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2021年12月21日

FRBはテーパリングの前倒しを決定、利上げは2022年に3回

鈴木一之

◎日経平均(17日大引):28,545.68(▲520.64、▲1.79%)
◎NYダウ(17日終値):35,365.44(▲532.20、▲1.48%)

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鈴木一之です。クリスマス週間です。今年も残りの日数が少なくなりました。今週の水曜日は冬至。寒さも厳しくなるわけです。

先週もマーケットは目まぐるしい展開の連続となりました。重大ニュースがいくつも駆け巡り、そのたびにマーケットは上に下にと翻弄される展開でしたが、終わってみればTOPIXは2週連続の上昇(9月以来)でまずまずの堅調さでした。

最大のニュースはやはり米国の金融政策です。水曜日に今年最後のFOMCが開催され、テーパリングの終了時期を当初の2022年6月から3月へ前倒しすること、および2022年に3回の政策金利の引き上げが実施されることがマーケットに示されました。

12月初旬の議会証言でパウエル議長はすでにタカ派的な方向にスタンスを変えていましたが、11月のテーパリング開始の決定からわずか1か月で早くも軌道修正を行った形となります。

それでもインフレ収束に向けたスタンス変更が市場では好感されました。発表直後のNY市場でダウ工業株が大幅高となり、日本でも木曜日の日経平均は+609円の上昇と大きく上昇しました。

しかし先週はFOMCがすべてではありません。欧米を中心にオミクロン変異種の拡大がじわじわと足元の経済を締めつけていることが警戒され、週末は日米ともに株式市場が再び大きく下落することとなりました。

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1週間を振り返ってみると、株式市場に対してプラス要因よりもマイナス要因の方が多かったというのが素直な印象です。

月曜日は米国のケンタッキー州を中心に、恐るべき竜巻の被害が発生したとのニュースが報じられ、クリスマス週は不安な幕明けとなりました。日本は朝一番に今年最後の日銀短観が発表され、日本の足元の景況感はまずまず堅調という状況が確認されました。

火曜日にはトヨタがEV戦略のロードマップを大幅に引き上げるというプラン改定を明らかにしました。2030年のトヨタのEV生産は、それまでの200万台から350万台に8割も引き上げられました。トヨタの株価は堅調のままですが、それ以上にトヨタグループのデンソー(6902)が上場来高値を更新するように、このニュースはパーツメーカーの上昇に貢献しました。

それに対して政治情勢が日に日に悪化しつつあり、相場の足を引っ張っています。水曜日、臨時国会での予算委員会において、国土交通省が長年にわたって建設受注のデータの二重計上を行っていたことが判明しました。GDP統計にも影響しかねない重要統計の水増しで、国土交通省は第三者委員会を設置して事態の解明を行うとしています。

森友学園の訴訟案件に関しても、被告の国側が突如として和解に応じ賠償金の支払いを実施することとなりました。裁判を通じて真相を解明するという原告の主張は完全に宙に浮いてしまい、実に後味の悪い幕引きとなりました。

さらに岸田首相からは上場企業の自社株買いに関して「一定のガイドラインを設ける」との言及がありました。いったん封印されたものの、金融所得課税の議論もどこかくすぶっており、株式市場に水を差すような事態が連続して起こっています。日本株に対する外国人投資家の印象が悪化しないか、そればかりが心配されます。

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株式市場の内部要因としては、マザーズ市場など新興市場において記録的なIPOラッシュが始まっています。本格的な上昇ラッシュはまさに今週からですが、すでに先週の段階で公募価格を割りこむ初値形成、あるいはその後のセカンダリー市場での値崩れが頻発しています。

現在の記録的なIPOのラッシュ状態は、コロナ危機に直撃された昨年のIPO案件がいくつも延期されて、その分が今年に回ってきていること、加えて来年4月の東証市場改革を控えて、どのような制度変更になるのかわからないため、その前に駆け込みで上場しておこうという意向が引サイドの受証券会社に働いているのかもしれません。

しかしここまでIPO市場が悪化すると、他の小型成長株にも悪影響が及ぐことは避けられません。FRB、ECB、イングランド銀行と各国の政策金利の引き上げも始まっており、それだけで高いPERのグロース株には不利な状況となっています。

そこに今回のIPOラッシュが重なっており、マザーズ市場および小型成長株は軒並み値を崩すという展開が余儀なくされています。

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数少ないプラスの要因として、国内消費の現状が次第に明るさを増している点が挙げられます。年末商戦の真っただ中にあって、日本は世界でも例外的にコロナ感染者数の増加が抑えられています。それが消費者心理に少しずつ明るさをともしているように感じられます。

月曜日に発表された12月の日銀短観は「全産業・全規模」の業況判断がコロナ危機後では初めてプラスに浮上しました。足元の景況感は着実に改善傾向を示していると受け止められます。

日本経済新聞の報道によれば、全日空と日本航空の旅行客数が国内線は着実に上向いているそうです。前年の水準が大幅に落ち込んでいることもあり、12月はそれぞれ4割増、6割増となった模様です。コロナ前と比べても今年度の国内線の需要は9割近くまで戻っているとか。現在の状況では十分に健闘していると言えるでしょう。

各国が水際対策を強化しているので国際線の回復はまだ望むことはできません。それでも国内線の需要は着実に上向いています。年が明ければ経済対策に盛り込まれた「GoToトラベル」による需要も出てくるはずです。

