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2022年4月25日

ウクライナ情勢、上海封鎖、米FOMC、円安で膠着感が強まる

鈴木一之

◎日経平均(22日大引):27,105.26(▲447.80、▲1.63%)
◎NYダウ(22日終値):33,811.40(▲981.36、▲2.82%)

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鈴木一之です。ウクライナ情勢はますます緊張の度合いが強まり、先行きはいっそう混沌としてきました。ウクライナはもちろんのこと西側諸国も戦々恐々としています。

先週後半には要衝・マリウポリを制圧したとのロシア国防省から発表されましたが、ウクライナ政府はそれを否定しています。ロシア軍が使用を禁止されている危険な武器を使用しているのではないかとの疑惑が拭えず、民間人の遺体を隠す大規模な埋葬のあとも衛星写真で見つかりました。

ニュース報道を追いかければ悲惨な状況が次々と飛び込んできます。ウクライナ情勢もそうですが、株式マーケットは資源エネルギー価格のほかにも、米国の長期金利、各国の金融政策、ドル相場、景気動向と、それ以外にも議論の焦点が無数に広がっています。

世界経済上の関心は、上海市の都市封鎖、ロックダウンに集まってきました。4月21日の上海市の新規の感染者数は1万7000人でした。1週間前の4月13日は過去最高の2万7700人超を記録していたことから、それと比べれば増加ペースは鈍っています。それでも上海市は、4月21日から上海の西部地域で新たな外出禁止の措置を取りました。

中国政府は行動規制は徐々に緩めるとしていた方針を撤回して、規制強化に向かっています。コロナウイルスの感染収束がいまだ見通せず、「ゼロコロナ政策」にますます固執する状況となっています。それが中国経済を弱めていると見られており、実際に経済の鈍化を示す数字が徐々に確認されるようになってきました。

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先週(4月18日)発表された中国の1-3月GDPの伸び率は、前年比+4.8%となりました。10ー12月期の+4.0%より伸びていますが、前期比の伸びは+1.3%にとどまっており、10ー12月の+1.5%と比べて鈍化しています。3月に限れば小売売上げや雇用は減少しています。

4月19日、IMFは世界経済見通しを引き下げました。それによれば、2022年の世界の実質成長率は+3.6%で、前回1月調査の+4.8%から▲0.8ポイントの引き下げとなっています。ウクライナ情勢、インフレ加速、各国の利上げ、そして中国のゼロコロナ政策が世界経済を押し下げている主因と指摘しています。

主だった国・地域の伸びは、米国が3.7%(前回比▲0.3p)、ユーロ圏が2.8%(▲1.1p)、日本が2.4%(▲0.9p)、および中国が4.4%(▲0.4p)となっています。

世界経済は2020年に▲3.1%のマイナス成長に陥ったあと、2021年には+6.1%と急速に回復し、そして迎えた2022年。コロナ禍が長期化することであらゆる分野で需給関係が引き締まり、そこにウクライナ戦争による資源エネルギーの供給不安が重なってインフレが加速しています。世界各国の中央銀行は利上げを急ぎ、それが世界経済にとって大きなリスクとなっている、とIMFは指摘しています。

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需給の引き締まりという観点から物価の高騰が続いていましたが、中国経済の弱さが明らかになりつあることから、週末の米国市場では資源エネルギー関連株が急落しました。NYダウ工業株は金曜日に▲1000ドル近い下落となっています。世界経済の動きそのものが問われ始めています。

世界経済のカギを握るのが米国の金融政策です。5月3-4日にいよいよ米国のFOMCが開催されます。世界中の関心が一手に集まり、株式市場はそれだけ手控えムードが強まっています。

為替市場ではドル高の流れが続き、4月20日(水)には1ドル=129円台半ばまでドル高・円安が進みました。日銀は長期金利の上昇を抑えようと「指値オペ」を続けており、いまや安心してドルを買い、円を売るという流れが定着しています。

その日銀ですが、米国のFOMCの直前にあたる4月27ー28日に、日銀の政策決定会合が開催されます。為替市場でドル売り・円買い介入の実施が思惑として話題にのぼり始めており、日銀の金融政策も何らかの変更があるのではないかと、ここにきてがぜん注目度が高まっています。

