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2021年8月16日

コロナ感染者が全国で2万人超え、決算発表は佳境を迎える

鈴木一之

◎日経平均(13日大引):27,977.15(▲37.87、▲0.14%)
◎NYダウ(13日終値):35,515.38(+15.53、+0.04%)

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東京オリンピックが閉幕したとたんに九州、西日本から関東に至るまで異常なほどの雨降りです。8月1か月間の雨量の3倍以上が集中して降り注いでおり、床上浸水が至るところで発生しています。

異常気象の恐しさ、地球環境保護の重要性は今さら言うまでもないことですが、このような水害の恐ろしさは、一度発生したらしばらくは起きない地震の被害とは違って、毎年のように繰り返し襲来することです。

静岡県熱海市、中国・九州地方の豪雨被害に遭遇された皆さまに心よりお見舞い申し上げます。

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東京オリンピックの熱気がずいぶん遠い過去のことのように思い出されます。まだ閉会式から1週間しか経っていません。待ちかねたように甲子園での高校野球が開幕し、日本はお盆休みを迎え、本日は終戦記念日でもあります。

いつものような夏休みのはずなのに、いつもとはまったく異なる夏を迎えています。

最も違う点が、コロナウイルスの感染拡大が急拡大する局面を迎えていることです。「爆発的な拡大」とか「災害規模」という激しい表現は用いたくありませんが、日本では8月13日(金)、14日(土)に2日続けて新規の感染者数が2万人を超えました。重症者数も14日の時点で1521人にのぼり、過去最高を数えます。

東京オリンピックが終了したとたんに感染拡大の大波が押し寄せています。政府のコロナウィルス対策分科会は、今後2週間に集中的な対策を講じて、人の流れを7月前半比で5割減らすように提言しました。

問題は、医療体制がまったく整わない点です。重症患者が過去最高にのぼっているのに病床数が一向に増えません。連日、5000人を超える新規感染者が出ている東京都では、自宅療養と入院待機者が3万人を超えています。

ここに来て東京都医師会は、ようやく自宅療養者の診療体制を強化する方針に転換しました。保健所からの連絡が来るまでの間、町のかかりつけ医が健康観察を行うことになります。今までそれも整っておりませんでした。

東京都と神奈川県の重症病床使用率は7割を超えています。全国の自治体で感染者数が過去最高を超えている状況で、1~2週間後にこの数値がどこまで上昇するのか、その場合にどのような手立てが残されているのか。固唾を飲んで見守っている状況です。

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コロナ感染者の拡大は日本だけでなく、世界的な広がりを見せています。それにもかかわらず、各国の株式市場は堅調な値動きを続けています。

その中心は米国の株式市場です。NYダウ工業株は先週末も上昇して、これで4日連続で最高値を更新しました。1週間前に発表された7月の雇用統計では、非農業雇用者数が+94万3000人となり、市場予想の84万5000人を上回りました。失業率も5.4%まで低下しています。

引き続きマーケットでは、FRBによるテーパリング(資産圧縮の開始)の時期はいつになるのかの議論が渦巻いています。今では今年10月のFOMCで発表、12月より開始という見方が多くなっている模様ですが、その一方でFRBは物価の上昇を意図的に容認している、との見方も強まっています。その分だけ開始時期はあとずれするとの見方も残っています。
8月11日(水)に発表された米国の7月の消費者物価指数は、コア指数で前年同月比+4.3%の上昇となりました。市場予想の+4.4%を下回ったため、FRBが年初からアナウンスしていた、インフレ率が上昇するのは4月から6月の一時的な期間だけにとどまる、との見方が信ぴょう性を持ち始めている模様です。

中央銀行は利上げを急ぎするよりも、むしろ遅すぎるくらいの方が社会全体に与える影響は小さい、との見方も根強く(ラグラム・ラジャン氏、元インド中央銀行総裁など)、景気回復を優先するスタンスは健在のようです。

先週までマーケットの大きな攪乱要因のひとつであった、中国・上海や香港市場の動揺はひとまず落ち着きを取り戻しました。中国政府による自国の教育、テクノロジー産業に対する監督強化という不透明要素はくすぶっているものの、今のところは影響は限定されています。

