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2022年9月6日

ジャクソンホール以降の波乱が続く、ドル円相場は140円台に乗せる

鈴木一之

鈴木一之です。9月になりました。9月1日は防災の日、台風シーズンでもあります。心してかからなくてはなりません。

株式市場も9月早々から波乱の展開となりました。ジャクソンホールでのパウエル議長の講演がそのまま尾を引いています。

議長講演は8分間という異例の短いものでしたが、伝えたいことは世界中に十分過ぎるほど伝わりました。論旨はきわめて明確で、インフレを抑制するまで金融引き締めを続けるというものです。

物価の上昇を抑え込むために景気を犠牲にするという、これ以上明確な見解はないというほどタカ派的な内容に終始しました。これまではマーケットに優しい顔を見せてきたFRBのことですから、どこかで利上げの手を緩めるだろうと株式市場は淡い期待を抱いていましたが、今回は完全に打ち砕かれました。

NYダウ工業株は連日の大幅安となっています。NASDAQは議長講演以降、まだ1日も上昇しておりません。日経平均も先週は大きな下落を余儀なくされました。東京市場ばかりでなく世界中の株式市場が少なからぬ下落となっています。

一方、原油をはじめとしたコモディティ市場もそろって軟調です。銅、アルミニウムなどの金属市況も不安定な動きに終始しており、世界の景気は弱い方向に向かっていることがうかがえます。

米国では長短金利の逆転現象が続いており、それに合わせるかのように半導体、非鉄金属、石油化学などの景気敏感株も軟調な値動きとなっています。

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6月は0.75%の利上げによって景気の「オーバーキル」、リセッション懸念が株式市場を急落させました。そこから7月から8月半ばにかけて、急激な政策金利の引き上げによってインフレ抑制が成功しつつあるとの感触から、株式市場は一転。反発局面が継続することとなりました。景気にとって悪いニュースは市場にとってよいニュース、という理屈です。

しかしそれには少し無理があったようです。流れがまたもや転換しつつあるようです。景気にとって悪いニュースは市場にも悪いニュースとなるのか。信用失墜となったFRBは市場からの信頼を回復することができるのか。できないまま年を超えるのか。答えは今週以降に持ち越された形となります。

最初の関門は先週発表されたばかりの米国の8月・雇用統計です。非農業雇用者増は+31万5000人、失業率は3.7%でした。7月の3.5%から7か月ぶりに上昇していますが、求人件数は7月に1123万件に達しており、米国は空前の人手不足の状態が続いています。これによって平均時給の伸びも+5.2%と高い伸びが継続しています。

週末の米国市場では、10年国債金利はわずかに低下したものの、NASDAQは6日続落となっています。週明けの東京市場も軟調な展開となりそうな雲行きです。振り落とされないようにしっかりと構えてかからないとなりません。

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先週の東京株式市場は、TOPIXが続落しました。下落率は▲2.50%に拡大し、6月第3週のCPIショックの時の▲5.52%以来という大きさです。

規模別指数では、大型株から小型株まで幅広く下落しましたが、中でも大型株の下げが目立ちます。日本でも長期金利が少しずつ上昇しており、それが大型株の下げにつながっている模様です。

グロース株に下げが目立ち、バリュー株も4週ぶりに下落しました。東証マザーズ指数、東証REIT指数も続落しました。堅調だった配当フォーカス100指数は4週ぶりに下げました。2月/8月決算企業の配当落ちの影響もあるかと思います。

テクニカル面では、高止まりしていた騰落レシオが急低下しています。値下がりする銘柄数が増えており、先週末は92.94%まで下がりました。100%を下回るのは7月15日以来のことです。

日経平均のサイコロジカルラインは今年初めて、ボトム圏となる「3」まで低下しました。こちらは2021年10月13日以来の低水準です。ここから5日間、応当日としてはマイナスの日が続くため、週明けからはサイコロジカルラインは上昇しやすくなります。

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TOPIX-17業種のセクター別騰落では、値上がりセクターはゼロ、すべての業種が値下がりしました。全業種が下落するのも今年初めてのことです。

