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2021年9月22日

中国リスクを警戒して調整ムードも漂うが、日経平均は週足陽線で続伸

鈴木一之

◎日経平均(17日大引):30,500.05(+176.71、+0.58%)
◎NYダウ(17日終値):34,584.88(▲166.44、▲0.47%)

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鈴木一之です。秋のお彼岸を迎えました。日本ではこの週末、台風14号の上陸による大雨の影響が心配されました。セミの声は日に日に弱まって、夕方の虫の音が涼しげに聞こえてきます。

日本では自民党総裁選が告示され、いよいよ各候補による本格的な論戦が始まりました。経済対策が気になるところですが、それについては後段で述べるとして、まずは国際情勢からです。先週のマーケットは世界中が神経質な動きに陥りました。焦点のひとつは米国、もうひとつは中国です。

米国の株式市場は9月第2週に、NYダウ工業株で5日続落を記録しました。先週(9月第3週)は少し持ち直したものの、いまだに軟調な動きが続いています。

米国のテキサス州ではハリケーン「ニコラス」が上陸し、ひとつ前の「アイダ」による市街地への甚大な被害もあって原油価格への影響が注目されました。資源価格は依然として上昇と高止まりを続けています。

ここまで来るとエネルギー価格が物価に与える影響が心配されます。今週は米国でFOMCが開催され、いよいよテーパリングが決定されるのか、あるいは次回に見送られるのか。そのカギを握るのが物価動向と雇用情勢です。それを前にしての神経質な議論が続いています。

コロナウイルスへの対策としては、先行した米国でもワクチンの接種率が頭打ちとなっています。スタートダッシュはよかったのですが、積極的に打つ人はほぼ打ち終えて、ここからは積極的に打たない人への普及度をどう上げていくか、難問が待ち受けています。

現在のところ米国の接種率は50%を少し上回るくらいで、出遅れていた日本にも追いつかれる始末です。体質的に接種できない人は仕方ありませんが、心情的に接種しない人に普及させるのは至難の業です。

しびれを切らして米国では、政府機関、民間企業、大学での接種の義務化が広まっています。自由を尊ぶお国柄とは相いれませんが、すでに欧州では域内においてワクチンパスポートを発行し、国境を超えた移動を容認しています。

経済再開を図るのであれば米国も国境を開放したいところですが、それにはワクチン接種が最低の条件となります。陰性証明は48時間しか効力が持たず、繰り返し受けるには個人負担のコストがかかります。

強制的な手段によるべきなのか、米国民の自主的な判断に任せるのか。経済再開で欧州に遅れを取っている米国の次の出方は、日本にも同じことがそのままあてはまります。

防衛軍事面では、オーストラリアへの原子力潜水艦の配備を巡って、フランスが米国と豪州から大使を召還しる事態となりました。このまま米仏が深刻な対立に発展するとは考えられませんが、アフガニスタンからの米軍撤退における想像もしなかったような不手際と重ねて、バイデン政権と主要国との対話姿勢が次第に問題を広げつつあるようにも見えます。

アフガン撤退に関しても、ブリンケン国務長官やオースティン国防長官が止めたにもかかわらず、バイデン大統領は即時撤退の道を選んだとボブ・ウッドワード氏は最新の著作で指摘しています。来年の中間選挙ではかなり苦戦しそうな雲行きとなってきました。

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原潜問題の先には中国の存在があります。先週は市場の関心が中国に集中しました。

中国の経済統計がいまひとつ思わしくありません。9月15日(水)に発表された中国の8月の工業生産は前年比+5.3%で、20207月以来の低い伸びにとどまりました。海運市況の高騰に見られるような国際物流の停滞と、半導体不足による自動車生産の落ち込みが映し出されている模様です。

同じく8月の小売総額(小売売上高)も前年比+2.5%の増加にとどまっています。飲食店が▲4.5%と落ち込んでいることが響いています。

さらに中国の不動産大手、恒大集団の資金繰り問題も世界中から警戒されています。恒大集団の債務額は債券発行だけで266億ドルに達し、うち7割が海外投資家向けに発行されたドル建て債です。これがデフォルトを起こすリスクが指摘され、社債の流通利回りは瞬間的には50%に達しました。

