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2021年4月5日

4月相場がスタート、バイデン政権の大型インフラ投資に世界が沸く

鈴木一之

◎日経平均(2日大引):29,854.00(+465.13、+1.58%)
◎NYダウ(1日終値):33,153.21(+171.66、+0.52%)、2日は休場

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鈴木一之です。名実ともに4月、新年度相場が始まりました。例年になく暖かい陽気が続き、関東地方は桜は散って葉桜の季節となっています。これも立派な異常気象です。

暖かさにつられて、人の出が増えています。こんな季節のよい時期に家でじっとしているほうが無理なことですが、そのために新型コロナウイルスの感染者が再び急増しています。

最も深刻な大阪府では連日のように600人を超える新規の感染者数が報告されています。緊急事態宣言を解除して1か月。解除の時期が早すぎたのか、あるいは変異ウイルスが別途広がっているのか。大阪ばかりでなく、宮城や他の東北の各県でも同じように感染者数が増加しています。第4波がすぐそこまで迫っています。

東京で感染拡大が始まると事はかなりやっかいです。そのために先週、大阪、兵庫、宮城では蔓延防止等重点措置が発動されることとなりました。それが経済の足をどこまで引っ張ることになるのか。誰にもわかりません。聖火リレーが開始された東京五輪・パラリンピックは本当に大丈夫なのか危ぶまれます。

それでも医療体制の整備は一向に進みません。民間病院はぴたりと門を閉ざし、病床数はほぼ現状維持が続いています。ワクチン接種に関しても、世界が必死の形相で接種率を急いでいる風潮に対して、日本はどこか別世界にいます。

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それでも先週のマーケットは堅調さを維持しました。米国ではNYダウ工業株に続いてS&P500が最高値を更新し、4000ポイントの大台を突破しました。先に調整入りしたNASDAQも週後半には出直り歩調が見られます。

米国と中国の政治的な対立激化は続いていますが、なにか両国間に具体的なアクションが表面化したわけではありません。将来の火種として米中対立がくすぶり続けることになります。これは長い戦いになると世界中の誰もが覚悟しています。

そのせいもあって、米国はここで経済的な側面で中国に遅れを取るわけにはいきません。中国は全体主義、共産主義の強みを生かして、得意の計画経済によっていち早くコロナショックを克服しました。

その中国に対抗するために、米国は経済面の立て直しに必死です。バイデン大統領は3月31日(水)にペンシルベニア州ピッツバーグで演説を行い、、2月の1.9兆ドルの財政出動に続いて2兆ドルのインフラ投資を発表しました。単年度ではなく8年に及ぶ壮大なインフラ投資計画です。

それによれば、高速道路、鉄道など交通インフラに6200億ドル、電力網、高速通信網にそれぞれ1000億ドルを投じます。さらに政府の研究開発投資を増やし、半導体、コンピュータ、情報技術、米国内での生産設備、サプライチェーンなど製造業に3000億ドルの投資を行うというものです。

防衛軍事に関わらない研究開発にも1800億ドルを振り向け、ハイテク分野で急速に力をつける中国に対抗する姿勢を明確に打ち出しました。これが先週のマーケットではかなりのサプライズと受け止められました。半導体関連株が一斉に高騰しています。

これほどの大盤振る舞いの財源として、法人税の引き上げを講じています。大統領選挙の時の公約のままですが、現在のところはそれに対するマーケットのネガティブな反応は見られません。

前任のトランプ大統領が引き下げた法人税を元に戻すだけですから、影響は小さいのかもしれません。仮に引き上げられたとしても米国のGDPに対する影響度は▲を0.8%程度と見られており、増税の負の効果よりもインフラ投資のもたらす正の効果の方に市場の視線は向けられています。金利動向と合わせてこの点は今後の焦点となりそうです。

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先々週からの持ち越し案件であった、スエズ運河のコンテナ船座礁事故による物流への混乱は最小限にとどまりそうです。スーパームーンによる月の潮引力の力を借りて、17万トンに及ぶ「エバーギブン」の巨大コンテナ船を持ち上げることに成功しました。人類にはまだ運が向いています。

ルネサスエレクトロニクスの工場火災の影響は、当初の見通しよりも長引きそうで、元の供給体制に戻るのに4か月くらいかかるとか。この点に関しても市場では、それだけ現在の半導体の需要が強いものとして好意的に受け止めているところがあります。

先週はとにかく世界中で半導体関連株の物色が加速しました。元から半導体チップは世代交代の端境期にあり、技術革新のニーズの強いところへ、米中対立で最も重要な戦略物資に格上げされ、さらに今回のバイデン政権による半導体投資の大幅な引き上げです。

半導体サイクルの予想ほどむずかしいものはありませんが、台湾・加権指数は先週末にまたもや史上最高値を更新しました。現在の半導体業界の「ビッグイヤーズ」がここから新たに始まるとの予感も広がっており、株式市場ではそれまでのバリュー株、景気敏感株から、再びグロース株に人気が移りつつあります。今週以降もさらに一段とホットな状態に押しやられそうです。

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先週の株式市場の動きについて。

4月第1週(3月第5週)の東京株式市場は、TOPIXが小幅続落しました。3月29日(月)が3月決算銘柄の権利落ち、配当落ち日に当たっていたために、配当落ち分だけ下落したかっこうです。

