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2021年8月12日

株式市場はこう着感を強める、コロナ感染者数の増加が過去最高水準に

鈴木一之

◎日経平均(6日大引):27,820.04(+91.92、+0.33%)
◎NYダウ(6日終値):35,208.51(+144.26、+0.41%)

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鈴木一之です。東京オリンピックは終盤を迎えました。日本人選手団がめざましい活躍を続けており、メダルラッシュの朗報が連日のようにメディアをにぎわせています。

しかしその一方で株式市場はこう着感を再び強めています。コロナウイルスの感染増加が深刻さを増しており、その辺から慎重な姿勢が目立つようにも感じられます。

早い会社ではお盆休みに入っており、人の移動も増えています。東京都は4日連続で4000人の大台を超えており、首都圏3県と大阪府に対して緊急事態宣言が出されるとともに、まん延防止等重点措置の適用範囲が週明けから広がることとなりました。

飲食店をはじめ経済面への影響はやはり大きく、株式市場にもコロナ禍の影響が広がっているようです。8月第1週の先週は上下どちらにも動きにくく、日経平均はますますこう着感を強めました。その一方で好決算を発表した企業を中心に、個別銘柄への関心が急速に高まっています。

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マーケットの関心は次の3つくらいに絞られています。

(1)コロナウイルスの感染拡大の影響
(2)中国当局の自国企業に対する規制措置
(3)4-6月期の企業業績、決算発表

(1)のコロナウイルスの感染状況に関しては、8月5日(木)に全世界の感染者数が累計で初めて2億人に達しました。今年1月に1億人を突破して以来、半年間で倍増したことになります。

1日あたりの新規の感染者数は60万人まで増加しており、6月下旬と比較して7割も増えました。その大半が感染力の強いデルタ株に置き換えられており、ワクチン接種の遅れている新興国での増加が目立っています。工場の閉鎖などサプライチェーンの維持が再び問題となりつつあります。

日本では65歳以上の高齢者の方へのワクチン接種は8割を超えました。少なくとも1回接種を受けた人の割合も人口の45%に達しましたが、目下のところ感染拡大は20~30代や40~50代という若い世代が中心となっています。滞っていた自治体へのワクチン配布も再開されており、若年層への接種が急がれます。

先行する欧米諸国では、ワクチンの効果が切れる頃に3回目の接種を実施することが検討され始めているほどです。それに対して日本では、必要な病床数の確保にはとうとう踏み込むことなく、陽性患者に対して従来の「原則として入院」から「原則として自宅療養」に変更されたばかりです。果たしてそれで次の感染爆発の危機が食い止められるのか、「次の一手」が試されるところです。

(2)の中国政府当局による自国企業に対する規制措置は、滴滴(ディディ)や学習塾への監督強化に続いて、先週は新たにゲーム業界への統制が強められました。それが株価の急落を招いています。

株式市場における売り圧力としては徐々に弱まってきたとはいうものの、安心することはできません。中国市場に投資してきた世界の投資家にとって、今後も中国の株式市場が有望であるかどうか、中国投資を見直すべきかどうか判断が分かれています。何と言っても中国の政策トップの意図がどこにあるのか、真相がほとんど判明していないためです。

中国政府は中国企業による米国へのIPOを規制することで、中国企業をコントロール下に置いておく意向であるとの見方に立てば、中国株に対する投資は今後は手控えざるを得ません。

その一方で環境政策やEVのように、中国政府が重点政策としてうしろ盾となっている分野に関しては、従来通りに投資を続ければよいという考え方も根強くあります。世界中の投資家が当局の出方を注視しており、当分の間は動揺は避けられないかもしれません。

それでも中国の成長力への期待はあいかわらず根強く、中国株に対する下値でのニーズは引き続き強固であると考えるべきでしょう。結論を急ぐべきではないように見えます。

(3)の上場企業の決算発表に関しては、順調な回復ぶりが確認されつつあります。

先週末の段階で4-6月期決算の最初のピークを迎えました。日本経済新聞の集計によれば、8月6日までに発表を終えた3月期企業(1263社)のうち、前年比で増益となった企業(黒字転換を含む)の割合は70%を超えており、2008年4-6月期以降では最高のレベルに達しました。

前年がコロナ危機に直撃されて大幅に落ち込んでいるという点もありますが、それでもこれほどの業績回復ぶりは決算発表シーズン前の予想をはるかに上回っているのは事実です。東京オリンピックでの日本人選手のメダルラッシュとも重なって、うれしい誤算と言ってもよいでしょう。製造業の75%、非製造業の66%が前年比で増益となりました。

米国経済のピークアウト感、長期金利の低下、それなのに進むドル安・円高、そしてコロナ危機。株式市場には不透明要素が山ほど渦巻いていますが、企業は危機対応能力を高めています。成長市場もしっかりと把握しておりそこに資金と経営資源を集中させています。マクロは不安定でも、ミクロベースではかなり安定していると言えそうです。

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先週の東京株式市場は、TOPIXは3週ぶりに上昇しました。その前の週までの下落幅が比較的小さく、したがって上昇幅も+1.49%と小さなものにとどまっています。東証マザーズ指数は5週連続での下落となりましたが、徐々に下げ幅が縮小しています。

東証1部に関しては、小型株の上昇が鈍く、大型株の上昇が目立ちました。決算数字に対する株価の反応が、安定感のある大型株の方がより鮮明で、反対に変動の激しい小型株はまだ軟調な動きが続きました。グロース株よりもバリュー株の方が好まれています。

TOPIX-17業種のセクター別の騰落では、値上がりセクターは15業種に広がり、反対に値下がりセクターは2業種にとどまっています。

値上がりセクターのトップは「商社・卸売」でした。三井物産(8031)、住友商事(8053)、三菱商事(8058)など決算発表を終えた総合商社がいずれも堅調で、株価指数の上昇を牽引しました。

日鐵物産(9810)、阪和興業(8078)、丸文(7537)、ミスミグループ本社(9962)などの専門商社の株価も、決算発表を受けて大きく上昇しています。いずれも素材市況の歴史的な上昇が業績好調の背景となっています。

値上がりセクターの第2位も「鉄鋼・非鉄」です。これも商社株と同様に、特に鉄鋼株に関しては素材市況の上昇の恩恵を受けていると見られます。

また非鉄セクターは、フジクラ(5803)、昭和電線HD(5805)の電線株が決算発表から大きく上昇したのに対して、古河電工(5801)、住友電工(5802)は逆に大きく売られるという両極端の動きが見られました。

値上がりセクターの第3位は「電機・精密」です。引き続きHOYA(7741)が上場来高値を更新しており、オムロン(6645)も静かに上場来高値に接近しています。

それまでしっかりしていた日立(6501)や富士通(6702)が軟化していますが、代わって日本電産(6594)や

(後略)

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鈴木一之