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2022年8月29日

ジャクソンホールは波乱の展開。NYダウは週末▲1000ドル下落

鈴木一之

◎日経平均(26日大引):28,641.38(+162.37、+0.57%)
◎NYダウ(26日終値):32,283.40(▲1,008.38、▲3.02%)

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鈴木一之です。先週のマーケットは調整ムードの強い展開となりました。

週末に予定されているジャクソンホールにおける米国の金融会合において、パウエル議長がどのような内容の講演を行うのか、そればかりが論議されていました。

引き続きインフレ抑制を強めた「タカ派」的な内容の講演となるのか、あるいは市場が待ち望んでいる通りの「ハト派」的なスタンスに戻るのか。あらゆるマーケットが動きを止めて、息をひそめて週末の結果を待つだけの展開に終始したように思います。

日経平均は、前の週に7か月ぶりとなる29,000円の大台に乗せたあと、先週は5日続落を記録しました。さすがに短期的には調整局面が必要との見方が出ていたために、下げに対してもさほど違和感のない値動きでした。米国の長期金利が低下基調から再び上昇気味に推移したため、グロース株よりもバリュー株が息を吹き返す展開が見られました。

そして迎えた現地時間の金曜日。衆人環視の中でNY株式市場は大幅安を記録しました。NYダウ工業株で▲1008ドルの下落、▲3%を超える下げとなっています。

週明けの東京市場に影響するのは間違いないと見られますが、問題はこのあとです。日米ともにいったん下落するのは避けられないとしても、その後の回復力がいつから、どのセクターから始まるのか、それがここでは最も重要です。

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パウエル議長の講演は様々な意味で印象的でした。講演時間はわずか8分のみ。余計なことを言わず伝えたいメッセージを絞り込み、「金融引き締め政策をしばらく維持する」と言う点だけを強調していました。マーケットフレンドリーなパウエル議長としてはこれまでになく強いトーンとなっています。

それとともに「歴史は早すぎる金融緩和を強く戒めている」、「今後明らかになる経済データを踏まえて総合的に判断する」とも述べています。

次回のFOMC(9月21日)はまだ1か月も先です。その間に雇用統計に始まってISM景況感指数、月半ばのCPI、消費者信頼感指数、期待インフレ率、小売売上高、住宅着工件数など、経済データの発表が山ほど控えています。そのたびごとに長期金利と株価は上に下にと激しく揺さぶられることになりそうです。

そのたびに世界中のエコノミスト、アセットマネージャー、企業経営者が振り回されることになりそうです。これまでと同じような状況が少なくとも、あと1か月は繰り返さなくてはなりません。気の抜けない日々が続くことになりそうです。

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先週の東京株式市場は、TOPIXが4週ぶりに反落しました。連騰による目先の達成感から短期的な調整局面に入ったと見られますが、1週間の下落幅はわずか▲0.75%にとどまっています。

規模別指数で見れば、先週は大型株の動きが弱く、かえって小型株の堅調さが目立った州となりました。長期金利が少しずつ上昇しており、グロース株よりはバリュー株が優勢の展開です。特に小型・バリュー株は4週連続で上昇しています。配当フォーカス100指数も3週連続で上昇しました。

東証マザーズ指数は反落。東証REIT指数も反落しました。

テクニカル面では、高止まりしていた騰落レシオが下がりつつあります。値下がりする銘柄数が増えており、先週末は107%台まで低下しました。7月19日以来の低水準です。日経平均のサイコロジカルラインは「4」まで低下しました。

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TOPIX-17業種のセクター別騰落では、値上がりセクターが9業種まで減少しました。前の週の15業種から減りましたが、それでも幅広い物色が続いていると見ることができます。反対に値下がりセクターは8業種となりました。

値上がりセクターのトップは「エネルギー資源」です。90ドル割れまで軟化していた原油市況が反発しており、ENEOS(5020)、出光興産(5019)、INPEX(1605)などが一斉に物色されました。米国でエクソンモービルやシェブロンが大きく上昇した動きにも連動しています。

値上がりセクターの第2位は「商社、卸売」、第3位は「鉄鋼・非鉄」でした。

商社では三菱商事(8058)、三井物産(8031)の大手商社が一貫して上昇しています。ロシアの「サハリン2」の新会社への出資がどうなるのか、非常に不安視されていましたが、継続して出資する方向で決定する模様であらためて安心買いが広がりました。双日(2768)、丸紅(8002)、豊田通商(8015)も堅調です。

資源価格が再び上昇に転じていることから、アルコニックス(3036)、松田産業(7456)の金属リサイクルに関連する企業や、阪和興業(8078)、白銅(7637)の金属商社がしっかりした値動きとなっています。

鉄鋼、非鉄金属の各社も、日本製鉄(5401)、神戸製鋼所(5406)、共英製鋼(5444)、大阪チタニウム(5726)、古河電工(5801)、フジクラ(5803)など、総じて堅調な値動きです。

反対に値下がりセクターの上位には「電機・精密」を筆頭に、「情報通信・サービス」、「自動車・輸送機」という時価総額の上位セクターがそろって登場しました。

米国で再び長期金利が上昇し始めており、グロース株が全般に頭の重い展開に変わりつつあります。エレクトロニクスでは日本電産(6594)、ファナック(6954)、パナソニック(6752)、NEC(6701)の下げが目立ちました。

精密では島津製作所(7701)、情報通信ではオービック(4684)、Zホールディングス(4689)、スクウェア・エニックス(9684)などが軟調です。ただ、いずれのセクターも大きく値を崩す銘柄が存在しないのが現在の特徴でもあります。

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マーケットの変動性がさらに激しくなることも予想されますが、ひとつだけ良い点があるとすれば、世界中の投資家、市場関係者がいまや横一線に立たされたということです。判断のむずかしい局面では、無理して財産を突っ込むことはせず、ある程度安定した見通しが得られてから動き始めてもけっして遅くはありません。

1970年代末から80年代がそうだったように

(後略)

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鈴木一之