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2022年1月12日

大発会は大幅高、2日後には大幅安、2022年相場も波乱の予感

鈴木一之

◎日経平均(7日大引):28,478.56(▲9.31、▲0.03%)
◎NYダウ(7日終値):36,231.66(▲4.81、▲0.01%)

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鈴木一之です。年明け早々から株式市場は大きく動いています。波乱の幕開けと言ってもよいほどです。

今年はカレンダーの日並びが日本と海外とでそれほど大きな差がなく、年末年始の休暇がほとんどなかったような印象でした。その分だけ世間を騒がすようなビッグニュースが少なかったようにも感じられました。

長い休暇ではその間に起こるかもしれない不測の事態を避けて、年末のうちに株式を手放してキャッシュ比率を高めておこうという気にもなったりするものです。それが昨年から今年に関しては、それほど緊迫度が高まる地合いではなく、安心感すら感じられるほどでした。

しかしやはり年末年始ではなにかしらの変化が起こります。今年は大きくふたつ、新型コロナウイルスのオミクロン変異種とテーパリングの行方です。

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まず新型コロナウイルスに関しては、世界中でオミクロン変異種の感染拡大が猛威を振るっています。米国では1日で+100万人、イギリスでも+30万人の新規陽性者が出ており、これまでで最大の感染者数の増加となっています。

ただしオミクロン変異種の重症化リスクは低いままにとどまっており、亡くなった方の数は昨年の感染拡大期と比べて大きく下回っています。クリスマスシーズンに実施された欧州各国の都市封鎖はそれ以上は拡大することなく、行動規制と経済の再稼働が同時に図られています。それを反映してか年末年始の金融市場は穏やかな動きとなりました。

欧米市場から1日遅れて、火曜日からスタートした東京株式市場の幕明けは、大発会の日経平均が+510円の大きな上昇を記録しました。大発会にプラスでの年明けは久しぶりのことで、元旦の青空がおめでたいように、それだけで今年のマーケットはうまく行きそうな気持を抱いた市場関係者も多かったのではないかと思います(私もそうです)。

しかしやはり今のマーケットには、波乱の芽がどこかに常にひそんでいます。オミクロン変異種以上に、市場をかく乱させたのは米国の金融政策でした。

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12月半ばに開催された昨年最後のFOMC議事要旨が年明け第1週に早々と公表され、その中でFOMCメンバーによるかなり突っ込んだ議論が繰り広げられた事実が判明しました。

その内容が想像以上に「タカ派的」なものだったことから、米国市場および東京市場でさっそく金利と株価が不安定な動きとなっています。

昨年12月のFOMCでは、テーパリングの前倒しにとどまらず、政策金利の引き上げの時期、それに利上げペースの前倒しが決定されました。しかし今回明らかにされた議事要旨では、そこからさらに踏み込んでバランスシートの圧縮まで前倒しで実施するとの議論が交わされていたことが明らかになりました。

それほどまでにボードメンバーのインフレに対する警戒感が浮き彫りになっています。これによって先週末の米国市場では、10年物国債金利が一時は1.80%を突破して昨年1年間の高値(3月の1.74%)を上回りました。年明けからドルが上昇しており、ドル円相場は週初に116円台をつけています。

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昨年と同様、新年も米国の金融政策に突き動かされる地合いが続きそうです。

インフレの高進は世界中で目に見えて進んでいます。カザフスタンでは先週、物価高に抗議した大規模な集会が暴動にまで発展し、ロシア軍の介入という事態に至りました。インドネシアは主要産品である石炭の輸出を禁止しました。昨年暮れのトルコリラの記録的な下落は鮮明に記憶されていますが、今後同じような新興国、途上国の混乱が起こる可能性があります。

FRBに限らず、今年は各国中央銀行が昨年以上に金融引き締めを急ぐことになることが予想されます。それは日本も同様で、日銀はすでにステルス・テーパリングに踏み込んでいると指摘されています。

