6331)、日立建機(6305)は個別で堅調な動きが見られました。

値下がりセクターの第2位は「情報通信・サービス」です。ここでもソフトバンクグループ(9984)の調整入りとともに、オービック(4684)、SHIFT(3697)、フィックスターズ(3687)などこれまでの活躍銘柄が一服しています。

値下がりセクターの第3位は「電機・精密」です。不適切会計が発覚したニデック(6594)が

(後略)

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