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2021年4月14日

全面高と全面安を繰り返しながら、日経平均は再び3万円にタッチ

鈴木一之

◎日経平均(9日大引):29,768.06(+59.08、+0.20%)
◎NYダウ(9日終値):33,800.60(+297.03、+0.88%)

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鈴木一之です。4月になり先週は中学校、高校、大学の入学式が数多く実施された模様です。電車の中で緊張した面持ちの新入生と親御さんをたくさん見かけました。

新入生とか入学式という言葉には古い記憶をかき立てる強い力があるように思います。緊張感と初々しいが入り混じって、実に微笑ましい光景です。じっと見つめてはいけないのだと思いながらも、思わず見とれてしまいました。

先週の株式市場は、全面高と全面安を繰り返しました。日経平均の動き自体はさほどでもないのに、銘柄の数だけはやたらとプラスとマイナスに偏っています。

(日時、日経平均の騰落幅、値上がり銘柄数、値下がり銘柄数)

4/6(火):▲393円、248、1883
4/7(水):+34円、1839、310
4/8(木):▲22円、285、1897

値下がり銘柄数が1800銘柄を超えるような全面安の地合いであれば、通常は日経平均は▲300円から▲500円くらいは下落しているものです。上昇の場合も同じです。それが今はそうはなりません。

東京エレクトロン(8035)やアドバンテスト(6857)などの半導体関連株の上昇が続いており、そのようなごく一部の銘柄の堅調さが全面安の日経平均の下値を支えているのは事実です。指数を構成する銘柄の偏り、計算方法の特殊さがこのような現象をもたらしている可能性も十分にあります。

3月末に日銀はETFの購入方法を見直しました。その直後に先週のような動きが見られたので、まだ日経225絡みの思惑が動いているようにも見えます。

この動きはあくまで一過性のもので、すぐに元に戻ることになるのかもしれません。4月新年度入りの直後は本当にいろいろなことが起こります。

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その一方で、市場の不安をかき立てるアルケゴス・キャピタルの問題は尾を引いています。先週の火曜日、昼頃から突如として株式市場が下落したのも、この件に関連してクレディ・スイスが5000億円を超える損失を計上するとの一報が流れたためでした。被害がどこまで飛び火しているのかわからず、リスク回避の売り物が瞬時に広まった模様です。

それが今回の全面安と全面高につながったとも見られています。翌日にはすぐに値を戻したこともさらに不安感を煽ります。海外発のニュースが瞬時に世界中を駆け巡り、市場心理が一方向に大きく傾きやすくなっています。

第2、第3の「アルケゴス」がマーケットのどこかにひそんでいるのか。規制当局はこの件で市場の監視を強化するのか。NYダウが史上最高値を更新し続けているのに、投資家は不協和音がどこからか聞こえてこないか、耳をそばだてる日々が続いています。

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「ワクチン相場」はかれこれ半年近くにわたって続いています。世界経済の再開に対する期待は、大半が相場に織り込まれてきました。バイデン政権の巨額の経済対策も、当初のような市場へのサプライズがさすがに薄れています。金利の上昇に対する耐性がついてきたのと並行して、株価の方も上昇力が鈍ってきました。

次は何を当てにすればよいのか、市場は何か事態の変化を待っています。あるいは迷っています。コロナウイルスの変異種の感染力はそれほど強いのか、まん延防止等重点措置が発動されたものの、これでどこまで効果があるのか。日本はワクチン接種を予定通りに進めることができるのか。

米中対立における米国のスタンスは、強硬だったトランプ政権の上を行くほどさらに強硬なものになる雲行きです。対中強硬派のピーター・ナバロ前大統領補佐官の主張は、現在のバイデン政権ではごく当たり前の常識のように聞こえてきます。

今週末に開催される日米首脳会談では、米国は同盟国・日本に対してどのような要件を持ち出してくるのか。日本は中国および台湾とこれからどのような距離感で付き合ってゆけばよいのか。それが期待とともに不安の種となりつつあります。

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市場参加者の胸の内がすっきりとしないという点では、東芝(6502)の件もそうです。CVCキャピタルが2兆円で東芝に対して買収提案を行った、というニュースが先週の水曜日に報じられました。

時価総額2兆円の東芝に対して買収提案の金額が2兆円とは、プレミアムはゼロということでしょうか。水曜日の東芝はストップ高まで上昇しましたが、翌日以降は軟調な動きとなっています。

