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2021年6月6日
ワクチン接種が日本でも進む、日経平均に先駆けてTOPIXが5月高値を更新
◎日経平均(4日大引):28,941.52(▲116.59、▲0.40%)
◎NYダウ(4日終値):34,756.39(+179.35、+0.51%)
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鈴木一之です。株式市場は日を追うごとに上昇の勢いを増しつつあります。
日経平均で示されるマーケットの雰囲気と、個々の銘柄の波動とは前の週よりも一段と開きが出てきたように感じられます。日経平均では把握しきれない動きが生じています。
今週のマーケットで話題を集めたのは、TOPIXが5月の高値を抜いたことです。GW明けに日経平均が5/11~5/13の3日間で▲2000円強も下落したことは記憶に新しいところです。
世界中で物価の上昇を警戒する動きが強まっており、FRBのテーパリングがいつ始まるのか、市場参加者の関心はその一点に集中していました。それが今週は張本人の日経平均がもたついている間隙を突いて、TOPIXが一足先にそれ以前の水準に早々と戻したのです。
日本でもコロナウイルスのワクチン接種が軌道に乗り始めました。そこからいわゆる「ワクチン相場」、経済再開への期待が急速に広がりつつあります。
65歳以上の高齢者の方から始まったワクチン接種ですが、1回目の接種を終えた人の数は4月末の時点で医療従事者を除いて32.4万人でした。日本の総人口に占める割合は0.26%です。
そこから半月経った5月14日に初めて100万人の大台を超え(総人口比で0.84%)、さらに5月20日には200万人に乗せました(1.73%)。1日あたりの接種回数は20万人前後で推移しました。
それが5月24日(月)に自衛隊が動員され東京・大阪で大規模接種センターでの接種が開始されると、1日あたりの接種回数が35万人から40万人に急増しました。その結果、5月26日に400万人に乗せ(3.19%)、5月29日には500万人(4.08%)、6月1日に600万人(4.96%)、6月3日に700万人(5.59%)とその数は加速しています。
地方自治体の中にはすでに高齢の方の接種すべてにめどをつけて、64歳以下の若い世代にも接種を開始するところも出ています。
日本のワクチン接種は当初は英米など海外諸国から遅れをとりましたが、態勢が整って方針が定められ、ひとたび軌道に乗り始めると一気に進みます。日本人の悪いところですが、方向が定まると弾みがつきます。
ワクチン接種は2回必要で、まだとても楽観できる状況ではありませんが、当初スケジュールを前倒しするようなペースで現在進められており、集団免疫の確立も視野に入ってきた感があります。
ワクチン相場。コロナ危機で株価が大きく下落した電鉄会社や航空会社、旅行代理店、カラオケ、外食、デパート、アパレル、スポーツジムなどの株価が一斉に急上昇しています。このような株価の動きそれ自体が、世の中全体に安心感を投げかけているように感じられます。
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さらにもうひとつ。株式市場で起きている重要な変化が、総論ではなく各論を重視する形にマーケットは変貌していることです。
TOPIX(あるいはJPX日経400)が直近の高値を更新するという、誰の目にも明らかとなった市場の変化は、いくつかの要因によってもたらされています。
TOPIXが高値を更新したひとつの要因が、トヨタ自動車(7203)が連日のように上場来高値を更新していることです。このことの持つ意味は果てしなく大きいと言えるでしょう。何点かに分けて記してみます。
(1)好決算。5月12日(水)、日経平均が3日間で▲2000円下落した、との渦中に発表されたトヨタの決算は、今2022年3月期に売上高が史上初めて30兆円に乗せるというものでした。営業利益は2兆7000億円の見通しにのぼり、期初の控えめな予想数字の段階で最高益を更新する前提となっています。
トヨタの株価を刺激する材料としては、決算発表と合わせて自社株買いの発表もありましたが、それとともに、それ以上に、やはり本業部分の自動車生産の拡大見通しが立ったことが最も好感されていると考えられます。
(2)脱炭素。言うまでもなく環境規制の強化、温暖化ガスの排出を抑えるための技術革新は、有無を言わせないほどの強制力で正真正銘のイノベーションを求めています。
その過酷な要求に応えられる自動車メーカーはごく少数でしかなく、その数少ない自動車メーカの株式に世界のESGマネーがとうとうと流れ込んでいる様子が見て取れます。
トヨタのほかにも先週はホンダ(7267)が堅調でした。海外ではフォルクスワーゲン、GM、フォードの株価が急上昇しています。マツダ(7261)、SUBARU(7270)も含めて、自動車業界が置かれている急激な市場環境の変化に対処できるメーカーが大きく上昇し始めています。
(3)外国人買い。マネー市場ではよく指摘されることですが、トヨタは自動車セクターには属さず、トヨタはそれ自体がひとつの業種を構成しています。トヨタとトヨタ以外の自動車関連株との間には明確な線が引かれています。