いずれにしても来週はGWで、立ち合い日数は月曜日と金曜日の2日間しかありません。上下に激しく揺さぶられる可能性もあります。大きな変化が始まろうとしています。

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先週の東京株式市場は、TOPIXが4週ぶりに反発しました。上昇幅は+0.47%と小さな幅にとどまりましたが、週前半と後半とでは物色の中身ががらりと変わりました。株価指数が示す動き以上に、個別株への物色意欲が強まっているようです。それがTOPIXの小幅反発につながったようです。

規模別指数では、大型株、中型株は反発しましたが、小型株は依然として軟調です。東証マザーズ指数は▲6.19%の大きな下げで3週続けての下落となりました。金利上昇に弱いグロース株の含まれる小型株市場は売り基調が継続しています。REIT指数は2週続けて上昇しました。

日経平均のサイコロジカルラインは「6」に定着し、1週間を通じてほぼニュートラル・横ばいの状態です。騰落レシオは前の週に過熱圏とされる120%をわずかに超えましたが、その状況は長続きせず、先週は再び93.9%に低下しています。

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TOPIX-17業種のセクター別の騰落は、値上がり業種が10業種で、反対に値下がり業種は7業種となりました。それまで下落していた業種が一斉に反発し、逆に値上がりしていた業種が反落しています。

上昇セクターのトップは「自動車・輸送機」です。自動車セクターは129円に乗せた円安にもほとんどポジティブな反応を示しませんでした。それがここに来てようやく反転し始めています。

トヨタ自動車(7203)が週半ばから大きく上昇し、米国での売上げ比率の高いSUBARU(7270)、ホンダ(7267)を中心に物色されました。

値上がり第3位の「素材・化学」、第4位の「機械」も円安メリットを受ける業種です。それらが上昇に転じたことで、株式市場ではそれまでの「悪い円安」という流れから、久しぶりに「よい円安」という状況が見られるようになってきました。

値上がり率の第2位は「銀行」です。米国の長期金利の上昇に弾みがつき、銀行セクターも久しぶりに金利上昇を好感する動きに戻りました。中でもりそなホールディングス(8308)、新生銀行(8303)、ふくおかFG(8354)、滋賀銀行(8366)などの地銀株の健闘が光ります。

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反対に値下がりセクターの上位は「情報通信・サービス」がワーストとなりました。NTT(9432)、KDDI(9433)の通信キャリア大手は、キャッシュフローの潤沢さから堅調な値動きが続いています。

その一方で、マネーフォワード(3994)、GMOペイメントゲートウェイ(3769)、シンプレクスHD(4373)、ブイキューブ(3681)、オプティム(3694)などIT系企業の軟調さが目立ちました。金利上昇を嫌気してグロース市場(旧マザーズ市場)が再び総崩れに近い状態となっており、東証プライム市場でも成長株が下落する状態が続いています。ソフトバンクG(9984)も週半ばまではしっかりしていましたが、週末にかけて下落幅が広がりました。

値下がりセクターの第2位は「鉄鋼・非鉄」、第3位は「不動産」でした。日替わりメニューで循環物色のホコ先がぐるぐると変わっており、「医薬品」や「小売」も含めて、それまで堅調だった業種で下げが目立ちました。

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いよいよゴールデンウイークです。新緑のまぶしい季節となりました。株式市場でも3月決算企業の決算発表が始まります。

決算シーズンのトップを飾るのはいつも日本電産(6594)です。4月21日(木)に発表された日本電産の2022年3月期の決算は、売上高が1兆9181億円(+18%)、営業利益が1714億円(+7%)と非常に堅調な内容でした。

EV向けモーターなど車載用が+16%も伸び、HDD向けなどの小型モーターの▲16%を補って、製品間の構造改革を急速に進めていることが見て取れます。注目される今2023年3月期の見通しでは、売上高は2兆1000億円(+9%)、営業利益は2100億円(+22%)と、こちらも期初時点から安定した伸びを示す力強いものです。

気になったのは、永守重信会長がCEOに復帰するとの発表です。永守社長が社長の地位を退いて後任に託すと表明したのが2度あり、その2度とも社長の座に返り咲いています。

日産自動車から招いた関潤・前CEOは、COOに退いてあらためて後任社長レースに参加することとなります。車載用モーターの成長に賭け、投資を優先して利益の伸びを落としたはずが、その利益ダウンを理由に降格されるのは正しい判断なのか、疑問に感じます。

これではいつまでたっても日本電産(社名変更してニデック)は

(後略)

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鈴木一之