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2021年5月31日

MSCIの銘柄入れ替えが終了、株式市場は週末にかけて大きく上昇に向かう

鈴木一之

◎日経平均(28日大引):29,149.41(+600.40、+2.10%)
◎NYダウ(28日終値):34,529.45(+64.81、+0.18%)

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鈴木一之です。アジサイが日に日に色鮮やかになってくると梅雨入りがすぐそこに迫ります。

雨模様の日には気温が急に下がったりして、朝夕は肌寒い日も増えてきます。コロナウイルスに備えると同時に、この季節はごく普通の風邪ひきにも気をつけなければなりません。

外出自粛を心がけているうちに、あっという間に5月も最終週を迎えました。緊急事態宣言が3週間延長されて、飲食店はいまだ苦境から抜け出せないままの状況です。

見るに忍びないとはまさにこのことですが、それでも東京と大阪では新規の感染者が徐々に減少の方向に向かっています。あとは観光地の北海道と沖縄が減少に向かえば、世の中はもう少し落ち着いてくることでしょう。

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このような世情を受けてか、今週の株式市場も不安定な状態が継続したままで推移しました。週半ばまでは意外にも日経平均が5連騰を達成しました。

5月第2週の「CPIショック」(米4月CPIが前年比+4.3%の上昇による金利上昇懸念)と、それに続く5月第3週の「ビットコイン・ショック」に直面しただけに、少し意外な感じもありましたが、トヨタ自動車(7203)や富士フイルムHD(4901)が連日のように上場来高値を更新していたので、個々の企業の価値を着実に評価する動きが続いていると見ていることも可能でした。

引き続き世界のマーケットは米国の「テーパリング」に関する話題でもちきりです。FRBがいつ、どのようなタイミングで資産買い入れを縮小するのか。その点が議論の的となっています。

5月第2週に起きた株価急落の原因「CPIショック」も、その背後にはテーパリングが前倒しされるのではないかとの不安が間違いなく横たわっています。

その議論がほぼ一巡して落ち着いてきたのが、今週の日経平均5日続伸の背景にあると見られます。ふと気がつけばロシアも中国も、ドイツも英国も株価が高い位置まで上昇しており、世界同時株高の様相を呈しつつあります。米国の株式市場も史上最高値まであとわずかのところに迫っています。

あいかわらず日本株は世界からの出遅れが目立っていました。ワクチン接種も悲しいほど世界から遅れを取っていただけに、それも仕方ないかなとなかば諦めていたところ、週末にかけてびっくりするほどの株価上昇が待っていました。

金曜日、日経平均は+600円の上昇を遂げて29,000円の大台を一気に回復しました。大型株が主導する形で広範囲に買われており、TOPIXやJPX日経400は5月前半の下落幅を完全に取り戻してしまいました。

上昇の要因としては次の3点が挙げられます。

(1)繰り返しになりますが、テーパリングの議論が一巡しつつあること
(2)米予算教書で6兆ドルの超大型予算案が提示されたこと
(3)MSCIの日本株の銘柄入れ替えが週末に完了したこと

とりわけ(2)の6兆ドル予算に関しては、バイデン政権が策定した初めての予算となります。これほどの歳出規模は当初予算としては戦後最大で、コロナ危機が発生する前の2019年度予算の4兆4000億ドルを3割も上回るかなり大きなものとなります。

この中に今後8年以上を費やして2兆ドルを投資する「米国雇用計画」のインフラ計画や、1.8兆ドルを予定している「米国家族計画」による育児・教育プログラムが含まれます。

それらが組み合わせられて、単年度で6兆ドルに達することとなりました。まさに民主党政権の「大きな政府」が実行に移される段階となりつつあります。

予算案は今のところは議会で議論されるたたき台に過ぎませんが、株式市場はこのプランを今後どこまで評価してゆくのか、インフレ懸念を再燃させることにならないのか、増税懸念にまたもやつながってゆくのか。あらゆる意味で大いに注目されるところです。

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金曜日の大幅反発を導いたもうひとつの要因が、MSCIの銘柄入れ替えの通過とされています。世界標準の株価指数として常に注目されるMSCIの「標準指数」から29銘柄もの日本株が一度に除外されると発表された後、実際に入れ替えが実施される5月27日(木)にかけて、当の除外銘柄には思惑的な売り物が継続しました。

