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2023年8月7日

本当のリスクは見えないところにひそむ、米国債格下げで下落

鈴木一之

鈴木一之です。8月になりました。高校野球も始まりました。今年は格別の暑さが続いていますが、夏も終盤戦に入りつつあるようです。

「中央銀行ウィーク」の翌週は世界中で株価が軟調に推移しました。きっかけのひとつが米国債の格下げです。まったく予想外のところから突然にやってきたバッドニュースですが、調整局面というのはそういうものです。

8月1日、格付期間のフィッチ・レーティングスが米国の格下げを発表しました。外貨建て長期債務の格付けをこれまでの「AAA」から1段階引き下げて「AA+」としたのです。3年後の財政悪化と債務上限問題を巡る政治的な混乱、ガバナンスの低下がその理由です。

意外なところから降って湧いたような悪材料が出てきて、市場にもとまどいが見られます。当初はさほど材料視していなかったのですが、東京市場では水曜日に日経平均が▲769円も下落し今年最大の下げとなりました。

米国では長期金利が上昇して、10年物国債金利は8月3日に4.17%、9か月ぶりの高水準となりました。4%を超えるのは7月初旬以来のことで、この時は世界中で株価の下落が見られました。

日銀のイールドカーブコントロール政策の修正から1週間。すべての影響が出尽くしたとはまだ言い切れない面があります。そこに米国債の格下げが重なったことで、市場の警戒感は増幅されているようにも見えます。

米国の株式市場は今のところ本格的な下げ局面に入った、という状況ではありませんが、格下げの発表当初にはなかった警戒ムードが広がりつつあるようにも感じられます。

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警戒モードと言う観点に立って周囲を見渡せば、そのような兆候はいくつも見い出すことができます。

8月1日に発表された中国の7月PMI(製造業景況感指数)は49.3となり、4か月連続で分岐点の「50」を割り込みました。不動産市場の低迷が長期化しており、それが鋼材生産や受注、雇用を押し下げています。

米国の7月のISM景況感指数・製造業は46.4(+0.4)で、「50」の水準を9か月連続で下回りました。物価上昇の影響が徐々に広がっているとされています。

アップルが発表した4-6月期の純利益は198億ドルで+2%の増加にとどまりました。iPhone、Mac、iPadの売上げがコロナ禍の影響でいずれも前年割れとなっています。

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悪いニュースばかりではありません。決算発表に関しては、キャタピラーの4-6月期の純利益は+75%も伸びて29億ドルに達しました。インフラ投資法が成立によって建設需要が伸びていることが業績の大幅な伸びに寄与しました。

日本でも6月の鉱工業生産が+2.0%伸びて2か月ぶりのプラスとなりました。生産の伸び以上に「電子部品・デバイス」の在庫調整が進んでいることが大きいと見られます。

好材料と悪材料がさまざまに絡み合う8月相場の第1週となりましたが、決算発表シーズンの真っただ中でもあり、投資家は少し警戒心を強めている様子がうかがえます。それほどまでに今回の決算発表は、内容の良い企業と悪い企業の明暗が分かれています。

全体を通して一概に「良い」とか「悪い」とか決められないほど、個々の企業の戦略や置かれている立ち位置によって業績面での違いが出ています。アップルの決算が示しているように、コロナ禍の影響が今も残る企業が多く、株価の反応も企業によって異なっており、市場の値動きが一段と複雑になっているようです。

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先週の東京株式市場は、TOPIXが3週ぶりに反落しました。週半ばに急落した影響が響きましたが、下落率は▲0.70%と小さな動きにとどまりました。

2週連続して上昇したあと、3週ぶりの下落となりましたが、3週間前も▲0.70%の同じような下げ幅でした。この時は自動車株の下げが主な下げ要因でしたが、先週は逆に自動車株は上昇をリードする立場となりました。

規模別では大型株から小型株まで幅広く下げていますが、小型株の下げは軽微にとどまっています。また、グロース株は軟調な動きが続いており、反対にバリュー株の下げは小さなものにとどまりました。東証マザーズ指数は7週ぶりに反発しました。

日経平均採用銘柄のうち、PBR(株価純資産倍率)が1倍を下回っている銘柄数は93銘柄に増加しました。日経平均採用銘柄(225銘柄)の41%を占めています。

騰落レシオは8月1日に110.45%台まで上昇しましたが、週末は94.46%に低下しました。日経平均のサイコロジカルラインは引き続き「5」から「6」に張りついています。

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TOPIX-17業種のセクター別騰落は5業種が値上がりして、下落したのは12業種に広がりました。値上がりセクターの上位は「自動車・輸送機」、「電力・ガス」、「商社・卸売」となっています。

値上がりトップの「自動車・輸送機」は、週前半に活躍が目立ちました。トヨタ自動車(7203)が4-6月期の決算発表をきっかけに大きく上昇して、昨年1月以来の上場来高値更新となりました。

トヨタ自動車ばかりでなく、豊田自動織機(6201)、アイシン(7259)、豊田合成(7282)、愛三工業(7283)などトヨタグループ全体が一斉に動意づいています。

自動車セクターはコロナ禍からの「挽回生産」がようやく本格的なものとなっており、それが企業業績にストレートに現れています。それが市場での数少ない安心感につながっていると見られます。

同じように「電力・ガス」も業績に対する安心感から週初に買いが先行しました。電力各社はいずれも、燃料費の高騰によるコスト上昇を2四半期前に先行して計上しました。今回の決算発表では電力料金の引き上げが遅れてプラスに反映されます。いわゆる「期ずれ」の影響が出ています。

「商社・卸売」も資源価格の低下による悪影響は思っていたほど出ていないようで、それだけに株価はしっかりしました。

反対に値下がりセクターは「金融(除く銀行)」、「電機・精密」、「情報通信・サービス」となりました。「金融」は保険料の価格調整の疑いが広がりを見せている損害保険会社の株価下落が影響しています。

「電機・精密」は決算発表を受けてキーエンス(6861)、

(後略)

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鈴木一之