日経平均で見れば、5日間の立ち合い日数のうち上昇が4日、下落が1日だけというむしろ堅調な動きでした。

物色の方向性は、引き続き大型株よりも小型株に流れが傾いています。東証マザーズ指数は久しぶりに+3%を超える上昇を記録しました。2月第2週以来の上昇率です。バリュー株の人気は衰えがちで、その分だけグロース株に人気が戻ってきました。

REITの人気が続いており、東証REIT指数は4週連続で上昇しました。なかでも物流指数の上昇が牽引しています。

TOPIX-17業種のセクター別の騰落では、値上がりが5業種で、値下がりが12業種となっています。その前の週と同様に、下落するセクターが優勢となっています。

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値上がりセクターのトップは「電機・精密」です。前述のように半導体関連株の全面高が続いており、それが電機・精密の全体を引っ張っています。

半導体関連株に刺激されて、これまで調整色を強めていた電子部品株の中でも、村田製作所(6981)、TDK(6762)、日本電産(6594)、日東電工(6988)などが息を吹き返しつつあります。

電子部品株はアップルが「iPhone12」を当初見込みよりも減産するとのニュースから株価の騰勢が鈍っていました。それが徐々に一巡しつつあります。少しだけ遅れましたが、「節分天井・彼岸底」の格言については、今年はどうやら電子部品株にあてはまりそうです。

値上がりセクターの第2位は「機械」です。電子部品を搭載するマシンを手がけるFUJI(6134)が上場来高値を取ってくるように、このセクターも電子部品の周辺銘柄から動きが強まっています。

ファナック(6954)、ディスコ(6146)などスマホや半導体関連の機械株がここでも堅調です。

さらに続いて「自動車・輸送機」や「素材・化学」など、時価総額の大きなハイテク関連のセクターがそろって上昇率の上位に登場しています。

3月月末は日本の機関投資家が決算期末の状況で、一年を通じて最も動きがとれない時期です。そのタイミングでここまで時価総額の大きなセクターがそろって上昇してくるのは、普通に考えれば海外機関投資家がかなり活発に動いていることになります。

4月の新年度相場は軟調なスタートを切ることが多いものですが、今年に関してはそのような経験則がまるで当てはまらない状況となりつつあります。半導体関連株はすそ野が広いので、次から次へと物色の輪が広がりそうな雲行きです。

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値上がり業種のチャート(日足、直近3か月)

「電機・精密」
https://quote.jpx.co.jp/jpx/template/quote.cgi?F=tmp/hist_index&basequote=279&mode=D

「機械」
https://quote.jpx.co.jp/jpx/template/quote.cgi?F=tmp/hist_index&basequote=278&mode=D

「自動車・輸送機」
https://quote.jpx.co.jp/jpx/template/quote.cgi?F=tmp/hist_index&basequote=276&mode=D

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反対に値下がりセクターのトップは「電力・ガス」となりました。先々週まで値上がり上位を続けましたが、物色の方向性がバリュー株からグロース株に人気が急速にシフトしており、その影響も大きかったようです。

同じく値下がりセクターの上位には、「銀行」、「金融(除く銀行)」や「商社・卸売」などのバリュー株と景気敏感株が入りました。

「金融(除く銀行)」は主に証券セクターの動きが影響します。先週は野村ホールディングス(8604)が週一番で「20億ドルの損失発生」をリリースして株価が急落した経緯があります。

元ヘッジファンドマネジャーのビル・ホアン氏がファミリーオフィスを通じて、自己資金の1兆円をレバレッジをかけて8兆円まで拡大させ、その上で破綻した一件金融市場を揺さぶりました。

1月末に起きた「ロビンフッド・ショック」に続く「アルケゴス・ショック」です。クレディ・スイスや野村HD、みずほFGなど大手金融機関に損失が及ぶこととなりました。こういう不始末を何度か経験したのちに、マーケットは本当のバブルに発展してゆくのでしょうね。

この事件によって米国の金融規制当局が調査に乗り出すのか、自己資本比率や流動比率などの規制強化に踏み切るのか、まだ事態は非常に流動的です。規制強化がなかったとしても、この件で「金融緩和の行き過ぎ」という認識が市場に広まれば、それがネジを逆に戻す結果となり徐々に警戒心が強まります。

目下のマーケットにおけるリスク要因のひとつとして、注意しておくべき出来事であることは間違いありません。

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値下がり業種のチャート(日足、直近3か月)

「電力・ガス」
https://quote.jpx.co.jp/jpx/template/quote.cgi?F=tmp/hist_index&basequote=281&mode=D

「銀行」
https://quote.jpx.co.jp/jpx/template/quote.cgi?F=tmp/hist_index&basequote=285&mode=D

「金融(除く銀行)」
https://quote.jpx.co.jp/jpx/template/quote.cgi?F=tmp/hist_index&basequote=286&mode=D

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いずれにしても4月、今年も新しい年度が始まりました。社長交代が相次いでいます。新入社員の入社式は6割がオンラインで行われました。来年春の就活も同時に進行しています。

日本では今週から2月決算の消費関連株の本決算の発表が本格的にスタートします。これが今後のマーケットのカギを握りそうです。

4月5日(月):しまむら(8227)、アダストリア(2685)
4月6日(火):スギホールディングス(7649)

(後略)

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鈴木一之