恒大集団は先週、同社が破産するとの観測を否定する正式なコメントを発表しましたが、市場の動揺は収まっておらず、週半ばには香港の株式市場が急落しました。日本でもマンションに据え付けられる衛生機器のTOTO(5332)が急落し、鉄鋼株や不動産大手も一斉に下落しました。

恒大の苦境は借入金の多さもありますが、同時に中国政府による不動産市場への締め付けの強化が原因という側面もあります。最後には中国政府が出てきて混乱を終息させるとの見方も根強いのですが、それでも先行きが見えないまま市場心理は揺れ動いています。

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部分的には高値波乱の動きも見られますが、全体的には東京株式市場は先週も堅調な動きを続けています。日経平均は3万円の大台をキープしており、小型成長株から大型バリュー株まで循環物色が健在です。

9月17日(金)に自民党総裁選が告示され、実質的に日本の首相を決める選挙戦がスタートしました。その日のうちに特派員協会が主催する公開討論会が開催され、それぞれの候補の政策が比較検討されます。

最後の最後になって野田聖子氏が立候補したことで4人の候補で争われることとなり、1回目の投票で過半数を取ることはむずかしくなっています。

そうなると決選投票にもつれこみそうで、2回目の投票は国会議員票が重みを増してくることから、派閥を敵に回したくないためなのか、どの候補も現在の菅政権、およびひとつ前の安倍政権を批判するような姿勢は封印しています。そのために奥歯にモノのはさまったような答弁が続き、4人の候補の政策の違いがわかりにくくなっています。

焦点となっているコロナ対策に関しては、河野太郎氏と高市早苗氏がロックダウン法制を検討課題に挙げています。岸田文雄氏は「健康危機管理庁」の創設を訴えており、野田氏は臨時病床を確保することを真っ先に紹介しました。

コロナ対策と並んで大きな争点となる「脱炭素」エネルギー政策では、全員が原発再稼働を容認する方向です。もともとが再稼働反対派の河野氏は、選挙を意識した発言とは別に、使用済み核燃料の処理に関してやはり問題だと指摘しています。

高市氏の主張する核融合炉は夢の電源として全人類の期待が寄せられますが、しかし言うは易く行うは難し。太陽と同じ原理なので技術的には超絶むずかしく、開発にこぎつけるには最低でもあと50年はかかるはずです。

経済対策でも各候補の政策にはほとんど差がありません。安倍政権と菅政権の合わせて9年間で「アベノミクス」を続けているために、財政および金融政策はもはやこれ以上新しい基軸を打ち出しようがないほどの地点まで来てしまっています。

ただひとり、岸田氏だけが少しだけ異なった路線で「新自由主義からの転換」を打ち出しました。格差是正を中心に分配の議論にまで踏み込むスタンスを示しています。「アベノミクス」が積み残した規制緩和、成長戦略に関して、各候補の政策がどこまで言及できるか、その辺りにしか議論の余地はなさそうです。

最初の上昇圧力が一巡して、マーケットは国内外の情勢の進み具合を見たいというスタンスを見せています。さらに議論が深まるであろう今週以降の動静が、相場の今後の動きを左右するカギを握っていそうです。

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先週の東京株式市場は、TOPIXは4週連続の上昇となりました。バイデン政権誕生の直後、今年1~2月以来の連騰ですが、上昇率は+0.41%にとどまり、その前の週の+3.78%からは大きくダウンしました。

物色動向は引き続き小型株に集中しています。大型株も上昇していますが、小型株の上昇が目立っています。大型株指数の+0.26%に対して小型株指数は+1.20%に達しました。

ただし東証マザーズ市場は反落し、▲1.08%と4週ぶりに反落しました。東証REIT指数は3週連続で値下がりしています。

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TOPIX-17業種のセクター別の騰落では、値上がりセクターは13業種、値下がりセクターは4業種となりました。

値上がりセクターのトップは「エネルギー資源」です。米国南部への相次ぐハリケーンの上陸により原油価格は強含みで推移しています。出光興産(5019)、コスモエネルギー(5021)が週を通じて大きく動きました。

値上がりセクターの第2位が「運輸・物流」です。連日のように海運セクターが大商いで株価も上昇しており、それに続いてSGホールディングス(9143)、

(後略)

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鈴木一之