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2020年9月13日

不安定なNY市場に対して、東京市場は堅調を維持

鈴木一之

◎日経平均(11日大引):23,406.49(+171.02、+0.74%)
◎NYダウ(11日終値):27,665.64(+131.06、+0.47%)

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鈴木一之です。セミの声はもう聞こえません。9月相場が本格的に始まりました。

それと同時進行で自民党の総裁選と野党連合の代表戦が行われています。忘れてならないのが米国の大統領選挙です。

季節の変わり目に差しかかり、政治も経済も大きく動きつつありますが、その実、顔ぶれにはさほど変化はなさそうです。コロナ危機の真っただなかにあり、世界的に見ても社会の在りようと経済環境は激しく変わっているのですが、政治の世界はさほど変化は求められていないようです。

ところが視点をマーケットに転じると、こちらでは大きな変化が始まっているようでもあります。新進気鋭のハイパー成長企業と、それに対して旧来型のオールドエコノミーとのせめぎ合いです。

それぞれの背後に付いているのは、ウォーレン・バフェット氏と孫正義氏です。バフェット氏が率いるバークシャー・ハサウェイが日本の総合商社株を大量に購入したことは、少なくとも日本のマーケットでは大ニュースとなりました。その余韻は第一報が伝えられて2週間が経過した今も響きわたっています。

そのニュースからさほど日を置かず、孫正義社長率いるソフトバンクグループ(9984)がいわゆる「GAFA」株のコールオプションを大量に保有していることが報道されました。この1週間というもの、日米はもちろん、世界中の株式市場でこれらふたつの話題が議論の的となっています。

ソフトバンクGは「ヴィジョンファンド」を通じたスタートアップ企業への投資コロナ危機でが壁に突き当たり、今度は「GAFAM」に代表される米国の上場テクノロジー企業を大規模に保有していることが判明しました。それどころか、それらの個別株オプションをコールで大量に保有している模様です。(一説には500億ドルにのぼります。)

バークシャーハサウェイにしても、ソフトバンクGにしても、会社側からの正式な発表や報道に対するコメントは出ておりません。しかしマーケットは両方の話題でもちきりです。

カリスマ性を基準にしても、保有する資産価値、世界有数の資産家としての名声、それらすべてをとっても話題性には事欠きません。今回、両社の投資先とされているのが両極端の性格を有している点においても対照的です。

単にグロース株か、バリュー株かという銘柄選定の問題にとどまりません。割安株というには極端に割安すぎる状態まで下落した銘柄の代表格となった総合商社、それを超長期で保有することで知られるバフェット氏の投資哲学。

その対極に位置するかのように、ソフトバンクGは「データエコノミー」時代を疾走する超成長企業を超短期のコールオプションで大量に保有しています。EUをはじめ各国はプラットフォーマーの国際的な活動に法規制をかけようと躍起になっており、個人のプライバシー侵害の問題やニュースメディアへの影響力に対して網をかけようとしています。

しかしそれらはいずれもうまく行っておりません。米国での議会公聴会も難なく乗り切りました。

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北半球のバカンスシーズンが終わりを迎え、それとともにコロナウイルスに加えて、秋から冬にかけての季節的なインフルエンザの流行が心配されるようになってきました。

過去1~2週間の感染状況は、日本では徐々に新規の感染者数が減少していますが、韓国やスペインをはじめ諸外国では反対に感染者数が再び増加傾向にあります。

日本では「GoToトラベル」キャンペーンに、東京発着分が追加される可能性が持ち上がっています。しかし英国、フランス、スペイン、韓国では再び一部地域での行動規制が強化されつつあります。経済活動への影響が心配される事態となっています。

それでも日本では、7月の機械受注が予想を上回る好調さを示し(前月比+6.3%)、8月の工作機械受注もマイナス幅は3か月連続で縮小に向かっています。中国の自動車販売は8月も2けたの伸びを示しました。