アマダ(611)、名古屋鉄道(9048)、西武HD(9024)などがその対象です。軟調な銘柄もあれば、意外としっかりしていた銘柄もあります。総額で6000億円程度の売り要因になると見られており、入れ替え当日の5月27日(木)の大引けにかけて株価の動きが急に変化するとの不安が市場の一部を支配していました。

それが意外と無難に通過したことから、安心買いが戻ってきたために金曜日の大幅高につながったとの見方も強いようです。

いつものことながら株価指数にまつわる短期的な変動には株式市場は振り回されてしまいます。終わってみて初めてわかることですが、今回のMSCIの銘柄入れ替えに関しては、予想されていた以上にかなり意識していたということになります。

技術的、機械的な変動要因はこれで終了したわけで、そこから投資家の買い意欲が戻ってきました。5月相場で日経平均は苦しみましたが、月末にかけて29,000円の大台を取り戻したことは大きな朗報と言えるでしょう。

その上で今週から6月相場を迎えます。6月は「会社四季報・夏号」の発売も控えています。5月半ばに出そろった3月決算企業の決算の詳報がすべて反映されており、新たな銘柄の物色トレンドが生まれる公算が大きくなります。

また一時的に止まっていた新興市場のIPOも6月から再開されます。最近は新製品・新サービスの発表は、そのかなりのケースでスタートアップ企業が関連しています。テクノロジーの変化が加速しており、株式市場でもニューフェイスの出現を待望する機運が高まっているように感じられます

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先週の株式市場の動きについて。

5月第4週の東京株式市場は、TOPIXが続伸しました。2週続けての上昇は3月中旬以来のことです。上昇率は+2.24%に達し、その前の週の+1.13%と合わせるとそれなりに大きな上昇となりました。

規模別では圧倒的に大型株が優位の週となりました。次いで中型株に戻り歩調が鮮明となっており、反対に小型株指数はわずか+0.21%の上昇にとどまりました。

東証マザーズ指数も続伸しましたが+1.46%というものでした。バリュー株とグロース株は優劣つけがたく、ほぼ同じ程度の上昇です。東証REIT指数も小幅ながら2週連続で上昇しました。

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TOPIX-17業種のセクター騰落では、値上がりセクターが15業種と広範囲に広がり、値下がりセクターは2業種となりました。

値上がりセクターのトップは「自動車・輸送機」です。トヨタ自動車の連日の上場来高値更新に見られるように、久しぶりに完成車メーカーの値上がりが顕著となりました。

今週は米国のフォードが1日で+7%値上がりする日が見られました。フォルクスワーゲン、GMも堅調です。日本ではトヨタとともにホンダ(7267)、マツダ(7261)にも動きが生じています。

電動車時代がいよいよ本格的に幕を開けようとしています。これまでのエレクトロニクス企業一辺倒の物色の動向に広がりが出てきました。

値上がりセクターの第2位が「機械」です。ここでもDMG森精機(6141)のような、自動車セクター向けの工作機械メーカーの強さが目立ちます。住友重機械工業(6302)、IHI(7013)、三菱重工業(7011)のような風力発電、原子力発電関連の銘柄も動意づいています。

値上がりセクターの第3位は「運輸・物流」です。前の週までは海運セクターの堅調さばかりが目につきました。それが先週はJR東日本(9020)、JR東海(9022)などの鉄道株にも物色が広がってきました。

日本でもワクチン接種が本格的に広がりを見せています。地方自治体によっては高齢者の方の接種を早々と終えて、65歳未満の方への接種を前倒しで始めようというところも現れています。

ワクチン接種が進めば集団免疫も確立され、日常生活が戻ってくることになります。想像するに、真っ先に立ち上がるニーズは国内旅行と予想されます。

人々はとにかく移動することを渇望しています。鉄道セクターと一緒に旅行代理店の株価の上昇も顕著で、徐々にアフターコロナの動きが始まりつつあるように見られます。

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値上がり業種のチャート(日足、直近3か月)

「自動車・輸送機」

(後略)

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鈴木一之