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2023年7月16日

猛暑の夏、調整ムードが続く、米6月CPIは波乱なく通過

鈴木一之

鈴木一之です。7月相場の第2週目も株式市場は調整色の強い展開に包まれました。

週半ばに米国の6月CPI(消費者物価指数)の発表を控え、為替・債券市場ともに緊張感の高い展開を余儀なくされました。TOPIXは7日続落を記録するありさまで、海外投資家の買いに沸いた6月までの活況は影をひそめています。

日本では小売セクターの決算発表が佳境を迎え、コンビニ大手のローソン(2651)がストップ高を記録するなど、業績好調の確認された企業には思い切った買いが向かっています。

それでもマーケット全体を見わたせば、為替の動向に影響されやすい電機・自動車という時価総額の大きな業種の動きが鈍り、それが市場のムードを圧迫しています。

目下のところ米国市場は、経済の好調さと穏やかなインフレが両立するのか、という大きなテーマに挑戦しています。言うまでもなくそれはFRBの金融政策に直結します。

雇用統計の発表があった前週は「経済にとって良いニュースはマーケットにとって悪いニュース」という展開が見られました。果たしてCPIはどのような結果になるのか、市場は固唾を飲んで新たな状況を見守っています。

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その米国の6月CPIは、日本時間で7月12日(水)21時に発表され、前年比+3.0%と12か月連続での低下となりました(5月は+4.0%)。事前予想の+3.1%を下回ったことでマーケットは安堵しています。前月比でも+0.2%の上昇にとどまり、市場予想の+0.3%を下回りました。

1年前の6月はロシアがウクライナに軍事侵攻を開始した直後で、コロナ禍の影響による世界的な物流の混乱もまだ色濃く残っていました。原油価格が急騰して、米国ではガソリン価格が初めて1ガロン=5ドルを突破したという状況でした。これを反映してCPIは40年ぶりに+9.1%という伸びとなり、マーケットを脅かせ警戒心は一気に高まりました。

あれから1年が経ち、米国政府の備蓄原油の放出、シェールオイルの増産でガソリン価格の高騰は抑制され、CPIも徐々に落ち着いています。これに安堵して米国の10年国債金利は4%超えから再び3.8%に低下しました。株価もNasdaq、S&P500ともに高値更新まで買われています。

しかし物価問題はここから正念場を迎えます。消費者物価は10%を3%に引き下げるよりも、3%を2%に下げる方がはるかに難しいとされます。FRBはそれを熟知しており、金融政策はここからが本当の試練を迎えるという指摘もなされます。

それでもひとまずは最初の関門を超えた感があり、市場もいったんは落ち着きを見せつつあるようです。

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為替市場の動きも大きくなりました。前週から強まったドル安・円高の流れは、米CPIの発表を受けてドル下落の流れが一段と強まりました。

週末には137円台まで、2か月ぶりの水準にドル安・円高が進んでいます。6月末の145円台前半から7円以上も円高が進みました。

CPIに続いて7月13日(木)には6月の卸売物価指数(PPI)も発表され、これが市場の予想を下回る結果となりました。日本では7月27ー28日に開催される日銀・金融政策決定会合において、イールドカーブ・コントロール政策の修正が行われるとの見方が根強く残っており、3連休明けの展開も予断は許されない状況が続きそうです。

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先週の東京株式市場は、TOPIXが2週にわたって続落しました。前の週に▲1.47%の小幅安となりましたが、先週も▲0.70%下落しました。

規模別では大型株の下げが▲0.95%と大きく、小型株は▲0.55%の下げにとどまっています。中型株は▲0.17%とさらに小さな下げでした。金利上昇は一服しましたが東証マザーズ指数は4週連続で下落しています(▲0.32%)。

バリュー株はそれまでの堅調さの反動で▲1.19%とやや大きめの下げとなりました。一方のグロース株は▲0.19%の小幅安にとどまっています。日経平均採用銘柄のうち、PBR(株価純資産倍率)が1倍を下回っている銘柄数は94銘柄です。1週間で+3銘柄増えました。採用銘柄(225銘柄)の42%を占めています。

テクニカル面では、騰落レシオが週末値で94.63%まで下落しました。週末値で100%を割り込んでいます。日経平均のサイコロジカルラインは週初に「3」まで低下した後、週末は「4」でした。

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TOPIX-17業種のセクター別騰落は5業種が値上がりし、12業種が値下がりしました。

値上がり上位のセクターは「エネルギー資源」、「情報通信・サービス」、「小売」でした。

トップの「エネルギー資源」では、原油価格の急上昇を受けてINPEX(1605)が大幅高となりました。他の資源株はまだおとなしい状態にとどまっています。

値上がり第2位の「情報通信・サービス」は、米国経済の現状を映してソフトバンクG(9984)とリクルートHD(6098)が大きく上昇しています。求人件数が高止まりしていてもインフレが穏やかであれば、リクルートHDにとっては好都合です。NASDAQが高値を更新していることもソフトバンクGの追い風となります。

このほかにもメルカリ(4385)、SHIFT(3697)、ISID(4812)、TDCソフト(4687)など、小型グロース株の一角が決算発表やアナリストからの高評価を受けて上昇しています。DXの流れは本物で設備投資に占めるソフトウェア投資の比重もますます高まっているように見られます。

値上がり第3位の「小売」は決算発表に左右される展開が目立ちました。ストップ高まで買われたローソン(2651)に加えて、オンワードHD(8016)、三陽商会(8011)、ライフコーポ(8194)、サイゼリヤ(7581)が上昇しています。

反対に、快進撃の続いているトレジャーファクトリー(3093)が決算発表から急落しており、最高益更新の見方も強まるファーストリテイリング(9983)、イオン(8267)も同様に下落しました。セブン&アイHD(3382)も軟調です。

決算発表は短期の値動きではとらえきれません。決算数字が良好であれば、時間をかけてでも株価は回復してきます。決算データの結果で株価が上昇した銘柄も重要ですが、反対に下落した銘柄も同じくらいに重要だと思います。

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一方で、値下がりセクターの上位は「電力・ガス」が3週連続の下落。そこに「自動車・輸送機」、「医薬品」が続いています。

電力株が総じて軟調です。原油高が背景にあると見られますが、経済産業省、政府方針によって電力料金の規制部分の値上げ幅が抑制されたことも影響しているようです。

自動車セクターは急ピッチな円高が影響しています。米国への輸出比率の高いSUBARU(7270)は9日続落となり、好調だった日産自動車(7201)も一転して軟調な動きに変わりました。

海外売上比率の高い医薬品セクターも同様で、武田薬品工業(4502)、

(後略)

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鈴木一之