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2023年3月6日

ついに日経平均も動き出す、金曜日の大幅上昇で今年の高値を更新

鈴木一之

鈴木一之です。3月に入りました。花粉の飛散量は多いのですが、暖かい日も増えてきました。

受験も卒業式も終えた中学生、高校生の皆さんがのびのびと友だち同士、街に繰り出している光景にたくさん出くわします。その笑顔が懐かしくもあり、うらやましくもあります。

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3月相場が始まって1週間もたたないうちに、マーケットは大きく動き始めました。数々の重要な変化が起こっています。先週末、金曜日に日経平均は+429円も上昇し、今年の高値を一気に更新しました。先行していたTIPOXも同様です。

1年が経過したロシアとウクライナの紛争は解決の糸口が見つかりません。解決どころか、中国がロシアに攻撃力のある武器を供与する意向を持っていることに対して、米国が警告を発しています。ロシアの蛮行が米中対立の火に油を注ぐ可能性もあります。

依然として米国の経済指標は強い状況も変わりません。2月雇用統計は第2週の金曜日ですが、ISM景況感指数をはじめ月初の統計統計の発表に市場はピリピリしています。

それでもマーケットのムードは急速に変わっています。何がきっかけでこれほどまでの変化が起きているのか、状況証拠だけですが何点か指摘してみます。

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(1)中国の景況感の改善

3月1日(水)に発表された中国・国家統計局による2月の製造業景況感指数(PMI)は前月比+2.5ポイントの52.6となりました。前月に続いて2か月連続での改善です。同時に「50」の分岐点を上回っています。

同じく2月のビジネス活動指数(非製造業PMI)も前月比+1.9ポイントの56.3と好調でした。サービス業が55.6(2020年11月以来の高水準)、建設業が60.2という非常に高い数値に達しています(昨年9月以来の高水準)。

1月8日にそれまでの「ゼロコロナ政策」が全面解除され、そこから中国経済はあっという間に改善に向かっていることが示されました。3年ぶりの規制のない春節も1月で終わっているので、中国の生産活動が一段と正常化しつつあることがうかがえます。

「政冷経熱」とはまさにこのことです。本音と建前の使い分けははっきりしており、米国との対立は激化する一方で、それでも世界経済の方向性は中国抜きには考えられません。日本も含めて世界の自動車、鉄鋼セクターの株価が堅調な推移をたどっているのも、中国経済の回復が背景にあることは間違いないようです。

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(2)FRBから久々の「ハト派」発言

3月2日にアトランタ連銀のボスティック総裁の発言として、次回のFOMC(3月21-22日に開催)では「0.25%の利上げを支持する」との内容が伝わりました。

これによって木曜日のNY市場で株価が大きく上昇し、それが金曜日の東京市場にも好影響を及ぼしたと見られます。米国の株価は金曜日も堅調でした。

2月は丸1か月にわたって、米国の経済がきわめて好調であることを伝えるデータでした。雇用統計、ISM景況感指数、小売売上高、消費者物価指数、生産者物価指数、どれをとっても米国経済の強さは揺るぎないものである事実を示していました。

インフレは簡単には収まりそうになく、10年物国債金利は先週、昨年11月以来の4.09%まで上昇しています。市場が望んでいた「年後半には利下げ」という状況にはほど遠く、利上げモードは一段と長期化するとの見方が大多数となっていました。

そこに伝わったのがタカ派で知られるボスティック総裁の発言内容です。前後の文脈が明確ではないのですが、マーケットはわずかでもプラスの要因を大きく評価しています。テクノロジー株を中心に、買い戻しを含めた「強気」アクションが急がれているようです。

3月1日に発表されたISMの製造業・景況感指数は47.7(+0.3)、3月3日の非製造業・景況感指数は55.1(▲0.1)という結果でした。引き続きサービス業の景況感は強いのですが、市場の事前予想には届かず、FRBの利上げモードを長期化させるほどの内容ではないとの見方となっているようです。

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(3)日本の生産活動は弱い動きが続く

日本の製造業の基調は弱い動きが続いています。2月28日に経済産業省より発表された1月の鉱工業生産指数は91.4となり、前月比▲4.6%の低下でした。3か月ぶりのマイナスです。減少幅も中国がロックダウンの2022年5月の▲7.5%以来の大きさでした。

