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2022年12月30日

大納会、日経平均はわずか0円83銭の上昇、それでも26,000円の大台はキープ

鈴木一之

鈴木一之です。激動の2022年も大納会を迎えました。今年はあらゆることが一度に大きく変化した年として記憶されることになりそうです。

まず今週の動きから。月曜日の取引は欧米がクリスマス休暇でほぼ全市場が休場でした。東京株式市場もその影響を多分に受け、プライム市場の売買代金は2兆円を下回る薄商いとなりました。

ニュースも少なかったのですが、その中で目立っていたのは中国における「ゼロコロナ政策」の緩和策です。

中国では国内外で評判の悪かった「ゼロコロナ政策」を緩和する動きが広がっています。週明けの12月26日、中国政府は海外から中国に入国する際のホテルでの強制隔離を、年明け1月8日から撤廃すると発表しました。

それとともに、中国人の海外渡航も近い将来に緩和される方向性が示されました。このニュースによって百貨店、航空会社、電鉄会社、旅行代理店など、いわゆる「インバウンド消費関連株」が一斉に急上昇するという週明けとなりました。

しかし物色は長くは続きません。「ゼロコロナ政策」を緩和すれば滞っていた人の流れは回復しますが、反対にそれに伴ってコロナウイルスの感染者数も拡大する恐れがあります。実際に中国では北京、上海、武漢など、大都市ほどコロナウイルスの感染爆発が始まっていると伝えられます。

「ゼロコロナ政策」を維持すれば、中国国民の間で行動規制への不満が高まり経済も停滞します。しかしゼロコロナ政策の解除に踏み切れば、感染拡大が爆発的な規模で始まってしまい、医療体制が崩壊しかねません。週後半になるにつれてインバウンド消費関連株に対する市場の関心は次第に冷めてゆきました。

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世界経済は来年の前半にかけて失速する、あるいはリセッションに陥るとの見通しが増えています。その理由は、欧米をはじめ先進国の金利引き上げの継続があります。そしてもうひとつが中国経済の鈍化です。

2023年の中国のGDP成長率は、エコノミスト予想の平均値で4.7%となっています。2022年の3%からは上向くことになりますが、5.5%成長を描く中国政府の見通しには届きません。中国を世界経済の牽引役として期待することはむずかしい情勢です。

欧州および米国の景況感はどうかと言えば、こちらも金融引き締めの長期化で、世界経済の牽引役は期待しづらくなっています。FRBやECBによる利上げは年を越えて継続し、まだ緩和への転換の糸口さえ見い出せません。

米国では住宅市場に金利の引き上げによるダメージが現われつつあります。この分野がひとつの大きなカギを握りますが、世界の巨大な2極が同時に景気面でむずかしい舵取りを余儀なくされており、その狭間で日本は「相対的な良好さ」が逆に評価されるという皮肉な結果を迎えています。

そうでれば日本は、内需による成長をしっかりと確保してゆくことが必要となります。2022年の後半にかけてはっきりとした、小売セクターを中心とした内需成長株の行方がカギを握っていそうです。

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今週の東京株式市場はTOPIXが3週連続で下落しました。ただし1週間の下落率は▲0.33%と非常に小幅です。下落したとはいえ、前の週の▲2.68%からは持ち直しました。

バリュー株とグロース株の比較では、グロース株の一角に厳しい下落が見られます。バリュー株は堅調ですが、今週に関しては「バリュー株か、グロース株か」という対比よりも、「大型株か、小型株か」という選択がより前面に出ていました。日銀による金融政策の変更の影響がここにも見られます。

小型株はしっかりしており、逆に大型株の軟調さが目立ちます。受渡ベースでは年末年始をまたいだ取引が始まっています。機関投資家は依然として換金売りを出しており、逆に個人投資家は早くも年をまたいだ売買を活発化しているという構図です。

東証マザーズ指数は5週ぶりの反発を示しています。東証REIT指数も4週ぶりの上昇となりました。

テクニカル面では、騰落レシオは78.03%まで低下しています。2021年12月21日(77.08%)以来の低水準です。日経平均のサイコロジカルラインは「4」~「5」の水準を2週間続けています。

