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2023年10月23日

中東情勢の緊迫と金利上昇、日経平均は週足で反落、終値で31,000円台

鈴木一之

鈴木一之です。先週も目まぐるしい1週間でした。イスラエルによるガザ地区への地上戦開始の不安、そして長期金利の急激な上昇が続いています。

日経平均は週足で反落し終値で32,000円台を割り込みました。イスラエルときわめて近い関係にある米国はより深刻で、NYダウ、NASDAQともに3日続落の週末です。マーケットどころか地球全体に暗雲が立ち込めています。

現在のマネー市場は、(1)地政学リスクの高まり、(2)インフレ、および米国の金融政策、(3)企業業績、政府の産業政策、の3つの方面からネガティブな圧力を受けています。いずれも巨大なパワーです。

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(1)地政学リスク

10月7日に武装組織・ハマスがイスラエルに大規模なロケット攻撃を開始して丸2週間が経過しました。この間、イスラエル軍がパレスチナのガザ地区への全面攻撃をいつ始めるのか、世界中が次に展開される恐るべき状況を息を殺して見守っています。

バイデン大統領とネタニヤフ首相との会談が急きょ行われたことが事態の深刻さを表しています。両者が会談してもその成果は今のところ、ガザ地区への支援物資の搬入が細々と開始されたという程度にとどまっています。

この間もイスラエル軍による空爆は続き、民間人を中心に双方で数千人単位の民間人が死亡しています。そうした状況で、イスラエル軍の地上戦開始の準備が着々と進められている模様です。

先週も週明けから東京株式市場は全面安の展開で、日経平均は一時700円を超える下落となりました。その後も週を通じて同じような展開が続き、抵抗もなく週末値で32,000円の大台を下回っています。

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(2)インフレ、および米国の金融政策

前週はFRB高官による望外のハト派的な発言が多く見られました。これを好感して株式、債券市場の緊張も一瞬はやわらいだのですが、しかし今週は9月・米小売売上高が予想以上の強さを示したために、再びインフレ警戒が高まり、金利上昇に弾みがつきました。

中心となる米10年国債の利回りは4.9%台に乗せ、終値での5%突破が目前に迫っています(週末は4.92%)。これは2007年以来の高水準です。

FRBのパウエル議長は10月19日(木)の講演で、経済の高い成長と雇用のひっ迫が続くのであれば「さらなる引き締めが正当化される」というタカ派的な見解を述べています。

追加的な利上げもありうるとの認識を示し、FRB高官によるこのところのハト派的な見解にクギを刺した形となります。すでにFOMC前のブラックアウト期間に入っているため、金融当局高官からのコメントは聞けなくなります。

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世界で最も元本の安全性が確保されている米国債の利回りが5%であれば、無理にリスクを取って運用する必要もなく、黙って米国債を購入しておけばよいという意識が前面に出ます。リスク資産である株式から債券へと資金が大きくシフトしています。

しかし今のマーケットはそれほど単純ではなく、物価の上昇圧力と財政の拡張政策への懸念から、債券も株式と同時に売られている状況です。米議会は下院議長の選出にてこずっており、1か月後にはつなぎ予算の期限も控えているため、10月末には議会運営への懸念も加わる恐れがあります。

それでも世界が冷静になってくれば、高利回りに着目した債券投資に市場の関心が向くことになると見られます。れはそれで反対側にある株式市場にとって不利な状況が生まれることにもなります。

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(3)企業業績、政府の産業政策

日米で主要企業の決算発表、各国政府の産業政策が盛んに伝わっています。

大きなニュースとしては、米国政府による中国への半導体規制の強化策が明らかになりました。AIに使われる最先端半導体の輸出を厳しくするもので、エヌビディアが対象になるとみられます。

米政府は17日(火)、先端半導体の対中輸出規制を改定すると発表しました。導入から1年が経過した実効性の検証によるものです。

今回の追加の規制措置は、これまでの規制を回避する形で中国に輸出されている製品が対象となっています。これはエヌビディアの先端半導体をターゲットにしていると見られます。これによって今後は規制逃れの製品も輸出ができなくなり、エヌビディアの株価が急落しました。

先週もラムリサーチ、ASMLなど半導体企業の決算が悪化する見通しが明らかになり、半導体セクターの株価がいずれも軟調です。

TSMCの7-9月期の決算は、売上高が5467台湾ドル(▲10.8%)、純利益は2110億台湾ドル(▲24.9%)で2四半期連続で減収・減益となりました。「iPhone15」向けの需要増への期待はありますが、世界的な景気減速による在庫調整が続いています。

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日本では3月決算企業の先陣を切って、半導体関連のディスコ(6146)の決算発表がありました。

ここでもスマホやPCの需要低迷が響いて、4-9月期の売上高は1262億円(▲9%)、純利益は327億円(▲20%)となりました。得意とするダイサー、グラインダーが市場予想ほどには伸びていません。

ディスコは次の四半期までの見通ししか発表せず、続く4-12月期の見通しも純利益は481億円(▲16%)で、モメンタムは弱めに傾いています。これを受けて金曜日のディスコの株価は大きく下落しました。ディスコに続くエレクトロニクス全般の企業業績が警戒されつつあります。

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先週の東京株式市場は、TOPIXが反落しました。下落率は▲2.30%と大きくなっています。前週は+1.97%の反発を見せましたが、悪材料があちこちから噴出し早くも軟化しました。

規模別指数では、大型株の下げが目立ちます。大型株(▲2.40%)に対して、小型株は▲1.44%と比較的小さな下げにとどまりました。東証マザーズ指数は3週連続の下落で▲3.80%に拡大しました。

スタイル別では、再びグロース株の下げが広がっています。バリュー株は▲1.84%の下げにとどまりましたが、グロース株は▲2.83%に強まりました。

騰落レシオは低下しており、週末は82.17%となりました。最も低いところは81.88%まであります。日経平均のサイコロジカルラインは週末にかけて「6」の水準を3日間続けています。

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TOPIX-17業種のセクター別騰落では、値上がりは1業種にとどまり、16業種が値下がりしました。

値上がりトップは引き続き「エネルギー資源」です。原油価格が再び強含みの推移となっており、INPEX(1605)を筆頭に

(後略)

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鈴木一之