こうしたマクロ経済統計上のデータがそろうたびに、オールドエコノミー的な銘柄が復活するきっかけとなります。先週の動きに限って言えば、鉄鋼、化学、セメント、繊維、機械、海運などの景気敏感株の値動きが良好でした。反対に、米国のNASDAQに代表されるテクノロジー銘柄は頭の重い展開が続きました。

グロース株かバリュー株か。双方のせめぎ合いは簡単には決着がつきそうにありません。まだしばらくはこのような行ったり来たりの展開が続くのでしょう。

どちらが勝ち、どちらが負けるのかということでもありません。経済の流れ、景気の現状、人々の行動そのものが自然と答えを出してくれることになるのだと思います。

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先週の東京市場は、TOPIXが3週続けての上昇となりました。5月末から6月初旬にかけて同様に3週連続高がありましたが、この時も現在と同じようにバリュー株の上昇によってもたらされました。そしてこの時に日経平均はその当時の戻り高値、23,185円を記録しています。

最近になって多く指摘されるのは、東京市場とNY市場の「非」連動性です。これまでNY市場の写真相場と呼ばれることの多かった東京市場が、米国とは違った足取りを見せ始めています。

とんがり過ぎるくらいにとんがったNY市場、特にテクノロジー株に対して、東京市場はここまでほとんど追いつけませんでした。それがかえって幸いしている可能性があります。

利益水準も市場の厚みも元から違います。前例踏襲が金科玉条の官僚機構が牛耳っている日本と、シリコンバレーが次々に新しい革新を生み出す米国とではそれだけで息づかいが異なります。それがよいか悪いかはともかく、ここまで来ると逆回転し始めている可能性もあります。

現在も出来高はさほど盛り上がっているわけではありません。したがって中・小型株が優勢の展開となっています。それでも先週と同様に、徐々に上場来高値を更新する大型株が目につくようになっています。

先週も信越化学工業(4063)、日本電産(6594)、オムロン(6645)、日本取引所G(8697)、ウエザーニューズ(4825)などが上場来高値を更新しています。ファーストリテイリング(9983)も最高値に静かに迫っています。

東証マザーズ指数は小幅反落しました。東証REIT指数も6週ぶりに反落しています。

東証1部のセクター別の騰落では、TOPIX-17業種のうち15業種が値上がりし、2業種が値下がりしました。

上昇の大きかったセクターは、トップが「鉄鋼・非鉄」でした。景気敏感株の代表格である鉄鋼株が幅広く買われています。

上昇率第2位には「運輸・物流」が入っています。日本郵船(9101)、商船三井(9104)の海運株の上昇が目立っていますが、それに加えてJR東海(9022)やJR東日本(9020)が大きく上昇し始めています。

「GoToトラベル」キャンペーンの拡充策が好感されているものと見られ、セクターは異なりますが、オリエンタルランド(4661)や楽天(4755)も賑わいました。

その他にも値上がり上位のセクターとして「電機・精密」や「素材・化学」が含まれています。前の週の総合商社の急騰に続いて、おそるおそるとですが景気の底入れを感じさせる動きが株式市場でも始まっているように感じられます。

個別銘柄では、夢真(2362)、カチタス(8919)、バンダイナムコ(7832)、JKホールディングス(9896)が堅調です。堅調な銘柄は見た目以上にたくさんあります。クニミネ工業(5388)、ニチハ(7943)、LTS(6560)、アルファシステムズ(4719)もいいですね。マザーズ上場銘柄ほどにはとんがってはいない、中・小型株にしっかりした銘柄が目立ちます。

反対に値下がりの目立ったセクターでは、「自動車・輸送機」が小幅ですがマイナスとなりました。

自動車セクターの周辺では、ベアリングの日本精工(6471)、ジェイテクト(6473)、工作機械のツガミ(6101)、オークマ(6103)がしっかりし始めているものの、当の自動車セクターにはまだ明確な上昇トレンド入りの兆候は見られません。

長らく下落基調を続けていたマツダ(7261)、三菱自動車(7211)が下げ止まりつつあるという程度で、タイヤのブリヂストン(5108)、

(後略)

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鈴木一之