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TOPIX-17業種のセクター別騰落では、値上がりセクターのトップが「鉄鋼・非鉄」、第3位に「商社・卸売」が登場しました。

「商社」はインフレによる利益をため込みやすい業態で、先々週までにぎわっていました。それが先週は日銀による実質的な金融政策の変更によって、金利動向に弱い業種として大きく売られていました。

その流れが早くもプラスに切り返しています。鉄鋼株では日本製鉄(5401)を筆頭に、中山鋼(5408)、合同鉄(5410)、商社ではドウシシャ(7483)、第一実業(8059)、神鋼商事(7075)、サンリオ(8136)などが年初来高値をうかがう展開です。

同じく「不動産」も先週大きく下落した業種ですが、こちらもテンポイノベーション(3484)、日本駐車場開発(2353)、パーク24(4666)などが、わずかながら切り返しに転じています。

値上がりセクターの第2位は「小売」でした。2月/8月決算企業の小売セクターがいち早く決算発表の時期を迎えています。

すでに決算発表を終えたニトリHD(9843)、しまむら(8227)が、決算内容を好感されて株価もしっかりしています。さらに高島屋(8233)、アダストリア(2685)、パルグループ(2726)、ツルハHD(3391)などもそれぞれ決算は堅調で、株価も上値を志向しています。

小売セクターが落ち着いていると、日本経済の現状も底割れは回避できるとの期待が生まれてきます。この業種には年明け以降も期待が寄せられます。

反対に値下がり上位のセクターには「食品」、「電機・精密」、「医薬品」が並びました。

このうち「食品」と「医薬品」は12月の期末決算をまたいだことから、JT(2914)、キリンHD(2503)、中外製薬(4519)、協和キリン(4151)など、期末配当を落として表面的に大きく下落した銘柄が含まれます。

「電機・精密」には引き続き売り物が続いています。レーザーテック(6920)、東京エレクトロン(8035)、アドバンテスト(6857)の半導体も続落基調となっていますが、パナソニックHD(6752)、日本電産(6594)などのEV関連株も弱い値動きです。

中国市場での売れ行きが鈍っていると見られるテスラの軟調な動きがどうしても気になるところです。「電機・精密」は「自動車・輸送機」とともに、5週連続で株価は前週比マイナスとなりました。

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不透明感の極まる年末年始を迎えています。新春相場はどのような展開となるのでしょうか。

コロナウイルスの感染拡大は3年目に入り、世界各地で行動規制は解除されていますが、依然として多くの人が亡くなっています。身近な人の死は、あとに残された人たちの日常生活に大きく影響を与え、世界の至るところで言葉にならない喪失感が漂っているように感じられます。

さらに今年は、コロナ禍による行動規制がようやく解除されるという春先、ロシアがウクライナに対して軍事侵攻を開始しました。第二次世界大戦以後では初めて、武力による国境線の変更が行われており、ここでも多くの罪のない人々が命を落とし、血を流して祖国を追われています。

世界中で格差が一段と広がる年となりました。今年もその事実をいやというほど突きつけられました。ロシアは世界有数の資源国で、ウクライナも世界有数の穀倉地帯です。エネルギーと食料を中心に世界中でモノが不足し、物価が急激に値上がりするようになりました。この大きな流れは年明けも変わらずに社会的に弱い立場の人々を痛めつけます。

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急激なインフレを食い止めるべく各国の中央銀行が政策金利を引き上げ、市中金利も急激に上昇するようになりました。40年ぶりという金利水準です。金利がゼロ、あるいはマイナスという世界で暮らすことに慣れていた人々は不意をつかれ、世界中の株価は大きく値下がりしました。

QUICKの調査では、主要な33の国と地域で株価が値下がりし、時価総額は25兆ドルも減少しました。世界のGDPは45兆ドルなので、半分近い47%の価値が消失したことになります。さらに債券市場では19兆ドルの時価総額が減少したとされています。

資産価値の減少は景気を直撃します。年明け以降、かなり深刻な景気後退、リセッションが訪れると人々は身構えています。

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非常事態だから仕方ないと、人類は一時的に地球環境問題を忘れていたのかもしれません。しかし異常気象は容赦なく襲ってきます。

今週はじめのクリスマス、米国の北東部を襲った異常な寒波で

(後略)

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鈴木一之