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2023年1月24日

日銀・金融政策決定会合を通過、TOPIXは2週連続で上昇、銀行株は反落

鈴木一之

鈴木一之です。日本列島は記録的な寒波に包まれています。コロナウイルスも猛威を奮っています。体調にはくれぐれもお気をつけください。

今年は早い時期から気象庁による「厳冬」の予報が出ていました。それが的中して寒い冬が訪れています。心配されたエネルギー価格の高騰や、一昨年のような新電力会社の経営危機、大規模な停電リスクは今のところ発生しておりません。

前もって「厳しい冬の訪れ」がアナウンスされて、対策が徹底されたことが功を奏して危機的な状況は回避されています。こういうところで事前予報の重要さをあらためて認識させられます。

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今週の株式市場はどれほど多くの材料を消化したことでしょうか。次々と降りかかってくる難問をひとつずつ吸収して、日経平均とTOPIXは2週連続の上昇を達成しました。大発会で日経平均が一時▲400円も値下がりしたことが嘘のようです。

これまでのところ大発会で記録したザラ場安、・日経平均では25,661円が年明け以降の最安値です。その後は値戻しを続けています。

日銀の金融政策決定会合が火曜日、水曜日に開催されました。結果は「現状維持」でした。「大山鳴動してねずみ一匹」と言われますが、それと似たようなことがマーケット上で起こり、週後半には早くも堅調な動きに戻ってきました。

「政策変更なし」は予想どおりと言えばそれまでですが、終わってみれば先週までの(今週初めまでの)あの騒ぎは何だったのだろう、と思えてしまうほどの神経質な状態が続いていました。

1か月前に起きた12月会合での「日銀ショック」が、それだけ激しいショックを市場に投げかけたということです。日銀の決定次第ではマーケットの乱高下が再び起こりかねない状況だったことも事実です。

昨年12月20日の前回の会合において、突然としてイールドカーブコントロールの誘導目標が拡大されました。これによって日本のみならず、世界の市場に少なからぬ驚きが走りました。

その日から日本では株式、債券、為替(ドル)の売り圧力が強まり、年明けもそれらのショートポジションは継続されていたと見られます。

それが水曜日の昼休みに「現状維持」と発表された直後から、ショートポジションが一斉に解消され、水曜日午後のわずかな時間で株式、債券、為替(ドル)が一斉に急上昇するという結果となりました。

そのような短期的なアンワインドの動きが収まると、あとは静かに元のマーケットの状態に戻り、経済統計や企業業績の行方に再び関心が向かっていきました。

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それでも日銀は、今回の会合で何の変更も行わなかったわけではありません。3か月に一度発表される「展望リポート」では、今年度の物価見通しを従来の2.9%から3.0%に引き上げています。これは次回の決定会合(3月9~10日)における政策変更の布石と見られています。

また金利操作に関しても、新たに「共通担保資金供給オペ」が追加されました。

日銀の行う金融調節には伝統的な「公開市場操作」があります。今回の措置はその一種です。金融機関に対して国債や社債を担保に資金を貸し出す際に、これまでは最長で2年という期間の縛りを設けていましたが、その期間が従来よりも長期化されました。

金融機関はそうして調達した資金を国債の購入に振り向ける、と日銀は見ている模様です。これで年限の異なる債券利回りのゆがみの是正が行われやすくなります。

これらの措置には、市場にいまだ根強く残る日銀の政策変更の可能性、言い換えれば債券市場での空売り圧力に対して、今後も徹底して戦ってゆくという、日銀の強いスタンスが見てとれます。投機筋からの日本国債売りの圧力は弱まるのか、あるいは日銀が敗北を喫するのか、本当の正念場はこれから先に待ち構えていることになりそうです。

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日銀の金融調節ばかりに気をとられていましたが、マーケットを取り巻く状況ははっきりと変化しつつあるようです。

米国市場はインフレ、および政策金利のピークアウト感と、リセッション入りとの間で揺れています。

祝日明けの火曜日に米国では株価が急落しました。ゴールドマンサックスが発表した2022年12月期の決算が、純利益で前年比▲48%まで減少したことが嫌気されたのが原因です。企業業績の先行きに対する警戒心が強まりました。

