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2022年3月14日
ウクライナ戦争の勃発から18日目、打開策は見つからず、原油上昇は一服
◎日経平均(11日大引):25,162.78(▲527.62、▲2.05%)
◎NYダウ(11日終値):32,944.19(▲229.88、▲0.69%)
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鈴木一之です。2月24日(木)にロシアがウクライナに軍事侵攻を開始しました。民間施設までが砲撃され一般人にも被害が広がっています。ウクライナに一刻も早い平和が訪れることを願ってやみません。
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3月13日(日)でロシアのウクライナに対する軍事侵攻から18日間が経過しました。先週末はトルコ政府の仲介によって、両国間の外相会談が初めて開かれましたが、両者の主張の隔たりは大きく事態を打開するには至りませんでした。
再三にわたって原子力発電所を含めた核施設が攻撃対象となっています。こうしている間にもロシア軍は首都・キエフに大軍を進めており、首都攻撃が間近に迫っていると盛んに伝えられています。
10日前の3月4日(金)、ロシア軍はウクライナ南部にある欧州最大のザポリージャ原子力発電所を攻撃しました。幸いにして被害は訓練棟の火災だけにとどまりましたが、やってはならない暴挙です。
この日から米国、欧州、日本の株式市場は休日をはさんで4日にわたり大きく下げ続け、東京株式市場は3月10日(木)にようやく下げ止まりました。4日間の下落で日経平均は▲1800円近く下げています。
これによって原油をはじめ、あらゆる一次産品価格が急上昇しています。中でも原油はロシアの主要産出物であるだけに、3月7日(月)に北海ブレント先物で140ドル近くまで急伸しました。2008年7月以来、13年8か月ぶりの高値です。欧米諸国が経済制裁としてロシアからの原油の輸入禁止を検討していると伝わったためです。
ブリンケン国務長官は「ヨーロッパの同盟国と協調してロシアから原油輸入禁止を協議する」とテレビのインタビューで答えました。ロシアは西側諸国に対して500万バレル/日の石油製品を輸出しています。これは世界需要の5%にものぼり、そのほとんどが欧州向けです。
市場ではそれまで、経済制裁が発動されたとしても100万バレル程度で済む、という見方が大半でした。これほど厳しい禁輸措置になるとは予想していなかったために、原油をはじめ金属や食品、石油製品などあらゆる一次産品価格が急騰しています。
3月8日(火)にバイデン大統領より正式にロシアの原油、天然ガス、石炭、および関連製品の全面的な輸入禁止、即日実施が決定されました。最初に米国が単独で禁輸を行い、影響の大きい英国は年末までにその動きに追随する予定です。
日本の外務省は3月7日、ロシア全土の危険情報を4段階で2番目に厳しい「レベル3」に引き上げました。事実上の「渡航中止勧告」です。すでに民間の航空会社は、ロシアに向かう定期便を相次いで運航停止としています。日本国としても正式にロシアに対する厳しい措置を講じたことになります。
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こうしている間もウクライナでは、西部や北部の地域では軍事施設だけでなく、市街地にも激しい攻撃が加えられています。都市部のライフラインはすべて止まり、食料も底をついたと伝えられます。国境を越えて隣国に逃れるウクライナ人の数が200万人を超えました。欧州各国はすべての人々を受け入れています。
3月9日(水)、南部の主要都市マリウポリで産科病院が空爆によって破壊された映像が世界中のメディアに流れました。建物の壁や窓が粉々になり、がれきが散乱しています。戦争とはこれほど悲惨なものかとあらためて痛感されますが、たとえ戦闘行為とは言えやってはいけないことがあるはずです。
ロシアによってクラスター爆弾や生物化学兵器の使用までが疑われており、今回のウクライナ戦争がこの一件がきっかけとなって大きな転機を迎える可能性があるように思います。
民間企業は相次いでロシアでの事業停止・縮小を発表しています。米国のクレジットカード大手のビザとマスターカードは3月5日、ロシアでの業務を停止するとを発表しました。キャッシュレス比率が7割というロシアの庶民生活が直撃されることになります。
3月8日には米国のマクドナルドが、ロシアでのすべての店舗850店を一時的に閉鎖することを明らかにしました。日本では3月10日(木)、これまでは政治的な配慮には一切距離を置いてきたファーストリテイリングが、ロシアの「ユニクロ」50店の営業活動の一時停止を発表しました。
日立はロシアで建設機械を展開していますが活動を停止します。セイコーエプソンはロシア向け輸出を停止し、近鉄エクスプレスもロシアへの貨物引き受けを全面的に停止しました。
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ロシアによる常識を逸脱した行為に対して、西側社会がそれを止める手だてがほとんどない事実が突き付けられています。それに対してドイツを筆頭に、NATO加盟国、欧州諸国、そして日本も含めた西側のあらゆる国の安全保障に関わる政策、エネルギー安保戦略が大きく変わらざるを得ないことがはっきりしたことは確かです。
少なくともドイツは今回の事件をきっかけに、国家予算に占める防衛軍事費の割合をGDP比1%から2%強へ倍増させました。これまで禁じていた臨戦状態にある他国への武器供与を解禁し、ロシアと直結していた天然ガスのパイプラインを凍結して、ドイツとしては初めてLNG備蓄基地を建設する、エネルギー政策の歴史的な転換を矢継ぎ早やに打ち出しています。
