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2021年10月24日

週末にNYダウ工業株が最高値を更新、資源価格の上昇続く

鈴木一之

◎日経平均(22日大引):28,804.85(+96.27、+0.34%)
◎NYダウ(22日終値):35,677.02(+73.94、+0.20%)

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鈴木一之です。米国では「ハロウィンから感謝祭までに株を買え」という相場格言があります。季節的にはこれからよくなってゆくという地合いです。

その米国市場では週末の10月22日に、ついにNYダウ工業株は史上最高値を更新しました。議会との折衝に苦しむバイデン政権のインフラ予算の遅れを脇に置いたまま、株価は上昇を再開した模様です。簡単には解消しそうにない資源価格の上昇、それに伴うインフレ懸念によって長期金利の上昇は続いていますが、金利上昇を伴っての株価上昇に地合いは転換しました。

原動力は何といっても好調な企業業績です。先週はゴールドマン・サックスやJPモルガン、ジョンソン&ジョンソン、トラベラーズなどが好決算で株価が次々に上昇しました。アメリカン・エクスプレスも好調です。

決算発表前ですが、ゴールドマン・サックスのアナリストはウォルマートの投資判断を最上級の「買い」に引き上げました。ウォルマートに対して強力な買い推奨の判断を下すほど、経済は好調だということです。

特徴的なことは、「GAFA」のようなテクノロジー大手が最高値更新を「先導していない」という点です。これまではNYダウ工業株が高値をつけるたびに、リード役はテクノロジー株と決まっていました。パンデミック以降は特にその構図がはっきりしていました。

それが今回はアップル、アマゾンドットコム、アルファベット、フェイスブックはいまだ静かな値動きにとどまっています。マイクロソフトは最高値を更新し、ネットフリックス、テスラもあらためて騰勢を強めていますが、今のところテクノロジー株全体に物色が広がっている感触はありません。

米国株式市場の物色動向のすそ野がそれだけ広がっているということになるように感じられます。決算発表シーズンは始まったばかりです。NASDAQは引き続き高値圏にあり、今後の企業決算の出来栄え次第では再びテクノロジー株の物色に火がつく可能性が十分にあります。

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いまや東京株式市場は、米国市場に連動して動くような市場構造にはなっておりません。それでも先週は徐々にしっかりした足取りを示すようになりました。

先々週、ようやく日経平均は10月に入って初めて29,000円の大台を回復しましたが。今週の木曜日には▲546円も大きく下落してひやりとしました。それを除けば底堅い展開となりました。市場を取り巻くニュースや話題はあいかわらず豊富です。

(1)中国・恒大グループのデフォルト問題

引き続き中国の不動産大手、恒大集団を巡る社債の利払い問題がくすぶっています。1か月前の9月23日ドル建て社債の利払いである8350万ドル(96億円)を延期していましたが、その新たな期限を10月23日に控えて市場は神経を尖らせていました。

期限ギリギリの10月21日に100億円ちかい金額を送金したと中国メディアが報道しました。このニュースを受けて、デフォルトが回避されたことから香港市場での恒大グループの株価はプラスに浮上しました。

中国政府が何らかの手を打つかと期待されましたが、結局この1か月間は何も対策は講じられてこなかったことになります。年末に向けて恒大グループはまだ何度も利払いの期限が到来するため予断は許されない状況ですが、ひとまず大きな山は越えたように感じられます。

(2)資源価格の上昇、それに伴う金利上昇とドル高

資源価格の上昇が続いています。原油価格はWTI先物で一時、8年ぶりの高値となる84ドル台に到達しました。週末も83.98ドルのほぼ高値で引けています。LNG価格も高止まりしたままの状態です。

コロナ危機下での経済再開によって、需要と供給のミスマッチは一向に解消しません。物流網は停滞したままで、通常の状態に戻るのはかなり時間を要すると見られています。国境をまたいだ人の交流が閉ざされたままで、港湾、流通、炭鉱のあらゆる部分で人手が足りません。何もかもが目詰まりを起こしたの状態で、それが物価の上昇に拍車をかけています。

さらにESGの大きな流れが重なり、新たな鉱山開発には投資資金が流れにくくなっています。資金だけでなく金融機関が保険をつけない、融資の決定が下りない、クレジットが組めないなど、供給サイドばかりでなく資金面でも問題の解決はますます長期化する情勢となってきました。

資源価格の上昇はインフレ期待を呼び込み、米国の長期金利を押し上げて、それがドル高をもたらしています。先週は114円台まで円安・ドル高が進みました。日本の産業界は長年にわかって円安信仰を持っていますが、現状では輸入価格の上昇につながるだけなので円安を歓迎するムードはどこにも見られません。

しかも114円台でピークを打ったという感じもないため、年末に向けて一段のドル高、120円程度を目指す動きがありうると警戒感すら漂っています。

北半球はこれから冬の暖房シーズンを迎え、今年1月に見られたように早くも燃料価格の高騰が警戒されています。欧州では深刻な問題となりつつある電気料金の上昇が日本でも心配され始めました。

