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2020年8月31日

安倍首相が辞任、週末に大きな波乱

鈴木一之

◎日経平均(28日大引):22,882.65(▲326.21、▲1.41%)
◎NYダウ(28日終値):28,653.87(+161.60、+0.56%)

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鈴木一之です。2018年7月の西日本豪雨、台風21号、24号と北海道東部地震で被害に遭われた皆さま、並びに2019年の台風15号、19号、21号で被害に遭われた東日本の皆さま、コロナウイルスに感染された皆さま、さらに今回の九州・熊本地方の豪雨で被害に遭われた皆さまに心よりお見舞いを申し上げます。

8月も終わります。学校はすでに授業が始まっていて、コロナ危機の夏休みは思い出らしい思い出がほとんどないまま過ぎ去ってゆきます。

と思いきや、あまり思い出したくなりような記憶ばかりが残りそうな夏の暮れです。安倍首相が先週末に辞任を表明しました。マーケットのみならず、ただでさえ猛暑の続く日本の昼間が騒然となりました。

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安倍首相が辞任するとの第一報がニューステロップで流れたのが金曜日の午後2時を少し回ったところです。週末の取引終了まであと1時間というところまで来て、何ごともなく平穏に週の取引を終えそうなところでしたが、そこからがたいへんでした。

日経平均は+200円近い上昇から、一時は▲600円を超える下落に変わり、それだけで株式市場の混乱が手に取るように伝わってきます。結局のところ大引けでは▲326円の下落で終わりました。

金曜日の夕方からの会見によれば、8月17日(月)に病院で半日以上の人間ドック検査を行い、そこで再検査の診断を受け、8月24日(月)に再び病院を訪れて海洋性大腸炎の再発が確認されたとのことです。それが直接の辞任の原因となりました。

7年8か月にわたる首相という激務、お疲れさまでした。国会議員は続けるとのことですので、どうぞ体調を万全にして再び国政の場で力を発揮されてください。そう祈らずにはいられません。

今となってはかなり色あせてきましたが、第2次安倍政権が発足した直後の「アベノミクス」への期待はたいへんなものでした。長引くデフレからの脱却と、「6重苦」と言われるような国際競争力を喪失したままの製造業、その復活を賭けた円高の是正、さらには出口の見えない年金や医療保険の社会保障制度の立て直し、人口減少と高齢化などなど。

日本を覆っていた暗雲や数限りない将来への不安を、同時に一度で解決する唯一の手がかりが「アベノミクス」でした。安倍政権が誕生した直後には、当事者である日本人以上に外国人投資家の方が驚いていたように記憶しています。

今となっては結果が出ずに評価も厳しくなっていますが、日銀による空前の規模となる量的緩和と国土強靭化計画、成長戦略のミックス。まさにアメリカ復活を導いた「レーガノミクス」になぞらえての「アベノミクス」でした。

それがこのような形で幕を閉じることとなります。後任の首相(自民党総裁)には菅義偉官房長官の名前も挙がっていることから、すぐには大きな政策の転換はないにしろ、ひとつの大きな時代の区切りに差しかかったことは事実です。

目の前にはいくつもの難問が立ちはだかっています。コロナウイルスの終息、底割れしそうな経済の立て直し、東京オリンピック・パラリンピックの開催、ファーウェイ製品の排除、その根源である米中対立、猛暑・暴風雨など地球環境問題、そして米大統領選挙。第2次安倍政権がスタートした8年前よりも、現在の方が何倍も世の中の不透明要素が積み重なっています。

この局面をなんとかしのぎ切れるのでしょうか。時間はまったくありません。自民党総裁としての1年間の残りの任期だけとなる危機対応内閣。選挙管理内閣なのかもしれませんが、早く次の首相を決めて政策の滞りを起こさないようにしてもらいたいものです。

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先週の東京市場は、TOPIXが2週ぶりに反発しました。ただし基本的には大きな方向性が出ず、週末の下げが大きいため、週間での上昇率はわずか+0.05%にとどまりました。

出来高の減少が続いているため、引き続き小型株が全体の動きをリードしていましたが、それも週末にかけて急転しました。東証マザーズ指数を中心に上昇の目立っていた銘柄から大きく売られています。

リスク回避の動きが強まり、派手に値上がりしていたものから売られています。週明けもまだしばらくはこのような動き(小型株が不利)が続く可能性があると見られます。

バリュー株vsグロース株のせめぎ合いでも、バリュー株が後退し始めていたバリュー株が再び勢いを取り戻しました。高い位置にあるグロース株が売られ、低い位置にあるバリュー株に資金が流れやすくなっています。東証REIT指数は4週連続の上昇となりました。

東証1部のセクター別の騰落では、TOPIX-17業種のうち10業種が値上がりし、73業種が値下がりしました。

上昇の目立ったセクターでは、トップが「銀行」、「金融(除く銀行)」です。米国で金利上昇が目立つようになっており、ここでもバリュー株の流れから銀行株が上昇しやすくなっています。

続いて「運輸・物流」も上昇しました。これまで一貫して売られてきたJR東日本(9020)、JR西日本(9021)、東急(9005)、西鉄(9031)など電鉄株がずいぶんと動きやすくなっています。これもバリュー株の流れです。

さらに「機械」や「素材・化学」などの景気敏感株も週を追うごとに明るさが増しています。この辺はすべて自動車セクターとの絡みというところが色濃いのですが、自動車株もしっかりし始めています。工場の生産再開が徐々に進んでいます。

反対に値下がりの目立ったセクターとしては「医薬品」がワーストで、それに続いて「小売」、「食品」など景気動向とは対極にあるセクターが軟調でした。中でも小売株は前の週に健闘していた反動が目立ったように思います。

マザーズ市場の銘柄が週末に急落したために、東証1部でも「情報通信・サービス」が軟調でした。今後もデジタルトランスフォーメーション関連株の人気は折に触れやってくると見られますが、市場を取り巻く環境が不透明に急速になってきただけに、ひとまずは利益確定の売りが先行しそうな動きです。

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さて、「アベノミクス」です。看板政策はいったんは降ろされることになります。それに伴って、閣僚の顔ぶれが一掃されるのと同じように、物色対象も変わるところと変わらないところが次第に鮮明になってくるのではないでしょうか。

ひとまず変わらないところとしては、先週末に新高値を更新したJCU(4975)、

(後略)

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鈴木一之