コロナウイルスの感染拡大、パンデミックによって、社会のデジタル化が2年から5年、前倒しされたのと同じように、ウクライナ戦争は私たちの社会の在り方のどこか根本部分を早急に変更させる力を持っています。
米国をはじめ欧州各国は、これまでロシアへの経済制裁に関して、厳しい姿勢を打ち出しているようでも、燃料価格の高騰につながりかねないという理由からエネルギー産業への制裁は対象から外していました。
とりわけバイデン大統領および民主党は、中間選挙を控えて歴史的なインフレに手を焼いています。それゆえエネルギー分野への制裁に関しては米国の消極姿勢が目立っていました。それがロシアによるウクライナへの攻撃が強硬さを増している状況から、厳しい追加的な経済制裁に踏み切ることとなったのです。
民間航空機はロシア上空を飛べなくなり、懐かしい北回り、南回りの迂回ルートが復活します。燃料コストとフライト時間はこの先ずっとこれまでよりも3割増しとなり、国空運賃は2倍になると言われます。燃料補給の中継地としてのアンカレッジや中東諸国の重要性も増すことでしょう。北欧産のサーモンやカニは入手しづらくなります。回転寿司チェーンのくら寿司(2695)、FOOD&LIFE(3563)の株価が軟調です。
実際に物価の上昇は始まっています。農林水産省は4月から製粉会社に売り渡す小麦価格を10月に比べて平均で+17.3%引き上げると発表しました。トンあたり7万2530円となり、これまでの最高値だった2008年10月の7万6030円に迫ることとなります。
日本では食用の小麦は9割を海外から輸入しています。政府が輸入して民間企業に売り渡し、価格は4月と10月の年2回見直されます。今回の値上げによって、小麦粉を原料とするパン、パスタ、うどんなどの食材価格の値上げは必至の情勢です。「丸亀製麵」をチェーン展開するトリドールHD(3397)の株価は2月の高値から2割も急落しました。
3月10日(木)に日銀から発表された2月の企業物価指数は、前年比+9.3%の上昇を記録しました。伸び率としては、第2次オイルショックの直後、1980年12月の+10.4%以来、41年ぶりの高い伸びとなりました。企業は値上げを避けるためにコスト削減で吸収してきましたが、そろそろそれも限界に来ていると見られます。企業からの価格引き上げにつながってゆくことになりそうです。
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民間企業がロシアでの事業活動を停止すると、それは売上げの減少に直結します。ロシア向け売上げ比率の多寡にもよりますが、企業収益の伸びは確実に鈍ることになります。
そこに物価の上昇が重なってきます。米国では賃上げが物価にストレートに反映するために、そのような傾向がより鮮明となっています。3月10日(木)に発表された2月の消費者物価指数は、前年比+7.9%となりました。1月の+7.5%を上回って、こちらも40年ぶりの高い伸びとなっています。ガソリン価格の急騰や家賃の上昇が影響しています。
ウクライナへの軍事侵攻の前から物価の上昇基調は鮮明でしたが、それが戦争開始とともに一段と強まっています。インフレと景気の低迷が共存する「スタグフレーション」がいよいよ現実味を帯びています。すでにもうその状況に陥っているのかもしれません。
3月11日(金)、G7は共同声明を発表し、ロシアに対するの経済制裁をさらに強化する方針を打ち出しました。ロシアからの輸入品に対して関税を引き上げ、宝石や自動車など高額品のロシアへの輸出も禁じられることとなります。バイデン大統領は同じ日、ロシアへの最恵国待遇の取り消しを決定しました。
関税が引き上げられると、ロシアも対抗して関税を引き上げてくる可能性があります。プーチン大統領は対抗措置として、ロシアで活動する企業の対外資産の凍結、接収も考えているようで、企業としては減損処理、特別損失の計上を迫られる可能性が高まります。
同時に先週は円安もじわじわと進行しています。3月11日(金)には一時117円台までの円安・ドル高となりました。2017年1月以来、5年2か月ぶりの円安です。米国の金利上昇懸念と、日本の経常赤字の進行が要因と見られます。
円安で企業は海外売上げの円評価額は増えますが、それと同時に輸入コストも上昇することになります。この点が企業業績にどこまで影響するのか、ここからの決算発表が非常に重要になってきます。
日本では先週末から1月決算(4月、7月、10月も)企業の決算発表がヤマ場を迎えています。週明けもそれが続きます。果たしてこのような状況で企業経営者はどのような判断、決断を下すのか、企業努力で対処できる点を超えているのは理解した上で、その点を注視してゆかなくてはなりません。
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先週の東京株式市場は、TOPIXが4週連続で下落しました。下落率は▲2.46%に拡大し、週間としては今年4度目の▲2%超の下げとなっています。
大型バリュー株は比較的しっかりしていますが、グロース株が全体に軟調でした。下げ止まったかに見えたマザーズ市場も再び大きく下落しています。下げ幅は▲7.53%に広がりました。
日経平均のサイコロジカルラインは「5」の状態に踏みとどまっています。広範囲な銘柄が下落する局面が続いたため、高止まりしていた騰落レシオは、それまでの100%前後から81%台まで低下しました。2021年12月22日以来の低水準となっています。
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TOPIX-17業種のセクター別の騰落は、値上がりセクターは「商社、卸売」の1業種にとどまりました。比較的下げの小さかったセクターでは「銀行」、「エネルギー資源」が続いています。
三菱商事(8058)、住友商事(8053)、丸紅(8002)などの総合商社と、INPEX(1605)、
(後略)