週末の報道では5兆円という金額も見られますが、買収側に政策投資銀行も加わる模様で、国の意思としての非上場化が動き始めているようです。

東芝クラスの企業が非上場化の道を探る、という事態がこうも簡単にやってくるとは、想像力を駆使しても展開の速さに追いついてゆけません。昨年はキオクシアが上場直前になって上場スキームを停止し、そのキオクシアには先々週、マイクロン・テクノロジーが買収を持ちかけると伝えられました。

そして今度は本体の東芝です。東芝は超電導技術を日本で最も早く実用化させました。その技術がリニア新幹線に活かされています。原子物理学の分野で博士号を有する研究員を多数擁しており、究極のエネルギーとされる「人工光合成」でも世界最高のエネルギー変換効率を実現しています(まだ数%に過ぎませんが)。

その東芝を巡って巨大な資本の論理が動き始めています。日本の価格は世界から見ると破格に安いとされます。30年間続いたデフレの結果とも言えますが、日本企業が丸ごと、世界の資本家たちの草刈り場になりつつあるのかと不安にもなります。

買収を防止するには株価が高いことが一番です。日本企業の価値を高める方策を、企業経営者には早く講じてもらいたいものです。

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先週の株式市場の動きについて。

4月第2週の東京株式市場は、TOPIXが3週連続して下落しました。下落率は▲0.62%とかなり小さいものとなっており、日経平均が全面安を交えて1日おきにプラスとマイナスを繰り返した神経質さが表れています。

これまでのバリュー株物色の流れが、次第にグロース株にシフトしつつあるようです。東証マザーズ指数は2週続けて上昇しました。また安全志向の強まりからか、東証REIT指数が5週連続の上昇で大きくはね上がっています。

TOPIX-17業種のセクター別の騰落では、値上がりが6業種、値下がりが11業種となっています。その前の週と同様に、下落するセクターが優勢となっています。

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値上がりセクターのトップは「鉄鋼・非鉄」です。「商社・卸売」も値上がり上位に入っており、景気敏感株の動きが前面に出ています。

セクター別には出てきませんが、先週の上昇で際立っていたのは海運セクターの上昇です。日本郵船(9101)、商船三井(9104)、川崎汽船(9107)の3社が全面安の地合いをものともせず、連日のように高値を更新しました。

コンテナ船の運賃が高騰しています。背景には世界的なコンテナ不足があり、さらにその背景にはコロナウイルスの感染拡大ががあります。

世界的なロックダウンの影響で、巣ごもり消費が日本だけでなく全世界で広がっています。それに伴って大型家具や大型の家電製品の購入が増えており、昨年秋ごろから輸入物資が急増して、コンテナ不足に陥っています。

当初は今年2月の春節明けには解消すると見られていました。しかし春節が過ぎても一向に不足感は消えず、目下のところ6月までは続くとの見方が大勢です。ひょっとしたら夏場まで続くことも考えられ、そうなると物流の混乱はさらに避けられないとの見方も浮上しているほどです。

海運セクターには千歳一遇の追い風が吹いています。それが他の素材市況の高騰につながっており、素材メーカーにとってはよいことですが、一般企業にとっては物流コストと原材料価格の上昇につながります。決して明るい話題ではありません。

素材価格の高騰は、すべてコロナ危機がもたらした需要と供給のミスマッチによるものです。現在の半導体不足もその延長線上にあり、自動車メーカーの減産規模はさらに拡大する見通しとなりつつあります。

減産拡大は経済の鈍化につながります。早期の解決が待たれるところですが、いかんせん世界的な供給が根元の部分から絞られてしまっており、そう簡単にはいきません。これも現在のマーケットに漂う「漠たる不安」につながっているひとつの要素と考えられます。
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値上がり業種のチャート(日足、直近3か月)

「鉄鋼・非鉄」
https://quote.jpx.co.jp/jpx/template/quote.cgi?F=tmp/hist_index&basequote=277&mode=D

「建設・資材」
https://quote.jpx.co.jp/jpx/template/quote.cgi?F=tmp/hist_index&basequote=273&mode=D

「商社・卸売」
https://quote.jpx.co.jp/jpx/template/quote.cgi?F=tmp/hist_index&basequote=283&mode=D

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反対に値下がりセクターのトップは「医薬品」でした。武田薬品工業(4502)が

(後略)

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鈴木一之