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2021年10月11日

日経平均は9日ぶりの反発、岸田文雄総裁就任後では初めての上昇

鈴木一之

◎日経平均(8日大引):28,048.94(+370.73、+1.34%)
◎NYダウ(8日終値):34,746.25(▲8.69、▲0.02%)

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鈴木一之です。10月になりました。空を見上げるとうろこ雲が広がっています。なんとなく懐かしい気持ちに立ち返りますが、しかし気温はあいかわらず真夏のような暑さが続いています。

夏服や扇風機を片付けるタイミングに悩みます。不思議な世界になったものだとつくづく思います。

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先週から下落基調を強めていた株式市場は、今週になってようやく反発に転じました。日経平均は8日続落を記録し、28,000円を割り込むまで下落しました。連続安の記録としては12年ぶりのことです。

先週の時点における株式市場の関心は、大きく分けて3つです。(1)自民党総裁選後の新政権の政策、(2)中国・恒大グループのデフォルトリスク、(3)米国の金融政策(FOMC、テーパリング)、の3つです。

さらに直近ではさらにいくつかのネガティブ要因として、(4)米国政府の債務上限問題、(5)中国および世界経済の鈍化懸念、(6)資源価格の高騰、エネルギー危機のリスク、が加わりました。

これらの要因は数がたくさんあるように見えて、その多くが「コロナ危機」という地下茎でひとつにつながっています。表面に現れているどの要因に視点を合わせればよいのか、目が回るほどの変化、忙しすぎるほどの毎日です。

結果論になりますが、先週の株価反発の理由としては、この(4)米国政府の債務上限問題の好転が最もポジティブに作用したのではないかと思います。

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コロナ危機に関しては、ついこの間まで最大の懸念材料だったコロナウイルスによる感染拡大の危機的な状況は、驚くべきことに急速に鎮静化しつつあります。

日本国内の新規の感染者数はここ数日、1,000人を下回っています。第5波のピークは8月20日ごろで、その頃は1日に全国で25,000人強が新規の陽性者としてカウントされていました。それが今や東京都では10月9日(土)に82人の感染にとどまりました。

あまりに劇的な減少で、専門家の意見もなぜここまで減っているのかわからない、というあやふやなものに終始しています。それがコロナウイルスという感染症の不可解な部分です。感染の爆発的な拡大も、反対に収束も突然にやってきます。

8月末から9月にかけてのピーク時、日本は効果的なコロナ対策を何ひとつ打っていない、との批判が吹き荒れていました。それから事態が劇的に変わったわけではありません。しかし感染者数だけは劇的なまでの減少を示しています。

10月1日より緊急事態宣言は全国レベルで解除されました。4月4日以来のことです。飲食店をはじめ、百貨店、旅行・観光、コンサート、イベント、学校などは一斉に行動制限が緩和されていますが、しかし以前の姿には戻るには時間がかかりそうな雲行きです。

これから北半球は本格的な冬シーズンを迎えます。これまでとは違って、ウイルス流行の第6波は確実にやってくると各国はそれぞれ覚悟を固めている様子がうかがえます。総選挙を迎える日本でも、軽々しく「GOTOトラベル」のような補助金政策を復活されることは困難なように感じられます。経済再開との兼ね合いが非常にむずかしくなってきます。

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1か月半にわたり日本全体を巻き込んだ自民党総裁選は決着しました。9月29日(水)に自民党総裁選の投票が行われ、岸田文雄氏が新総裁に選ばれました。先週は臨時国会が召集され、新総理による所信表明演説が行われました。政権が正式にスタートした事実が強く印象づけられました。

所信表明演説では「成長と分配」が繰り返し強調されました。「新しい資本主義」、「新自由主義からの転換」もあらためて強調されましたが、実際にそれがどういう内容なのか、具体的にかみ砕いた説明は少なかったように感じます。

経済政策としては、財源に不安がつきまとうものの、総選挙後に数十兆円規模の経済対策を打ち出す方針のようです。

成長戦略としては「デジタル」、「グリーン」、「量子」、「バイオ」をずらりと並べ、民間企業の活力が活かされることになりそうです。すべては選挙後にかかってくることになります。私個人としては規制緩和策を何としても進めてほしいと願います。