全ての業種が値下がりするほどの軟調な地合いの中で、最も大きく値下がりしたセクターが「電機・精密」でした。2週連続でワースト(17業種中の第17位)となっています。

時価総額の大きなソニーG(6758)、キーエンス(6861)、東京エレクトロン(8035)、キヤノン(7751)、富士通(6702)、ミネベアミツミ(6479)、安川電機(6506)など、エレクトロニクス業界の顔とも見られる銘柄が軒並み下落しています。

先週の金融市場の特徴のひとつが、為替市場でドル高・円安が進行したことです。円相場は24年ぶりとなる1ドル=140円台まで下落しました。しかもまだ先安感が残っており、147円が視野に入っているとされています。

そのような円安・ドル高にもかかわらず、伝統的に「円安メリット」を最も享受すると見られてきたエレクトロニクス業界の株価が最も値下がりしています。この事実は非常に重要です。

絶好調が長期にわたって見られた半導体セクターが徐々に受注減少の陰りが見られることが響いています。そのほかにも、中国経済が計画停電やロックダウンの影響で弱いまま推移していること、スマホ、タブレット、PCの生産がコロナ特需の反動で軟調なこと、「Web3.0」への移行が始まっており米国の大手プラットフォーマーにかつての勢いがないこと、などが考えられます。

しかし同じ「円安メリット」セクターの自動車業界の株価は、たしかにトヨタ自動車(7203)、デンソー(6902)などが先週は急落する場面もありましたが、それ以外の自動車株はホンダ(7267)、三菱自動車(7211)、スズキ(7269)、マツダ(7261)などから堅調な動きを維持しています。自動車部品株も健闘しています。

要するに、円安・円高という為替市場の変動だけで、その業界全体の収益動向をまとめて見通すことはむずかしくなっているということのようです。第1四半期の決算発表の場でも、円安による収益の伸びが以前ほど株式市場で評価されなくなっていました。いくら業績がよくても、それが為替メリットだけというケースではむしろ株価は値下がりしていました。

やはり当たり前のことですが、株式投資では個々の企業の経営戦略、売れ筋商品の見極めが最もたいせつな要素であることが再認識されつつあります。ファンダメンタル重視の業績相場の色彩がますます強まっています。

「電機・精密」に続く値下がりの大きなセクターの第2位は「商社・卸売」でした。反発局面を迎えていた原油市況が再び軟化しており、WTI先物で90ドルを割り込みました。海運市況も不定期船運賃が弱い動きを続けており、銅やアルミなど金属市況も軟調です。三菱商事(8058)、三井物産(8031)、丸紅(8002)など景気動向に敏感な総合商社の下げが目立っています。

値下がりセクターの第3位は「機械」でした。このセクターも景気動向に敏感な分野です。特に目立って下落した銘柄はありませんが、半導体関連の栗田工業(6370)を筆頭に、クボタ(6326)、荏原(6361)、ダイフク(6383)などが軟調な動きでした。

このほかにも「素材・化学」や「エネルギー資源」、「鉄鋼・非鉄」など、景気動向に敏感な業種が軟調です。

反対にさほど値下がりしていないセクターとしては「医薬品」、「運輸・物流」、「食品」など、いわゆるディフェンシブ的な業種が並びました。医薬品では第一三共(4568)が高値圏でしっかりしています。

鉄道株ではJR東日本(9020)、JR西日本(9021)、JR九州(9142)などがそろって物色されました。岸田首相より水際対策の追加的な緩和策が発表され、海外からの渡航者は1日2万人から5万人に拡大されます。インバウンド消費の復活がますます期待され、JAL(9201)、ANA(9202)もしっかりした動きです。

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さて9月相場です。政治家の夏休みもようやく終わり、今年の後半戦がここから始まります。

マーケットでは「秋は魔物が棲む」と言われます。9月から10月にかけて株式市場が歴史的な急落を演じることが多く、そのような言い伝えが広まったようです。

有名な1929年の「暗黒の木曜日」は

(後略)

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鈴木一之