ブログ

2022年12月26日

日銀が金融政策を変更、日経平均は週足で今年2番目の下げ幅

鈴木一之

鈴木一之です。クリスマス。戦争中の国もこの日だけは一時停戦に合意して安息を得るとされる聖なる夜を迎えています。

あらゆる物事が激変した2022年もまもなく幕を閉じます。様々な事柄が大きく変わりましたが、その多くが明確な決着を見ないままに年を越えようとしています。結論も得ないままにまた新たな変化が沸き上がってきて、ひと息つく間もありません。

先週も新たな変化がいくつも起こりました。その中でも最大のものが日銀の金融政策の変更です。

日銀は12月20日(火)の金融政策決定会合で、従来の大規模な金融緩和の枠組みを変更しました。これまで0.25%としていた「イールド・カーブ・コントロール」による長期金利の変動幅を、0.5%に拡大しました。即日適用され、20日の昼過ぎから国債流通利回り(長期金利)は大幅に上昇しました。

サッカーW杯・決勝戦の余韻に世界中がひたっていた火曜日の昼過ぎ、市場は完全に意表を突かれた形となりました。

為替市場では円が137円台から133円台まで急騰し、株式市場では日経平均先物が一時▲1000円以上の下落となりました。大引けでは日経平均の現物指数は26,568円▲669円まで値下がりしました。

サプライズはその当日、さらに翌日の海外市場にも広がり、先週末の段階でもすっかり落ち着きを取り戻したと判断することはできません。週足で見れば、日経平均は前週末比で▲1292円の下落となり、6月第3週の▲1861円の下落に次いで今年2番目の下げ幅となりました。

今回の日銀の決定に関しては後半で述べるとして、先に先週のマーケットの動きを概観します。

@@@@@

先週の東京株式市場はTOPIXが続落しました。1週間の下落率は▲2.68%に達し、9月最終週に▲4.18%下落して以来の大きさとなりました。前の週の▲0.58%から大幅に拡大しており「日銀ショック」と言ってもよいでしょう。

長期金利が大きく上昇したため、バリュー株とグロース株の対比ではグロース株の下げが際立っています。

TOPIXバリュー株指数の下落率は▲0.89%にとどまりましたが、TOPIXグロース株の下落率は▲4.45%に達しました。東証マザーズ指数は▲8.72%も下げ、4週連続の下落となっています。

金利の上昇によって、利回り面で優位に立っていた市場にも売り圧力が増しています。東証REIT指数は3週連続で値下がりしました。

幅広い銘柄が値下がりしたため、テクニカル面では騰落レシオが87.03%まで低下しています。10月24日以来の低水準です。日経平均のサイコロジカルラインは「4」の状態が3日間続いています。

@@@@@

TOPIX-17業種のセクター別騰落では、値上がりセクターが3業種にとどまり、値下がりセクターは13業種に拡大しました。

値下がり上位のセクターはトップが「商社・卸売」、第2位が「不動産」となりました。どちらも金利上昇に弱いセクターの代表格です。

卸売セクターに関しては、直前の2週間に上昇が顕著だっただけに、その分の売り圧力も重なっています。三菱商事(8058)、三井物産(8031)が軟調で、東京エレクトロンデバイス(2760)、マクニカHD(3132)などのエレクトロニクス商社も下げが目立ちました。

その一方で、同じ卸売でも円高メリットを享受できる神戸物産(3038)、ドウシシャ(7483)、蝶理(8014)などは逆行高を示しています。

「不動産」は金利上昇の影響がダイレクトに出てくる業種としてほぼ全面安となりました。オフィスビルを中心とする三井不動産(8801)、三菱地所(8802)、住友不動産(8830)が大きく下落し、同じく個人向けのウエートの大きな野村不動産HD(3231)、飯田グループ(3291)も軟調です。

東京都心部では中古マンションの一部が1億円の大台に乗せるという時代です。金利上昇によって住宅ローンを組む動きも減少すると見られます。不動産の購入に関してはここは少し立ち止まって冷静になってみようとムードが出てくる可能性もあります。

値下がりセクターの第3位は「電機・精密」でした。引き続き半導体が軟調で、これまで値持ちのよかったアドバンテスト(6857)、ローム(6963)、富士電機(6504)にも売り圧力が広がっています。

米国では半導体メモリー大手のマイクロン・テクノロジーが12月21日に決算発表を行い、9-11月期の売上高が40.8億ドルと前年比▲47%減少したことが明らかになりました。最終損益は▲1.9億ドルの赤字転落です。同時に発表した12-2月期の見通しも市場の予想を下回る結果となりました。

決算発表に合わせてマイクロンは従業員の▲10%削減も発表しています。半導体関連企業の収益はいよいよ本格的に悪化していることが示されました。

@@@@@

軟調な地合いの中で株価が上昇したのは、「銀行」、「金融(除く銀行)」、「電力・ガス」の3業種です。中でも上昇の目立ったのは銀行と生損保です。

三菱UFJフィナンシャルグループ(8306)、三井住友フィナンシャルグループ(8316)を中心にメガバンクが大商いのうちに急上昇しました。日銀が金融政策を変更したことによって、マイナス金利の状態からプラス金利の状態へと変わり、利ザヤの拡大を素直に評価しています。

メガバンクと同様に地銀株にも上昇ムードが広がっています。出遅れていたコンコルディアFG(7186)、七十七銀行(8341)、ふくおかフィナンシャルグループ(8354)など大手地銀にも買いが回ってきました。「金融(除く銀行)」では第一生命HD(8750)は上場来高値を更新しました。

歴史的に見てもこれらの金融セクターが大きく動く時は、日本経済が大きく変化する時期と重なります。1980年代前半のバブル発生の前夜、あるいは1990年代初期のバブル崩壊前後、2000年代初頭の不良債権処理の本格化、2004年からの小泉改革。

いずれも銀行株の上昇と下落がその後の日本経済、および株式市場の中・長期的な趨勢を決定づけてきました。その銀行セクターが再び大きく動き出しています。この動きから目を離すことはできません。

値上がり第3位の「電力・ガス」も、原発再稼働、電力料金引き上げに向けた政策上の後押しに加えて、円高・ドル安を好感する動きが見られます。今後は円高メリットと金利上昇によるデメリットの綱引きに移ってゆくことになりそうです。

@@@@@
@@@@@

さて、今回の日銀の政策変更です。マーケットは一時的にも混乱状態に陥りました。

日銀に対して「フォワードガイダンス」や「市場との対話」という形で金融政策の先行きを示すような説明や行動を、今後は一切期待しなくなることでしょう。サプライズが常態化し、価格変動リスクに対して身構えることになりそうです。

最初に考えることは、今回の一件は2013年から始まった「アベノミクス」がはっきりと縮小、終了したと受け止められる点です。安倍元首相は今年7月に不慮の死を遂げられましたが、「アベノミクス」も今年末の日銀の政策変更によって大きく変貌、ないしは終了することになりそうです。

今回の政策変更を、先週のマーケットの動きだけですっかり吸収したと判断することはできません。ここから新たな動きが

(後略)

日本株に関する情報をいち早くゲット!

ここでしか読めないメールマガジンを配信しています。
登録無料!

鈴木一之