新首相が表舞台に出た最初の仕事が、10月7日(木)夜に首都圏で発生した震度5弱の地震対策本部の設置というのが、政権の将来をなんとなく暗示しているような気がしないでもありません。

明日の週明けからは各党との代表質問が実施され、すぐに衆院は解散、そして総選挙に突入します。任期満了による4年ぶりの総選挙で、岸田内閣は長期政権の地盤を固めることができるのか、大きな分岐点に立っている日本の未来を託して、ここから年末にかけてきわめて重要な時期を迎えます。

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(3)米国の金融政策に関して、足元で長期金利の上昇に歯止めがかかりません。10年国債金利は1.61%まで上昇しました。

FOMC後の記者会見でパウエル議長は、物価上昇の長期化を初めて認めました。エネルギー価格の上昇が深刻化の度合いを強めており、実体経済にも徐々に影響が出ています。太平洋セメント(5233)は来年1月より、セメントの価格を+18%引き上げる方針を表明しました。3年7か月ぶりのことです。

中国・恒大グループのデフォルト問題がマーケットの底流にくすぶり続けています。先週は国慶節の長期休暇で中国市場がほとんど休場でした。開いていた香港市場が不安定な値動きを示すたびに、東京株式市場も大きく揺さぶられました。

中国政府の企業に対する姿勢は一段と厳しくなりつつあります。新たな規制強化を含めて、これらの問題とは当分の間、付き合ってゆくことが避けられないようです。

以前から指摘されていた米国の政府債務の上限問題は、先々週から急速に市場の圧迫要因として意識され始めていました。長期金利の上昇にも一役買っている可能性があります。

それが先週は現地木曜日に共和党が歩み寄り、債務上限を50兆円引き上げて、米国政府は12月3日までは新たに国債を発行できるようになりました。これによって米国政府のデフォルト懸念は2か月間は回避されることとなります。

バイデン政権は子育て支援やインフラ整備を盛り込んだ3兆5000億ドルの法案審議のための時間を稼ぐことができました。ただしこの法案に関しては、身内の民主党内にも対立が根強く残っているためまだ全面的な楽観はできません。

(5)中国および世界経済の鈍化懸念、に関しては、前の週の中国の製造業PMIの軟化を受けて、先週は米国ISMが発表する景況感指数が注目されました。これは製造業、非製造業ともに予想を覆しての安定した結果となりました。

9月のISM景況感指数・製造業は61.1(前月比+1.2)で2か月連続での上昇となりました。供給制約によって市場予想は59.5でした。また非製造業(サービス業)は61.9(+0.2)で2か月ぶりの上昇でした。こちらの低下するとの市場予想を上回りました。

よいニュースばかりではありません。週末に発表された9月の雇用統計では、非農業雇用者幅は+19万4000人にとどまりました。前月の+36万人、および市場予想の49万人を下回っています。失業率は4.8%となり、8月の5.2%から改善しました。コロナ危機後では初めて5%を下回りました。

ソニーとTSMCが熊本に半導体の新工場を建設することが大枠で固まりつつあります。ばら積み船の運賃が12年ぶりの高値まで上昇しました。これらを含めて週明け以降のマーケットの動きが非常に気になるところです。

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先週の東京株式市場は、TOPIXは3週続けて下落しました。続落記録としては今年初めてです。下落率は前の週の▲5%超からは縮小しましたが、それでも▲1.23%の値下がりとなってます。

規模別では大型株から小型株まで幅広く値下がりしました。中でもグロース株の下げが顕著となっています。東証マザーズ指数は4週連続で下げました。先行して下げたREITだけが上昇し、東証REIT指数は6週ぶりに反発しています。

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TOPIX-17業種のセクター別の騰落では、値上がりセクターが7業種、値下がりセクターが10業種となりました。依然として値下がりセクターが数の上では優勢ですが、値上がりする業種も徐々に広がっています。

値上がりトップは前週に続いて「エネルギー資源」です。かなり値動きが荒っぽくなっていますが、INPEX(1605)、

(後略)

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鈴木一之