バイデン政権による米兵のアフガン撤退で中東情勢が急速に不透明化しており、懸念材料には事欠きません。それでも米国のマーケットは先週、今後の政策決定において重要なカギを握る経済指標の発表を無難に過ごしたことによって、一段と安定感を強めています。それが米国の長期金利の低下と株式市場の最高値更新をもたらしています。

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ひるがえって日本。各報道機関の世論調査で、菅内閣の支持率は政権発足後の最低を更新しました。オリンピック閉幕直後の8月初旬で、NHKは29%、読売新聞は35%、朝日新聞は28%です。不支持率はいずれも過去最高を記録しました。
堅調な値動きを続ける欧米の株式市場と比べて、なぜ日本の株式は出遅れているのか、との疑問が常に突きつけられます。
理由として挙げられるのが、まず「ワクチン接種の遅れ」、「コロナ感染の再拡大」です。2万人を連日超えている現状では仕方ありません。たび重なる緊急事態宣言の発出によって個人消費が打撃を受け、それが景気の回復を遅らせる最大の要因と懸念されています。

それに加えて「内閣支持率の低下」もあります。海外投資家の日本株への関心が急速に低下している点は否定できません。
先週中に佳境を迎えた3月決算企業の決算発表を見る限り、個々の企業の業績見通しは急速に明るくなっています。それが唯一の下支え要因と見られます。日経平均などの株価指数はまだしばらくはこう着感の強い展開が予想されます。そしてその間に、個々の銘柄の組入れ入れ替えなどが進みそうな雲行きです。

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先週の東京株式市場は、TOPIXは続伸しました。2週続けて値上がりするのは6月第1週以来のことです。上昇幅は+1.40%と、前の週(+1.49%)に続いて大きめの上昇となりました。

大型株の戻りが牽引役です。決算発表を受けてグロース株も堅調でしたが、特に目立っているのはバリュー株のリバウンドです。底値圏から大きく切り返すバリュー株が目立ちました。その上で小型株指数も堅調です。東証マザーズ指数は実に6週ぶりに反発しました。REIT指数は続落しています。

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TOPIX-17業種のセクター別の騰落では、値上がりセクターは15業種に広がりました。前の週に続いて広範囲な上昇となっています。反対に値下がりセクターは2業種にとどまりました。

値上がりセクターのトップは「鉄鋼・非鉄」でした。決算発表をきっかけに業績の上方修正を行ったJFEホールディングス(5411)を中心に、大手鉄鋼メーカーが軒並み上昇してセクター指数を引っ張りました。

前の週の値上がりトップが「商社・卸売」で、この時の上昇の牽引役は三井物産(8031)、三菱商事(8058)でした。いずれも決算発表を終えたばかりの総合商社が堅調でしたが、鉄鋼株も同様にインフレ利益を享受できる素材セクター、市況関連株に業績の増額モメンタムが強まっている模様です。

値上がりセクターの第2位は「医薬品」でした。このところ何週間も値下がり率のワースト業種でしたが、ようやく反発に転じました。

日本政府の社会保障関連費の削減と、それに伴う薬価引き下げ圧力によって株価は長らく下落基調にあえいでいましたが、塩野義製薬(4507)と、決算好調のロート製薬(4527)、参天製薬(4536)あたりから反転気運に入ってきた模様です。
塩野義製薬に関しては、コロナ治療薬のひとつとして飲み薬の年内投入のニュースが好感されました。政府の「条件付き早期承認」の特例を年内にも申請する模様で、認可されれば軽症のコロナ罹患者が自宅で手軽に服用できる飲み薬が登場します。会社側は、今年中に100万人分の供給体制を整える方針を明らかにしています。

値上がりセクターの第3位は「銀行」でした。週前半に米国で再び長期金利が上昇し、それが日本でも景気敏感株を幅広く押し上げました。中でも銀行株は長期金利の上昇にはプラス方向に反応します。

ただし週後半にはその反発力も薄れました。決算発表もほぼ終了し、銀行セクターは地銀も含めて決算内容は予想以上に良好です。いったん反発局面に入ったと見られるため、

(攻略)

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鈴木一之