引き続き自動車業界の生産ダウンの影響が大きく、品目別では自動車が▲10.1%もの大幅な落ち込みとなりました。生産用機械(半導体製造装置など)も▲13.5%と大きく減少しています。どちらも生産調整に入っている業種です。

製造業は厳しい状況を余儀なくされていますが、ただし先行きに関してはわずかな明るさも見えつつあります。

現在の生産計画から先行きの動向を見る「製造工業生産予測指数」によれば、続く2月は+8.0%となり、前月時点での予測(+4.1%)から大きく上振れしました。3月の予測も+0.7%となっています。

2月に上昇が見込まれる業種としては、生産用機械、電子部品・デバイスなどです。先行きに明るさが見えてくると、足元での景況感は改善しやすくなる傾向があります。そのあたりの株価の動きとして、先週の鉄鋼、機械、自動車部品セクターに広く見られました。

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(4)日本の小売業界の月次売上高、好調続く

製造業の苦戦が続いている一方で、日本国内では消費がきわめて活発です。月初に発表される百貨店・専門店の月次売上高のデータを見る限り、驚くほどの好調さが見てとれます。

昨年から高額品の売れ行きが伸びているデパートでは、阪急阪神百貨店のエイチ・ツー・オーリテイリングが+30.9%も大幅な伸びを記録しました(1月は+10.3%)。

同じく三越伊勢丹が+35.8%(1月は+26.8%)、Jフロントリテイリングが+26.3%(1月は+20.2%)、高島屋が+20.4%(1月は+17.4%)と、いずれ劣らぬ好調さが確認されました。

行動規制が外れた昨年後半より、小売セクターの業績はすこぶる好調という状況が続いています。小売業界にとって2月という月は鬼門です。「ニッパチはダメ」とされているように、寒さと年末年始におカネを使い過ぎた反動で、例年2月は落ち込む傾向があります。しかしそんな過去の傾向はおかまいなしに大幅な伸びが続いています。

日本人による日本国内の旅行がブームの様相を帯びており、依然としてたいへんな繁忙であることも背景にあります。新幹線はどの列車も混雑しており、繁華街の人の出も活発です。キャスター付きスーツケースや歩きやすいシューズの売れ行きも高い伸びとなっています。

そこに訪日外国人観光客によるインバウンド需要が加わります。3月1日より中国からの旅行客の制限が大幅に緩和されたため、今後もこのような流れに拍車がかかることは確実と見られます。厳しかったコロナ禍の冬も本格的に明けようとしています。

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以上のような4つの要素を挙げてみましたが、これら以外にも数々の要素が考えられます。

個々の企業の決算発表が終わったばかりで、そこでの業績内容や中期経営計画など、様々な要因が重なって、長かった株価の保ち合い期間から抜け出すきっかけが形作られたように感じています。

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先週の東京株式市場は、TOPIXが反発しました。上昇率は+1.57%とさほど大きくはありませんが、週前半は膠着感が強く週末の1日だけ大きく上昇しました。

それでも前週の下落率がわずか▲0.18%という小さなものでしたので、その下落分を早くもカバーしました。

規模別では、大型株から中・小型株まで均等に上昇しました。バリュー株とグロース株の対比でも大きな差は見られませんが、敢えて違いを探せば、小型グロース株の上昇がわずかに抜きん出ています。

テクニカル面では騰落レシオの上昇が一服し、週前半に127.77%の過熱圏をつけたあと、週末は117.31%にわずかながら低下しました。日経平均のサイコロジカルラインは「6」のニュートラルの状態を4日間続けています。

前の週に6週ぶりに上昇した日経平均ボラティリティ指数は、早くも反落しました。

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TOPIX-17業種のセクター別の騰落では、値上がりセクターは16業種に広がり、値下がりセクターは「電力・ガス」の1業種だけにとどまりました。

値上がりセクターの上位は「商社・卸売」を筆頭に、「鉄鋼・非鉄」、「エネルギー資源」、「機械」と景気敏感株が並んでいます。

インフレ利益を享受する「商社・卸売」では、三菱商事(8058)、

(後略)

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鈴木一之