電気料金は燃料であるLNG価格の上昇が自動的に上乗せされます。2か月後には電気料金に反映されるため、今のままでは年末年始に上昇が実感されることになるでしょう。現状では2割近い上昇を覚悟しなくてはならない情勢です。

その時に考えられるのは、景気はよくないのに物価だけが上昇している状況か、さもなければ景気は盛り上がりに欠けるのに人手不足は続いている、という状況か、どちらも企業経営、および家計には厳しい状況です。

(3)衆院選の公示

先々週の木曜日、臨時国会での代表質問が一通り終わって、衆院が解散されました。先週は月曜日に日本記者クラブが主催する形で党首討論が開かれ、そして火曜日。衆院選が公示されました。

いよいよ4年ぶりの衆院選に突入です。日本は「安倍・菅」政権以外の選択を9年ぶりに突きつけらます。コロナ禍で傷んだ私たちの生活をどう立て直してゆくのか、アフターコロナでの「新しい常識」、「新しい日常」をどのような政党に託すのか、目の前に迫っている物価の高騰をどう切り抜けるのか。

誰がやってもむずかしい政権運営ですが、日本のリーダーには誰がふさわしいのか、そこがまさに中心となって大きく問われています。

しかし党首討論、街頭演説、政見放送のどれを聞いても、「分配」をめぐる各党の政策はほとんど同じです。岸田総裁率いる自民党の政策は中核となる骨子の部分がなく、インパクトに欠けています。

対する野党の政策も、盛んに一律の給付金や消費税引き下げ・廃止を訴えていますが、国民はそこまでは望んでいないように感じます。むしろ悪化するばかりの国家の財政負担を心配しています。

公示から2日目に各メディアが一斉に報じた衆院選序盤の選挙戦予想では、自民党の苦戦が目立ちました。野党は明らかに迫力不足ですが、それは自民党も同様です。

4年前の衆院選では、直前に人気のあった「希望の党」が失速し、最大野党の民進党が分裂したために、野党候補が乱立したことから自民党が思わぬ大勝となりました。その時の反省から今回は野党候補の一本化、共闘が実現しました。

旧民社党の流れを組む立憲民主党と共産党が手を組むという、支持母体の労組の手前、以前では考えられないような共闘体制ができあがりました。そこに他の野党も相乗りしています。

岸田総裁は総選挙の勝敗ラインを「自民・公明の与党で過半数」とかなり低めに設定して臨んでいます。「自民で単独過半数」はむずかしくなっており、現状はかなり厳しい情勢のようです。メディアの票読みでは、289の小選挙区で、与野党接戦の選挙区が50、逆転もありうる選挙区が70、という情勢です。

中でも当選1ー3回の「安倍チルドレン」が苦戦を強いられており、今回の衆院選の状況は来夏の参院選に影響します。参院選はその後の政局につながりやすく、ねじれ国会ともなれば法案は通らず、岸田政権が短命に終わるとの見方も浮上してきます。

世界の景況感は悪化しつつあり、物価高と円安が重なって早くも日本株に対する海外投資家の見方が後退しつつあるようなムードが醸し出されています。

最高値更新を更新した米国株の勢いを、日本も浮上の呼び水に転嫁できればよいのですが、なかなかむずかしい情勢となってまいりました。

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先週の東京株式市場は、TOPIXは反落しました。前の種に4週ぶりの上昇となりましたが、早くも軟調な値動きに戻っています。

規模別では大型株から小型株まで、小幅なマイナスですが幅広く下落しています。バリュー株とグロース株も区別なく軟調でした。東証マザーズ指数も反落、しました。東証REIT指数も3週ぶりに下落しました。

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TOPIX-17業種のセクター別騰落では、値上がりセクターが2業種にとどまり、反対に値下がりセクターは15業種に拡大しました。

値上がりセクターは「機械」と「運輸・物流」の2業種だけでした。機械セクターは114円台の円安が効いている部分もあり、コマツ(6301)、日立建機(6305)、竹内製作所(6432)の建設機械が久々に堅調でした。

さらに半導体関連のローツェ(6323)、荏原(6361)、栗田工業(6370)をはじめ、ダイキン工業(6367)、クボタ(6326)がしっかりしました。最も先に売られていた機械セクターから上昇に転じる動きが見られつつあります。

値上がり第2位の「運輸・物流」でも、軟調な動きが目立っていた電鉄株が総じてしっかりしました。景況感の判断では「製造業が優位、サービス業・非製造業が弱い」との見方が定着していますが、株価の上ではそれとは反対にサービス業・非製造業の優位性が一部では見られつつあります。

マイナスですが、上位3番目のセクターが「電機・精密」でした。前の週は値上がりトップでした。

ソニーG(6758)が堅調を維持し、日立(6501)、

(後略)

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鈴木一之