海外旅行が無理な分だけ、旅行需要ではちょっとぜいたくな国内旅行を楽しむケースも増えています。都市部での高級ホテルのお正月プランは、かなり値の張るパッケージでも売れ行きは好調です。シティホテルのプランはほぼ売り切れ、満室の状態で、小さなぜいたくを味わう人たちで都心のお正月はにぎわうことでしょう。

現在は1泊2日くらいの旅行がちょうどよいと受け止められているようです。ご高齢の皆さんの姿が繁華街から姿を消して久しいのですが、それが最近はデパ地下の食料品売り場などでずいぶんと多くの姿を見かけるようになりました。

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個人消費に関して、日曜日の日本経済新聞・朝刊には、百貨店大手の高島屋の2021年9ー11月期の営業利益が7四半期ぶりに黒字に浮上した様子が伝えられています(10億円の黒字、前年は3億円の赤字)。コロナ後では初めての四半期ベースの黒字転換となります。

記事によれば、高島屋の既存店売上高は9月が▲3%でしたが、緊急事態宣言が明けた10月は+6%、11月は+9%と、月を追うごとに明るさを増しています。フロアを大幅に改装した横浜高島屋の来店客数は、11月に+20.6%まで大幅に伸びたそうです。

同じように三越伊勢丹の11月も既存店売上高が+11%増、松坂屋と大丸を展開するJ・フロントリテイリングも+14%増えました。冬物衣料と食料品がよく売れています。冬のボーナスは3年ぶりにプラスに転じます。そこに18歳以下のお子さんに10万円の現金支給が重なります。

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師走の街の様子を見まわしてみると、東京都心部でも旅行客と見られる大きなキャスター付のスーツケースを持って歩いている人の姿を見かけることが増えました。早朝のターミナル駅では到着したばかりの長距離バスから降りてくる人々の姿も増えているように感じます。少しずつですが世界はコロナ拡大前の日常の姿を取り戻し始めている状況です。

先週はオリエンタルランド(4661)の株価が急伸して、木曜日には上場来高値を更新しました。なぜこのタイミングでオリエンタルランドの株価が急伸したのか、何が理由なのか、正直に言ってよくわからないところも多いのですが、理由のわからない株価の上昇(下落)は特に注意しなければなりません。あとから理由が判明することも多いものです。

ウクライナの国境情勢に新たな進展はありません。中国の恒大グループのデフォルトにも、トルコリラの暴落にも、マーケットは驚かなくなってきました。北京オリンピックの外交ボイコットは日本はうやむやのうちに済ませようとしています。物価上昇、金利上昇などの問題はいつかどこかの時点で火を噴くことになるのかもしれません。不安要素は数え上げたらきりがありません。

が、いまはすべてが小康状態を保っています。とりあえず今のところは大所高所ではなく、周囲をよく見回すこと、足元をよく見つめること、自分の身近なところを精査することが求められているように感じられつつあります。

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先週の東京株式市場は、TOPIXが続伸しました。上昇率は+0.46%と小幅にとどまっています。それでも2週連続で値上がりするのは今年9月以来のことです。この時は自民党総裁選の前倒しで4週連続で上昇しました。

物色の中身ははっきりと分かれており、大型株とバリュー株が有利でした。小型株、成長株が軟調な動きを余儀なくされています。東証マザーズ指数は4週連続で値下がりしました。1REIT指数は小幅続伸しましたが、オフィス指数はマイナスで、住宅指数はプラスと分かれています。

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TOPIX-17業種のセクター別騰落では、値上がりセクターは前の週の15週に続いて、13業種と広範囲に上昇しました。値下がりセクターは4業種にとどまっています。

値上がりトップは「電力・ガス」です。第2位が「食品」、第3位が「金融(銀行除く)」となりました。

電力会社の株価が軒並み上昇しています。福島第一原発事故の影響が残る東京電力HD(9501)は別として、他の地方電力株はいずれも配当利回りの高い銘柄です。

先週は電力セクターに限らず、東京海上HD(8766)、JT(2914)、メガバンク、地銀株など配当利回りの高い銘柄が一斉に買い進まれました。金利上昇局面に入って、バリュー株への見直し買いが継続しており、配当利回りの高い銘柄はその筆頭格に挙げられています。

利回りのほかにも電力会社に関しては、原油高騰を背景とした電力料金の引き上げが目の前に迫っており、それが電力各社の収益拡大につながると見られています。警戒されていた冬場の燃料LNGの在庫不足懸念に関しても、予想されたほどの厳冬にならずに済む様子で、電力会社の収益が激変する状況には今年はないようです。

また来年以降は再生可能エネルギーの導入拡大が待ったなしとなっており、電力システムそのものの改革期待も高まりつつあります。

値上がり第2位の「食品」も、先ほどのJT(2914)が堅調であることと、ヤクルト本社(2267)、明治HD(2269)、キッコーマン(2801)、味の素(2802)などの主力銘柄がいずれもしっかりした足取りです。

大豆や小麦の原料価格の値上がりが顕著となっていますが、それをストレートに価格に転嫁できる食品株の強みがここに来て発揮されているようです。

値上がり第3位の「金融(銀行除く)」でも、東京海上HD(8766)、

(後略)

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鈴木一之