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2023年7月31日

中央銀行ウィークは日銀が金融政策を変更、株価は小変動にとどまる

鈴木一之

鈴木一之です。夏本番です。全国各地で盆踊りと花火大会が続々と復活しています。小さなお子さんの歓声が聞こえるようです。

甲子園を目指して高校野球の地区予選も全国で熱戦が繰り広げられています。文庫本1冊を持ってふらりと旅に出たくなります。

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先週は「中央銀行ウィーク」。世界中の市場参加者が中央銀行の動向を注視しました。終わってみれば、FRBおよびECBに関してはほぼ予想通りの展開。変化は日銀から生まれました。

FRBから見てゆきます。7月26日(水)に開催されたFOMCにおいて、FRBは2会合ぶりに0.25%の政策金利の引き上げを決めました。これでFFレートは5.25-5.50%に達したことになります。金利水準としてはITバブルの直後、2001年3月以来の高水準です。ほぼ事前の予想通りの結果でした。

問題はここからの展開です。年内にもう一度の利上げはあるのかどうか、市場では繰り返し議論の的となっています。次回のFOMCまでまだ2か月も間があるだけに、それまでにも経済指標は何度となく発表されます。パウエル議長は会合後の記者会見で「データを見る必要がある」と繰り返し述べていました。

このこと自体には目新しい点はありません。今回のFOMCで収穫があったとすれば、パウエル議長が直接言及したように、年後半の米国経済のリセッション入りの可能性はほぼなくなったという点です。米国の経済状況はそれほどまでに良好で、しかもインフレはこれまでのところ穏やかな範囲にとどまっています。

NYダウ工業株は水曜日まで13日連続で上昇を遂げました。ボーイング、コカ・コーラ、スリーエム、ジョンソン・エンド・ジョンソンなどのダウ採用銘柄の決算が良好で、これが株価を押し上げる原動力となっています。13連騰は1987年1月以来、36年半ぶりの快挙です。

NASDAQが先導する形で今年半ばの株価上昇が見られましたが、このところは主力の大型株を中心に株価の物色が横に広がっています。しかし楽観はできません。パウエル議長も「インフレを2%の水準に戻すのは長い道のり」と述べています。

本当に重要なのかここからの金融政策の運営です。当面は物価動向や雇用情勢に一喜一憂する展開が続きそうな状況です。

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市場の注目は日本銀行の動きに集中しています。日銀が現在の超金融緩和策を継続するのか、あるいはなんらかの修正を加えるのか、7月相場は月初からこの一点を巡って右に左に揺れ動いてきました。

結果的に日銀は、金融政策の修正に踏み切りました。7月28日(金)に開催した金融政策決定会合において「イールドカーブ・コントロール(長短金利操作)」における長期金利の誘導幅の上限を現在の0.5%から1.0%まで拡大しました。

具体的には国債を無制限に購入する「連続指し値オペ」の利回りを1%に引き上げるとしました。

市場の試算では、日銀がイールドカーブ・コントロールを撤廃した場合、実際に長期国債の利回りはどこまで上昇するかというと、市場ではそれは「0.6%前後」と推計しています。

その推計値を越える1%までの金利の上昇を容認するということですから、これは事実上の「イールドカーブコントロール政策の終了」を意味します。

会合後の記者会見において、植田総裁は今回の政策変更の意図について、「0.5%に厳格に抑えることで市場に影響が生じる恐れがある」、「(金利の上昇圧力がさらに強まる)将来へのリスク対応」、「金融緩和の持続性を高める」と説明しています。

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しかし市場では植田総裁のコメントを額面通りに受け止める向きは少ないようです。今回の政策変更を受けて、金曜日の債券市場では長期金利が0.575%まで急上昇しました。2014年9月以来、9年ぶりの高水準です。

為替は一時138円台までの円高に振れ、急激な金利上昇と円高を受けて株式市場では日経平均が一時▲850円も下落する場面が見られました(大引けでは▲132円まで値を戻しています)。

長らく封印されていた長期金利が動き始める以上、週明け以降は住宅ローン金利をはじめ、各種の金利水準が一斉に変わるはずです。夏は来年度予算編成のシーズンでもあり、財政にも少なからず影響を及ぼします。

日銀は合わせて「展望リポート」を公表しています。2023年度のCPI見通しを2.5%まで上方修正しました。2024年度は1.9%、2025年度は1.6%としており、企業サイドとしては、調達コストの転嫁や資本調達を通じて、企業の中長期の経営スタンスにも影響が出てくるはずです。

週明け以降の各企業の株価の動きを丹念に追いかける必要がありそうです。

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先週の東京株式市場は、TOPIXが続伸しました。金曜日の波乱の動きの割に週間の上昇率は+1.26%とまずまずの大きさです。

規模別では、大型株よりも中型株、小型株の上昇が強まりました。特に中型株は直近高値を更新しており、業績動向により敏感な中型株の動きが顕著となりました。

引き続きグロース株の上昇は鈍いままにとどまっています。前週に続いてバリュー株が優勢です。バリュー株の上昇率は+1.56%に対して、グロース株は+0.92%にとどまりました。東証マザーズ指数は続落しており、これで6週連続での下落です。

日経平均採用銘柄のうち、PBR(株価純資産倍率)が1倍を下回っている銘柄数は87銘柄に減少しました。日経平均採用銘柄(225銘柄)の39%を占めています。

テクニカル面では、騰落レシオが95%台の水準を5日間も続けています。上昇と下落の銘柄数が拮抗している状況です。日経平均のサイコロジカルラインは「5」から「6」に張りついています。

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TOPIX-17業種のセクター別騰落は16業種が値上がりして、下落したのは「食品」の1業種にとどまりました。

値上がり上位のセクターは「銀行」、「鉄鋼・非鉄」、「エネルギー資源」となりました。

値上がりトップの「銀行」は、日銀の金融政策の変更を真正面から評価しています。金利の上昇は保有債券に損失をもたらしますが、それ以上に貸出金利の上昇による利ザヤの確保が市場では高く評価されているようです。

三菱UFJフィナンシャルグループ(8306)、みずほフィナンシャルグループ(8411)、三井住友フィナンシャルグループ(8316)のメガバンク3行がいずれも大幅高となりました。

地銀クラスでも千葉銀行(8331)、七十七銀行(8341)、

(後略)

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鈴木一之