市場金利と政策金利の上昇は、株式市場では物色対象の流れを大きく変化させます。まず思い浮かぶのは、グロース株からバリュー株へ流れが大きく変化する点です。昨年2~3月の相場とよく似た状況です。

先週は大発会から時価総額トップのトヨタ自動車(7203)とデンソー(6902)が上場来高値を更新しました。ソニーグループ(6758)もEV事業化を明らかにしたことからITバブル以来、21年ぶりの高値に進んでいます。ソニーはともかくトヨタ自動車は、どちらかと言えば世界の基準から見ればバリュー株としての評価が前面に出ています。

一方で年明けから成長企業の集まるマザーズ市場が急落しました。昨年も軟調な場面が多く見られましたが、新興市場では最初の1週間で東証マザーズ指数が▲10%も値下がりしました。大発会プラスで好調なスタートを切った日経平均も、FOMC議事要旨の公表によって、新年の立ち合い開始3日目の1月6日(木)には早くも▲845円の下落となっています。

それに対してバリュー株は全面的に評価されつつあります。銀行株が広範囲に上昇しています。中でも地銀株の上昇が顕著です。日本でも長期金利の上昇が始まっており、金融セクターは久しぶりに利ザヤを稼げる事業環境となりつつあります。東京海上HD(8766)に続いて、第一生命HD(8750)も上場来高値が目前に迫っています。

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株式市場では金利がすべてに優先します。浮かんでいたものが沈み、沈んでいたものが浮かぶ世の中に変わりつつあるようです。

日経平均が1日で800円以上も下落したのは昨年1年間でも3回しかありません。昨年2月26日(▲1202円)、6月21日(▲954円)、5月11日(▲910円)です。

昨年2月26日はパウエル議長が議会証言を行い、「経済の回復には時間がかかる」との発言からNYダウが▲559ドルも下落しました。NASDAQは▲3.5%も下落し、その影響から東京市場は大幅安となりました。

5月11日の大幅安はCPIショックの始まりで、日経平均はこの日から3日間で▲2000円以上も下落しました。6月21日の下げもFOMCでの利上げ前倒しがきっかけです。昨年3度あった日経平均の▲800円を超える下げは、すべて米国景気と金融政策がきっかけです。それが年明けから早くも起こりました。

相場の焦点はまさにこの部分です。年明けもそれは変わりません。世界中の金融政策が大きく変わるその入口に差しかかっています。今年もボラティリティは高止まりし、アクティブな株式投資はなかなか利益を挙げるのがむずかしい展開が予想されます。最初の1週間で起こったことが、今年は年を通して起こると覚悟して臨む必要がありそうです。

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先週の東京株式市場は、TOPIXが5週連続で上昇しました。週間の上昇率はいずれも1%に満たない小さな上昇を続けています。

物色動向は昨年末に続いて大型株が優位を保っています。規模別指数では、大型株指数のみ週間でプラスを維持しており、中型株と小型株指数は軟調な動きとなりました。特に東証マザーズ指数は▲10.61%の大幅下落となりました。昨年12月のIPOラッシュの影響がまだ残っているようです。

小型グロース株が厳しい下落を示していますが、一方で騰落レシオは100%を超えてきました。日経平均のサイコロジカルラインは年をまたいで「6」のニュートラルの水準を6日間続けています。

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TOPIX-17業種のセクター別の騰落では、値上がりセクターは11業種、値下がりセクターは6業種となりました。値動きが大きく拡大しており、値上がり業種と値下がり業種の区別がはっきりと分かれています。

値上がりセクターのトップは「自動車・輸送機」です。トヨタ自動車(7203)が大発会から上場来高値を更新し、それとともにデンソー(6902)、豊田合成(7282)、トヨタ紡織(3116)などトヨタグループが広く上昇しました。

トヨタグループに限らず、日産自動車(7201)、ホンダ(7267)、

(後略)

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鈴木一之