折しもマイクロソフトが1万人を超える大規模な人員削減を計画しているとのニュースが伝わって、先週までの「経済にとって悪いニュースは、マーケットにとってよいニュース」という楽観的な見方が息切れしつつあるようにも見られました。

実際に1月18日(水)に発表された12月の米国の小売売上高は、前月比▲1.1%と2か月連続で減少しました。これが判明すると株価は経済の悪化を好感するのではなく、反対にそれを嫌気して株価の下落要因となりました。インフレの影響で年末商戦が伸び悩んだことが影響しています。

同じ日にFRBのベージュブック(地区連銀経済報告)が発表され、米国経済は「横ばいだった」と総括されたことも株価の下落要因につながりました。年明け以降の流れであれば、ベージュブックの悪化は利上げのピークアウトにつながるものとして、株価の上昇要因と考えられてもよいのですが、今回はそうはなりませんでした。

ブレイナード副議長は1月19日のシカゴ大学での講演で、最近のインフレ率の低下でも金融引き締めは続けるとの意向を示しています。市場に厳しいFRBのスタンスがあらためて強調されました。

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その一方で市場には弱気ばかりでなく、強気の見方も徐々に増えている模様です。中国の経済再開に対する期待がその最大の根拠となっています。

1月8日に中国政府は突如として「ゼロコロナ政策」を全面解除しました。これによって中国での企業の生産活動と個人の消費活動は、ほぼ全面的に回復するとの期待が高まっています。

当面は1月22日から始まる春節の動向が重要です。3年ぶりに行動規制のない旧正月を迎え、中国国内では早くも人々の大移動が始まっています。タイ、ベトナム、マレーシアなど周辺国の観光産業も大きな期待を寄せています。

日本では中国からの入国に対する水際対策を強化しており、それに対して中国も日本・韓国への短期ビザの発給を停止するなど、ギクシャクした側面が残ります。それでも中国以外の国から日本を訪れる外国人の人々の数は目に見えて増加しています。

観光庁が発表した昨年12月の訪日外国人観光客は137万人に達しました。2020年2月以来の100万人の大台突破です。コロナ前の2019年12月と比べると54%の水準まで戻っています。韓国が45.6万人と最も多く、中国からはいまだ3.3万人にとどまっていますが、今がボトム付近であることは間違いないようです。ここから増えてゆくことを期待したいものです。

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先週の東京株式市場は、TOPIXが2週連続で上昇しました。続伸は昨年11月以来のことです。週間の上昇率は+1.25%で、前週の+1.46%に続いてまずまずの上昇です。TOPIXやJPX日経400など、大型株が中心の株価指数は、チャート上で「逆三尊」の底入れパターンを描きつつあります。東証マザーズ指数も続伸しました。

先週はグロース株の強さが光りました。米国で長期金利の低下が顕著となり、バリュー株に対してグロース株優位の展開が戻ってきました。反対に東証REIT指数は3週連続の下落となっています。

テクニカル面では、騰落レシオは上昇を続け、週末には96.91%まで上昇しました。日経平均のサイコロジカルラインは「7」から「8」で高止まりしており、週明けの月曜日も上昇すると「9」まで高まることになります。

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TOPIX-17業種のセクター別騰落では、値下がりセクターは「銀行」と「金融(銀行除く)」の2業種だけです。それ以外の15業種が値上がりしました。

値下がりした「銀行」や「金融」は前の週まで人気が集中したセクターです。日銀の金融政策決定会合が通過したことで、当面の材料出尽くしから下落しました。

ただし下落といっても、大半の銀行株は先週までの余勢を借りて、月曜日に高値を取ったあとはそのまま横ばいで推移しているような状況です。3月初旬の次回の決定会合や黒田総裁の後継人事の行方、金融政策の変更そのものなど、銀行セクターに関する材料は豊富です。いつ新たな動きが始まってもよい位置につけていると見られます。

「金融(除く銀行)」も第一生命HD(8750)、野村HD(8604)、岩井コスモHD(8707)などにしっかりした株価の動きが見られます。

一方で値上がりセクターの上位には「エネルギー資源」、「不動産」、「運輸・物流」が登場しました。

エネルギー資源は2週連続で値上がり上位に入っています。中国の経済回復期待から原油や銅、アルミなどの素材市況が上昇を再開しています。

石油資源開発(1662)、出光興産(5019)、

(後略)

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鈴木一之