そのトヨタがここまで大きく動くということは、海外投資家の投資マネーが相当な規模で日本にも流れ込んでいると考えられます。
今週は自動車以外にも、食品セクターや不動産セクターなど、幅広い業種に物色意欲が広がりました。アサヒGHD(2502)や味の素(2802)など、本来であればディフェンシブ的な位置づけなので、今のように経済全体が底上げするような局面ではそれほど人気化しないのが普通です。
しかしそれが先週木曜日には、食品セクターが単日で日々の業種別騰落率の第1位に登場しました。あまり見られない光景です。
同じように不動産セクターも、コロナ危機でリモートワークが浸透して、都市部のオフィス街はオフィスの規模縮小が相次いでいるはずです。実際にそのような動きも強まっているのですが、一方で中古、新築ともにマンション販売は非常に堅調です。本来であれば不利な立場に置かれるはずの不動産セクターにも株価上の高値追いが目立つようになりました。
このほかにも、半導体セクターは抜群の強さを維持したまま、徐々に出遅れていた電子部品株にも物色が広がりつつあります。景気動向に最も敏感な機械セクターでも、DMG森精機(6141)やユニオンツール(6278)が年初来高値を更新しています。
要所に位置する銘柄が次々と物色され、高値更新に進んでおり、それが先週のマーケットで起こった最も重要な変化であると見ることができそうです。
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先週の株式市場の動きについて。
6月第1週の東京株式市場は、TOPIXが3週連続で上昇しました。2週続けての上昇は3月第1週~3週以来のことです。週間の上昇率はわずかに+0.60%にとどまりましたが、その前の週に+2.24%と大きく上昇しているので、値下がりしてもおかしくない状況でした。
規模別では引き続き大型株が優位を保つ週となりました。TOPIXコア30の上昇が最も目立ちました。大型バリュー株が優勢で、グロース株はさえない展開の週となりました。東証マザーズ指数は▲2.22%と3週ぶりに反落しています。東証REIT指数は3週連続で上昇しました。
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TOPIX-17業種のセクター別の騰落では、値上がりセクターが11業種で、値下がりセクターは6業種となりました。
値上がりセクターのトップは前の週と同じく「自動車・輸送機」です。先週もトヨタ自動車が連日のように上場来高値を更新し、圧倒的な存在感を示しました。
それに連動する形で、すでに記したようにホンダやマツダ、SUBARU、いすゞ自動車(7202)など他の自動車メーカーも堅調です。日産自動車(7201)や三菱自動車(7211)も上昇基調に入りつつあります。
完成車メーカーばかりでなく、自動車部品株にも物色が一段と広がっています。トヨタグループのデンソー(6902)、アイシン(7259)、トヨタ紡織(3116)、愛三工業(7283)、ジェイテクト(6473)に始まって、ギアの武蔵精密(7220)、クラッチのエクセディ(7278)、フレームのプレス工業(7246)、サスペンションのエフテック(7212)、シートのタチエス(7239)、ラジエーターのティラド(7236)などが一斉に上昇しています。
中にはすでにかなりの大幅高を演じている銘柄もありますが、それでも解散価値であるPBRはいまだに1倍を割り込んだままという銘柄も多く、割安感の修正が進んでいます。
値上がりセクターの第2位が「エネルギー資源」です。INPEX(1605)、ENEOS(5020)などの石油石炭から始まって、資源株が底堅さを増しています。
経済再開への期待が高まっているのは、日本よりもむしろ欧米諸国です。原油価格はWTI先物で70ドルの大台に接近してきました。
米国ではメモリアルデーの休日が明けて、ここから夏が始まるとされています。バカンスシーズンでただでさえガソリン需要が高まる状況にあり、そこに今年はワクチン接種を終えた人から旅行需要の拡大が加わります。
銅やニッケルなど金属資源の価格は再び下落しており、ビットコインショックはまだ引きずったままの状態にありますが、原油を中心として国際商品市況の動きからは目が離せません。
そして値上がりセクターの第3位は、前の週と同様に「運輸・物流」となりました。引き続きJR東日本(9020)、JR東海(9022)、東急(9005)などの鉄道株にワクチン相場への期待が広がっている模様です。
6月20日まで延長された緊急事態宣言の行方が気になりますが、今年の夏休みは旅行などの移動が少しは期待できるようなムードも生まれてきました。東京五輪・パラリンピックの
人々はとにかく移動することを渇望しています。鉄道セクターと一緒に旅行代理店の株価の上昇も顕著で、徐々にアフターコロナの動きが始まりつつあるように見られます。
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値上がり業種のチャート(日足、直近3か月)
「自動車・輸送機」
(後略)